会期:3月12日~20日(現地時間) AMDは、CeBITにおいて、Athlon XP 3200+を搭載したシステムを報道陣などに公開した。 このAthlon XP 3200+は仕様などは一切公開されなかったが、OEMメーカーなどの情報筋によれば、システムバスのクロックが400MHzに引き上げられ、リリース時期も当初言われていた第2四半期の終わりの6月から1カ月前倒しされ、5月にリリースされることなどが明らかになった。 ●CPUクロックを上げなくても性能向上を実現できるシステムバスのクロックアップ
AMDは公式には何も明らかにしていないが、PC業界においてAMDが5月にAthlon XP 3200+を発表するというのは既定路線だ。ほぼすべてのOEMベンダはAMDが5月にAthlon XP 3200+をリリースすると口をそろえるし、AMDのパートナーであるチップセットベンダも同様だ。つまり、何か問題が発生しない限りは5月にAthlon XP 3200+が発表される可能性はかなり高いと言える。 情報筋によれば、AMDはこのAthlon XP 3200+においてシステムバス400MHzを導入する。これに関しては、自然な流れで何ら不思議なことではない。AMDは、製品のグレード表記に実クロックではなく、モデルナンバーを採用している。このため、仮に同じクロックであっても、システムバスやメモリのクロックを引き上げた場合には性能が向上するので、モデルナンバーのグレード表記を引き上げることが可能になる。例えば、システムバスが333MHzのAthlon XP 2600+は2.083GHzと、システムバス266MHzのAthlon XP 2600+の2.133GHzに比べて低いクロックになっているが、モデルナンバー表記によるグレードは同じとなっている。 つまり、システムバスを引き上げることで、実クロックを上げなくてもモデルナンバーのグレード表記を引き上げることが可能になるのだ。AMDにとってはかなりおいしい計画だということがわかるだろう。 ●NVIDIAに加え、VIAはKT600、SiSはSiS748でシステムバス400MHzをサポート
ただ、いくらAMDがシステムバス400MHzに引き上げると決定したとしても、チップセットベンダ側の準備が整わなければ絵に描いた餅になってしまう。AMDは自社ではチップセットを投入していないため、NVIDIA、VIA Technologies、SiSといったパートナーとなるチップセットベンダに400MHzに対応してもらう必要があるからだ。システムバス400MHzに関しては、すでにNVIDIAは対応していることを公言していたが、VIAやSiSといった台湾のベンダーはこれまで対応を明らかにはしてこなかった。 今回のCeBITではVIA、SiSの両チップセットベンダともにシステムバス400MHzへの対応を明らかにした。VIAは、CeBITにおいてKT400Aという製品を公開し、各マザーボードベンダがKT400Aを搭載した製品を公開した。KT400Aは、KT400のアップデートバージョンで、DDR400に正式に対応しているのが大きな違いといえる。KT400AでサポートされるDDR400は、JEDECで策定されたスペックのモジュールで、昨年多発したDDR400の互換性問題を大幅に改善したものとなる。 ただし、KT400Aはシステムバス400MHzをサポートしておらず、システムバス400MHzへの対応はKT600というKT400Aの改良版で行なわれる。VIAがCeBIT期間中の記者会見で公開したロードマップによれば、KT600はKT400Aとピン互換となっているので、OEMベンダはKT400Aの基板を利用してKT600マザーボードを生産することができる。 同じように、SiSはSiS748という製品をCeBITにおいてデモした。SiS748は、やはり正式にJEDECスペックのDDR400に対応し、システムバス400MHzに対応することになる。 ●Canterwood/Springdale+低価格HTテクノロジに対抗するAthlon XP 3200+
ただし、現時点ではマザーボードベンダ側の準備が済んでいるかと言えば、残念ながらそうではない。マザーボードベンダはKT400Aを搭載したマザーボードを展示していたが、KT600を搭載したマザーボードを展示していたベンダは皆無だった。マザーボードベンダの関係者によれば、大手ベンダを含めてKT600を受け取ったベンダはなく、現在VIAからチップが供給されるのを待っている段階であるという。ただし、すでに述べたようにKT400AとKT600はピン互換なので、VIAからチップが供給され次第出荷できる状況にあるとのことだ。 AMDがシステムバス400MHzの導入でねらっていることは、Intelが第2四半期に投入するCanterwoodやSpringdaleといった800MHzのシステムバスやデュアルチャネルDDR400などをサポートする強力なチップセット、さらには3GHz以下のクロックでも登場するシステムバス800MHzおよびHTテクノロジに対応したPentium 4という強力な“AMDキラー”の製品に対抗するためだ。システムバスを400MHzに引き上げることで、実クロックをさほど上げなくても3200+相当の性能が実現できるため、これまでのように出荷までに時間がかかるという事態も避けられる可能性が高い。 だがAMDにとっては、このAthlon XP 3200+で一息はつけるだろうが、対Intelという意味では、インパクトとしては次世代となるAthlon 64に比べれば大きいものではない。やはり、Intelも恐れるAthlon 64こそが、AMDが次のジャンプをするために必要な製品だ。AMDはAthlon 64を9月にリリースする予定と公式に説明しているが、OEMメーカー筋の情報によれば、その製品はこれまで言われてきたAthlon 64よりも強力な製品になっている可能性があるという。なお、そうしたAthlon 64のラインナップやロードマップなどについてはまもなく明らかになるだろう。
□CeBIT 2003のホームページ(英文) (2003年3月17日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
【PC Watchホームページ】
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