会期:3月12日~20日(現地時間) ATI Technologiesは、3月13日(現地時間)にCeBIT会場内のカンファレンスルームにおいてDirectX 9世代のノートPC用GPU、「MOBILITY RADEON 9600」を発表した。 ●史上最強のモバイルグラフィックスチップ MOBILITY RADEON 9600は、先だって発表されたRADEON 9600と共通のコアを内蔵するノートPC向けDirectX 9対応GPU。そのベースは2002年秋に発表されたRADEON 9500で、プロセスルールをTSMCの0.15μmからLow Voltage 0.13μmに移行、約60万トランジスタをメインストリーム向けであるMOBILITY RADEON 9000とほぼ同サイズに集積している。
Vertex Shader 2.0に対応したシェーダーユニットを2つ、Pixel Shader 2.0に対応した32bit浮動小数点ピクセルシェーダーユニットを4つ装備。メモリインターフェイスは128bit幅で、グラフィックス単体チップに加え、従来製品同様、オンチップでメモリを搭載するMCM (Multi-Chip Module)パッケージも用意され、32MB/64MB/128MB版が投入される。 発表会で、モバイルグラフィックス担当副社長(Vice President, Mobile Graphics)のPhil Eisler(フィル・エイズラー)氏は、「DirectX 9.0とOpenGL 2.0は、正統なGPU(Right GPU)でのみ機能する」と述べ、初のDirectX 9世代GPUであるRADEON 9800の流れをくむMOBILITY RADEON 9600のポジショニングを紹介。 続いて、現在、市場で入手可能なNVIDIAのDirectX 9世代のグラフィックスコアNV30ベースのQuadro FX 1000との比較デモを通して、モバイルグラフィックスチップが、デスクトップ用GPUを上回るクオリティと性能を発揮することをアピールした。 また、Eisler氏は「ノートPCユーザーは、デスクトップPC並みのグラフィックスパワーは手に入れたいと思うが、バッテリ駆動時間を犠牲にしたり、ノートのシャーシが触れないほど高温になることは望んでいない。しかも、静かであることが求められる。そこで、ATIはTSMCの0.13umプロセスの採用と独自の省電力機能、PowerPlayの進化で、この難題を克服した」と、パフォーマンスが向上しても、モバイルグラフィックスで最重要視される省電力性能と熱設計温度は従来モデルであるMOBILITY RADEON 9000並みに抑えつつ、パフォーマンスは3倍に向上させることができたと、そのバランスの高さを主張した。 新しくなったPowerPlay 4.0では、バッテリーレベルやAC電源の有無、ユーザー設定などにより、駆動電圧とクロックを動的にコントロールでき、Windowsアイドル時の消費電力は0.5W、通常動作時は0.7W前後の消費電力に抑えられている。これにより、MOBILITY RADEON 9600の搭載に必要な熱設計温度(TDP)は5Wと、ライバルとなるGeForce FX 5600 GOよりも良好で、かつデスクトップ版のRADEON 9500譲りのパフォーマンスを発揮するなど、現時点で最強のモバイルグラフィックスチップとなる。
●ハイエンドゲームユーザーをターゲットにしたPRO版も投入
さらに、同社は、13日にエルピーダが発表したグラフィックス用の高速メモリであるGDDR2-Mを搭載した上位バージョンの「MOBILITY RADEON 9600 PRO」のサンプル出荷を開始、2003年4月中にも搭載製品がリリースされることを明らかにした。 MOBILITY RADEON 9600 PROでは、チップに内蔵されたサーマルダイオード(温度センサー)により、チップ温度などをモニタリングできるほか、3Dゲームなど、さらにパフォーマンスを引き出したい場面では、自動的にオーバークロック動作をしてくれるATI OVERDRIVEと呼ぶ機能を搭載する。 なお、今回の発表では動作周波数はコアが350MHz以上、メモリが最高350MHzのDDR(700MHz動作)としか明らかにされておらず、NVIDIAのGeForce FXシリーズ同様、メーカーがノートPC設計にあわせて選択することになる。 ●MOBILITY RADEON 9200とMOBILITY RADEON 7000 IGPも同時発表
また、同社はMOBILITY RADEON 9000の後継となる、メインストリームモバイルGPU「MOBILITY RADEON 9200」と、新グラフィックスコア内蔵チップセットの「MOBILITY RADEON 7000 IGP」を発表した。 MOBILITY RADEON 9200は、基本設計は現行のMOBILITY RADEON 9000と同じだが、製造FabをTSMCからUMCに移行し低価格化を図ったDirectX 8.1世代のグラフィックスチップ。また、MOBILITY RADEON 7000 IGPは、現行のRADEON IGP 340Mをベースに、DDR333とFSB 533MHzのサポートを追加したモデル。Pentium Mにも対応する。 なお、両製品とも従来モデルとなるMOBILITY RADEON 9000およびRADEON IGP 340Mとそれぞれピン互換を維持しており、ノートPCメーカーは、基本設計を変更することなく新チップへのリプレースが可能だとしている。
□CeBIT 2003のホームページ(英文) (2003年3月17日) [Reported by 本間文]
【PC Watchホームページ】
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