会場:ラスベガス 会期:3月2日~5日(現地時間) PMAは米国最大の写真業界向けトレードショーである。そのため、米国や日本メーカーはもちろんのこと、世界各国から実にさまざまなメーカーが出展している。 デジタルカメラの世界にしても、基本的には日本メーカーが主導権を握っているわけだが、近年、著しい進化を遂げているのが、台湾や韓国などの中堅メーカー。その多くはOEMを主体としており、市場ではOEM先ブランドで販売されるわけだが、このPMAではこれらのメーカーも新たなOEM先を探し、ブースを出展している。 しかも、今回のPMAでは、これらのメーカーから500万画素機や光学10倍ズーム機、超小型モデルなどまで登場。これまで日本メーカーのお家芸だった分野にまで進出しようとしている。 そこで今回は、普段目にすることが少ない海外メーカーの主要な新製品についてレポートしよう。
●フルラインナップを揃えたSamsung
ご存じの方も多いと思うが、近年とくに海外でかなりのブランド力を獲得している韓国のSamsung。 もともと同社は、銀塩カメラの時代から多数のモデルを発売していることでも知られており、最近ではドイツの名門ローライを傘下におさめるなど、カメラ業界の中でも確固たる地位を築き上げている。 家電から半導体まで広くカバーする大企業だけに、近年はデジタルカメラを始めとしたデジタルイメージングの世界にかなり力を入れた展開を図っている。 このSamsungは今回、130万画素から400万画素ズームに至るまで、フルラインナップの新製品を一挙に発表した。 そのフラッグシップとなるモデルが、399ドルと手頃で高品位な400万画素3倍ズーム機の「Digimax V4」だ。 デザインは、どことなく国産人気モデルに似た印象があるが、フルメタル外装で質感もなかなか良好。起動時間は2秒以下と高速で軽快感のあるモデルだ。 CCDは1/1.8型400万画素タイプ。レンズはドイツの名門シュナイダーブランドの光学3倍ズームを搭載している。もちろん、露出モードを始めとした諸機能も充実しており、最新の国産モデルと肩を並べるもの。 なかなかユニークなのが電源で、単三型2本での駆動だが、アルカリ、ニッカド、リチウムイオンのいずれにも対応。さらに、一次電池のCR-V3や専用形状のニッケル水素電池など、計9種類もの電池に対応できるという。このあたりは世界中で販売されることを前提としてSamsungならではのこだわりを感じさせる。 わずか半年前、昨秋フォトキナで出品されていたモデルに比べ、そのデザインや質感、起動や記録の速さなど、あらゆる面が大幅に改良されており、その進化には目を見張るものがある。正直なところ、ここまで完成度が高まると、デジタルカメラは日本のお家芸とはいいにくい部分もでてきそうだ。 唯一、惜しむらくは、Samsungの携帯電話やDVカメラなどに見られる、デザインの斬新さが感じられないところだが、1/1.8型CCD搭載の400万画素3倍ズーム機としては、十分にリーズナブルなこともあって、日本メーカーにとってはかなりの強敵が現れた感じがした。
同社は、同じボディーの300万画素機「Digimax V3」(299ドル)、200万画素3倍ズーム機「Digimax 240」(200ドル)、200万画素2倍ズーム機「Digimax 201」(140ドル)、130万画素2倍ズーム機「Digimax 101」(120ドル)などを同時発表。いずれも日本メーカーよりも手頃な価格を実現しているの大きなポイント。このあたりもプライスに敏感なアメリカ向けらしい展開といえそうだ。
□Samsungデジタルカメラサイト(英文)
●SKANHEX TECHNOLOGY、500万画素3倍ズームや400万画素8倍ズーム機を出展
以前から高画素化に熱心に取り組んでいる、台湾のOEMメーカー「SKANHEX」。同社は今回、海外メーカーでは珍しい500万画素3倍ズーム機や400万画素8倍ズーム機、コンパクトな400万画素3倍ズーム機などを発表した。 いずれも、この春の国産上級機のトレンドとなっている最新の高密度・高画素CCDを搭載したもの。ファイルフォーマットも最新のExif2.2(ExifPrint)に対応するなど、力の入ったモデルに仕上がっている。 まず、500万画素機の「SX-512Z」は、35mm一眼レフ的な雰囲気を備えたデザインのハイエンド機で、CCDは昨秋から大手メーカーで搭載され始めた1/1.8型の504万画素タイプを搭載している点が大きな特徴。レンズは光学3倍ズームだが、非球面レンズを搭載することで高画質化を図っている。デザインはあまり洗練された印象は受けないが、とうとうOEM機の世界にも500万画素機の時代が到来したという点で、インパクトのある製品といえる。 一方、400万画素では、コンパクトな3倍ズーム搭載機「SX-412z3」と、8倍ズームを搭載した「SX-412z8」をラインナップ。この両機は、まだ日本メーカーでも搭載機が発売されていない、最新の1/2.5型400万画素CCDを搭載したモデルだ。 前者はなかなか高品位なスタイリッシュなもの。レンズも2段沈胴式のものを搭載することで、薄型化が図られており、サイズも110×56×35mmと結構コンパクトに仕上がっている。ちょっと前までは、OEM機というと、価格は手頃だがサイズは二の次というものが多かったが、このモデルにはそんな妥協が見られない感じだ。 しかも、OEM先への出荷価格はわずか180ドル。これにOEM先の利益や経費が載るわけだが、それでも十分リーズナブルな価格帯に収まりそうだ。 また、後者の8倍ズーム機もなかなか魅力的。一足先にオリンパスが400万画素10倍ズーム機「C-750UltraZoom」を発表してしまったが、本機はそれに迫るスペックを実現している。スタイリングは機能本意で好みが分かれるところだが、こちらもOEM先への出荷価格は250ドルと手頃なレベルだ。 これらのモデルは今夏以降の出荷になるというが、今年後半には商社ブランドなどで、このような高画素・高倍率機が登場するのかと思うと、なんとも不思議な感じだ。もっとも、日本国内は品質やブランド重視の世界なので、おそらくこれらのモデルが出回ることはないだろう。
●PREMIER、小型500万画素機や200万画素10倍ズーム機を出展
台湾系OEMメーカーの中でも最大級の規模を誇るのが「PREMIER」。そのOEM向けカタログを見ていると、日本の有名カメラメーカーのブランドで販売されている機種がいくつも掲載されているほど、といえば、その雰囲気が伝わるだろうか? 同社は今回、コンパクトな500万画素3倍ズーム機「DC5330」や、200万画素ながらも光学10倍ズームを搭載した「DC2A30」などを出品した。 前者は「IXY Digital 300」と同じくらいのサイズで、500万画素3倍ズーム機を実現させており、ボディーの質感も高そう。CCDサイズは明記されていないが、1/1.8型を搭載していることだろう。 後者は一眼レフ的なスタイリングの200万画素10倍ズーム機で、それほどコンパクトではないが、10倍ズームという点は注目に値する。もともと同社は銀塩コンパクトカメラの世界でも世界屈指のOEMメーカーだけに、コンパクトカメラ的なデザインはこなれているが、このようなタイプのデザインは経験が少ないためか洗練度が足りない印象だ。
●Mustek、300万画素CCD搭載機や200万画素CMOS機をラインナップ
同じ台湾の有名OEMメーカーでありながらも、トイカメラ系を得意とし、自社ブランドでの発売も手がけている台湾のMustek。 同社のトイカメラは、商社ブランドなどで日本国内にも数多く出回っているため、そのデザインに見覚えのある人もいることだろう。実際にPMAの会場で、同社の製品を扱っている商社が別ブースを構えてビジネスしているケースもあった。 もともとVGAクラスのCMOS搭載機がメインだった同社だが、ここに来て、やはり高画素化の波に乗るべく、最近では300万画素CCDを搭載したスクエアタイプのモデルや、Cyber-shot Uそっくりのコンパクトな液晶モニター付き200万画素CMOS搭載機もラインナップしている。 いずれもプラスチック然とした外観で、あまり高級感はないが、その価格の安さには目を見張るものがある。多くのOEM系メーカーがカメラ然としてモデルへと移行してゆくなか、同社はもともとPC周辺機器と得意とするメーカーだけに、どこかでPCカメラ的なノリのある独自路線を行くメーカーだけに、今後の展開が注目される。
□PMA 2003のホームページ(英文) (2003年3月7日) [Reported by 山田久美夫]
【PC Watchホームページ】
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