会期:3月12日~20日(現地時間)
世界最大のIT系展示会であるCeBITは週末を迎えた。開催初日、2日目に多数開催されていた記者説明会も一段落しつつあり、報道関係者もようやっと展示会場を回れるようになった。ウィークデイは、どちらかと言えば業界関係者が来場者のほとんどだが、土日は休日ということもあり、一般の来場者が多数来場しており、多くの人で会場は大変混み合っている。 本レポートでは、そうした展示会場で展示されていた製品の中から、Centrinoモバイルテクノロジの登場で、大きな転機を迎えつつあるノートPC関連の製品についてお伝えしていきたい。 ●東京、ニューヨークに次ぐ規模で行なわれたCentrinoの発表会
Intelは3億ドルを超えると言われる巨額のプロモーション費用を使って、“Centrinoモバイルテクノロジ”という新しいブランド名を売り込むプランを持っているが、3月12日に行なわれたCentrinoモバイルテクノロジ発表会は、それを象徴するように、日本から始まって世界を廻り、最後はニューヨークで行なわれるなど非常に盛大なものとなった。 ここCeBITでも、Centrinoは盛大に発表された……と言いたいところなのだが、東京とニューヨークに比べるとやや小規模な発表会だった。というのも、東京の発表会にはIntelのポール・オッテリーニ社長兼COO、ニューヨークの発表会には同じくIntelのクレイグ・バレットCEOが出席して派手に開催されたのに対して、ここCeBITでのスピーカーはマイク・スプリンター上級副社長と、CEOおよび社長というトップの2人に比べると、スピーカーの“格”はやや落ちるからだ。 ただし、技術面を説明するスピーカーとして、Baniasプロジェクトの“顔”と言える、イスラエルのBanias開発チームを率いるモリー・イーデン ジェネラルマネージャ(Intel モバイルプラットフォームグループ イスラエルデザインセンター)が登場した。そういう意味では、CeBITの発表会に、東京、ニューヨークに次ぐ重要度が置かれていたと言えるだろう。 実際、今回のCeBITでは、あちこちに“Unwire”と大きくかかれた看板が目につき、CeBITのオフィシャルニュースであるCeBIT Newには、一面広告が出稿されるなど、世界中から集まるIT関係者に盛んにアピールしていたのは印象的だった。
●PCベンダは、Centrino ノートPCを展示
Intelが、Centrinoを発表したことを受けて、各PCベンダはCentrinoに対応したノートPCを展示した。ソニーはバイオZを、NECはLaVie M、IBMはThinkPad T40/X31など日本で発表された製品も多数展示されたが、日本では未発表の製品もいくつかあった。 富士通と独Siemensの合弁企業であるFujitsu Siemensは、1スピンドルのシン&ライトノートPCを展示した。展示されたのはLIFEBOOK Sシリーズで、13.3型液晶ディスプレイを搭載し、1.7kgと比較的軽めの重量を実現している点が、他の製品との大きな違いといえる。 このほか、ASUSTeK Computer、FIC、AOpenといった台湾のベンダもCentrinoを採用したノートPCを展示していた。ASUSTeK ComputerのS1Nは、13.3型液晶を採用した1スピンドルノートPCで、重量は1.8kgとなっている。CPUはPentium M 1.60GHz、チップセットはIntel 855GM、無線にはIntel PRO/Wireless 2100ファミリーを採用している。 このように、13.3型の1スピンドルマシンというのがいくつか出展されていた。現在サブノート市場で主力となっているのは、12.1型を搭載した製品だが、今後こうした製品が日本市場にも投入されるようであれば、1kg台後半の13.3型液晶搭載1スピンドルマシンという市場が形成される可能性もあり、要注目といえるだろう。 ●AMDの低電圧版モバイルAthlon XP-Mを搭載したFujitsu SiemensのノートPC
AMDブースでは、12日に発表された低電圧版モバイルAthlon XP-M/1700+を搭載した2スピンドルノートPCが展示されていた。日本の発表会ではシャープ、エプソンダイレクトの搭載製品が展示されていたが、CeBITではそれらに加えて、富士通のノートPCが展示された。 展示されたのはFujitsu SiemensのLIFEBOOK S2000で、重さは約1.8kgとなっている。13.3型液晶を採用しており、DVD-ROM/CD-RWコンボドライブを内蔵している。また、IEEE 802.11bに準拠した無線LANを内蔵しているというスペックになっている。なお、チップセットは、ATI TechnologiesのRADEON IGP 320Mが採用されており、グラフィックスはチップセットに内蔵されているRADEON VE相当のコアが利用される。 ●東芝は燃料電池で動作するLibrettoを展示
東芝は、CeBITの前に告知した通り、ノートPC用の燃料電池を開発した。詳しくはこちらの記事( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0305/toshiba1.htm )を参照して頂きたいが、展示されていたのはメタノールを燃料とする「ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)」という種類の燃料電池で、比較的小型化が可能になる。 ただ、従来の燃料電池よりは小さいとはいえ、明らかにLibrettoよりも大きく、重さも900gとなっており、通常のコンシューマ向けノートPCなどに利用するというよりは、連続してPCを使わなければならないような特殊用途などが、最初の用途となる可能性が高いという。 ●AOpenはマザーボードも含めて交換可能な自作用ノートPCコンポーネントを展示
マザーボードベンダとしてよく知られるAOpenだが、最近はノートPCにも力を入れている。今回は、自社ブースの大部分をノートPCに割いており、CentrinoノートPCやモバイルPentium 4-MノートPCなどを展示している。 ユニークなのは、「デスクノート」と呼ばれる、デスクトップPCのパーツを利用してノートPCを作る製品。完全に各パーツをモジュール化し、ユーザーが自由に選択することができる。マザーボードは、Pentium 4用、Athlon XP用が共通の大きさで作られており、例えば、Pentium 4からAthlon XPに乗り換えようと思ったら、マザーボードごと交換すれば可能になる。あるいは、Pentium 4のシステムバスが800MHzに移行した後でも、マザーボードごとシステムバス800MHzに対応したチップセットに交換すれば、移行が可能になる。 さらに、液晶ディスプレイまでがモジュール化されているので、液晶ディスプレイを交換することも可能だ。最近では省スペースデスクトップPCの代わりに、こうしたデスクノートが流行になりつつあるが、ディスプレイを買い換えたい時には、事実上本体ごと買い換えになっていただけに、ノートPCにもアップグレード性を求めたいユーザーには要注目の製品といえるだろう。 なお、本製品はすでに日本国外において販売が開始されており、将来的には日本国内でも販売される可能性があるという。そういう意味では期待したい製品であるということができるだろう。
□CeBIT 2003のホームページ(英文) (2003年3月17日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
【PC Watchホームページ】
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