会期:2月18日~21日(現地時間) Intelが開発者向けに開催しているIntel Developer Forum(以下IDF)は、2月18日(現地時間)よりスタートしている。初日には、Intel CEOのクレイグ・バレット氏による基調講演が行なわれたほか、いくつかの総合説明会が行なわれた。また、夕方からは展示会であるDemo Showcaseがスタートした。本レポートでは、Demo Showcaseで展示された注目の製品のいくつかを紹介していきたい。 ●Intel 865ファミリーを搭載したマザーボードが展示される Intelブースには、基調講演などで発表されたIntel製品が展示されている。PCユーザーにとって最も注目されるのは、開発コードネームCanterwoodで呼ばれるIntel 875Pチップセット、ないしはSpringdaleで呼ばれるIntel 865PE/G/Pチップセットを搭載したマザーボードだろう。 Intel 875P、およびIntel 865ファミリーは、デュアルチャネルDDR400をサポートし、800MHzのシステムバス、Gigabit Ethernet専用のバスであるCSA(Communication Streaming Architecture)という豪華な仕様になっている。さらに、新しいサウスブリッジであるICH5は、新たにSerial ATAの機能が追加され、標準でSerial ATAのHDDが利用可能になる。展示会場ではそれに先行してIntel 865ファミリーと思われるチップセットの展示が行なわれた。 だが、展示ではSpringdaleであると明示されたわけではなく、外見から類推するしかない。といっても、比較的類推は容易だ。というのも、デモマシンではメモリモジュールにDDR400を利用したPC3200がデュアルチャネルで利用されている。IntelのデュアルチャネルDRAMコントローラを装備したチップセットと言えば、Intel 875/865以外ではE7205しかない。だが、E7205ではPC3200は利用できないので(もちろん、PC2100相当としては利用することが可能であろうが)、おそらくIntel 875ないしはIntel 865のどちらかである可能性が高いだろう。 ただ、外見ではIntel 875Pなのか、Intel 865PEであるのかは区別がつかないので、どちらであるかはわからなかった。たとえば、Serial ATAのデモに利用されていたのは、赤い色の基板を採用したマザーボードなのだが、Serial ATA RAIDの機能を搭載していた。ノースブリッジはヒートシンクで隠されており、判別は不可能だった。IntelはIntel 875P搭載マザーボードとしてD875PBZ(Bonanza)、Intel 865PE搭載マザーボードとしてD865PERL(Rock Lake)を用意しており、いずれのマザーボードもSerial ATA RAID機能を有している。おそらく、そのどちらかなのだが、残念ながらわからなかった。 このほか、micro ATXフォームファクタで、Intel 865G搭載のD865PESO(Stoneville)が、TPMチップのデモなどで利用されているなど、そこかしこでIntel 865GE搭載マザーボードを見ることができた。
●Centrinoモバイルテクノロジに対応したノートPCが展示される Intelのブースでは、3月12日に発表される予定のCentrino(セントリーノ)モバイルテクノロジに対応したノートPCが公開された。Centrinoモバイルテクノロジは、これまでBaniasのコードネームで呼ばれてきたCPU「Pentium M」、Odem/Montara-GMのコードネームで呼ばれてきたチップセット「Intel 855PM/GM」、Calexicoのコードネームで呼ばれてきた無線LANモジュール「Intel PRO/Wireless 2100」ファミリーという、3つのコンポーネントから構成されるモバイルPC向けのプラットフォームだ。 Pentium MやIntel 855PM/GMチップセットは、従来のモバイル向けCPUやチップセットに比べて省電力機能が高度になっていたり、そもそも消費電力がモバイルPentium 4-Mなどに比べて低くなっているため、これまでよりも薄型の筐体を採用したり、よりバッテリ駆動時間が長いPCを作ることが可能になる。 会場では、Samsung、FIC、東芝、GatewayなどのCentrino搭載ノートPCが展示されていた。今回、IntelはOEMベンダに対してCentrinoモバイルテクノロジ対応ノートPCの展示だけを許可している。 Centrinoを名乗るためには、Pentium M+Intel 855PM/GM+Intel PRO/WIRELESS 2100ファミリーの3つの要素が整っていなければならない。従って、たとえばIntel PRO/WIRELESS 2100を採用せず、Pentium M+Intel 855PM+Atherosの無線LANモジュールという組み合わせのノートPCの場合はCentrinoを名乗ることができないので、今回のIDFでは展示できないのだ。 このため、今回展示されたノートPCはいずれもIntel PRO/WIRELESS 2100を搭載したモデルとなっている。今回展示された5メーカーの中で、日本人にとっていかにもCentrinoらしいと思える製品は、東芝が展示したDynaBook SSをベースにした試作機だけだった。ただ、展示されていたのはいかにも試作機という趣で、SDカードスロットはつぶされていた。
●日立製作所は水冷デスクトップPCや水冷サーバーを展示 昨年のIDF Springにおいて、水冷ノートPCで話題を集めた日立製作所は、今年は“水冷デスクトップ”を展示した。日本でもおなじみになりつつあるキューブ型の筐体を利用し、内部のヒートシンクと外部のヒートシンクを冷却水が入ったチューブで接続し、ポンプを利用して循環させる。熱をPCの後面に出ているヒートシンクに伝導させ、それを冷やすことでPCを冷やすというものだ。これによりファンは後面に出ているヒートシンクを冷やす1つだけに減らすことができるという。 同じシステムで、通常のファンを利用して空冷システムを作った場合に比べて、騒音は16dBも減って28dBとなり、図書館の騒音といわれている30dBを切る静音性を実現できる。現在のスペックでは消費電力が75WまでのCPUであれば、30dB以下が実現できるという。なお、装置の寿命だが、日立の説明員によれば5年は大丈夫だという。 さらに、日立製作所では音よりも冷却性に重要度が置かれるサーバー環境にも、水冷を組み込んだシステムを試作して、公開している。デスクトップPCでは、静音にふった部分を冷却に回すことで、空冷に比べて冷却性をあげているという。実際デモしていた2Uのブレードサーバーでは、CPUの温度が空冷の場合に比べて20度程度低くなっていた。 なお、今後日立製作所は、台湾のODMベンダなどに対して水冷方式の採用を働きかけていくという。日立の関係者によれば、近々アジア太平洋地域のODMベンダなどから構成されるコンソーシアムを結成し、水冷の普及を目指すという。
●多くの注目展示が行なわれた無線LANの関連製品 無線LANのソリューションが多数展示されていたのも、今回のIDFの特徴だ。世界最大のネットワーク機器ベンダのLINKSYSはIEEE 802.11a/b/gという3つの規格をサポートするデュアルバンドアクセスポイントを展示していた。Centrinoモバイルテクノロジが、11a/bのデュアルとなっているため、11aと11gかという規格の違いに大きな注目が集まっているが、その両方をサポートするIEEE 802.11a/b/gデュアルバンド対応アクセスポイントはそのもっともわかりやすい解だ。 ただ、展示はされたが、出荷は今すぐということはないようだ。その原因は、11a/b/gのすべてをサポートするチップがまだ間に合っていないことが大きい。というのも、無線LANのコントローラや無線部分を供給するベンダは、TI(Texas Instruments)、Atheros、Intersilなどだが、これまでのところ11a/b/gを1つのmini PCIで実現できるチップを出荷したベンダはまだないからだ。 Atheros Communicationsは、もっとも出荷に近いベンダと言われているが、彼らは11gの規格が最終仕様となるまで出荷しないとしており、6月と言われる最終規格の決定までまだまだかかりそうだ。 Intersilは、すでに無線部分をCMOSチップにして、MAC/ベースバンドを統合したISL3890と無線部分のISL3690の2チップで11/a/g/bのmini PCIモジュールとしたPRISM Duettoを発表しており、IDFでも展示していた。Intersilによれば、PRISM Duettoのコストは11bないしは11gのみの場合に比べて15~20%程度に収まるとしており、実際に出荷されれば安価にa/b/gを実現するソリューションとしてかなり有望だ。 しかし、現在までのところIntersilのチップはサンプルすら出荷にこぎ着けておらず、機器ベンダの中でこのチップを利用した製品を計画しているところは今のところ多くないのが現状だ。Intersilによれば、第1四半期の終わりには大量出荷を可能にしたいということで、出荷が予定通り始まれば第3四半期には対応製品が登場する可能性があるといえる。 このほか、IntelではMobile IP技術を利用した無線ローミングソフトウェアのプロトタイプを展示した。これは、無線LAN、GPRS(GSM方式を利用したデータ通信、日本で言えばPHSのデータ通信のようなもの)、Bluetoothと3つの無線方式の優先順位をつけることで、たとえば、無線LANの圏外に出たときには、瞬時にGPRSによる接続に切り替えるなどを自動で行なってくれる。Mobile IPの技術を利用しているため、アクセス方式を切り替えても、IPは変わらないため、ユーザーはアクセス方法が変わったことを意識せずに、接続することができる。現時点ではプロトタイプだが、今後Intelのネットワーク製品やCentrinoなどに搭載される可能性もあるというので、要注目だ。
●2003年~2004年のPCを構成するビルディングブロックが展示 このほか、2003年から2004年のPCを構成する様々なパーツなどが展示された。AnalogDeviceは、PrescottのVRM(電圧変換器)のデモを行なった。PrescottのVRMは、VRM10(NorthwoodのVRMはVRM9.1)と呼ばれ、すでにOEMベンダに対してデザインガイドが配布(FMB)されている。Prescottのデザインガイドは2つあり、最初にリリースされたPrescott FMB1においては、VRMはPrescott FMB2と同じ3重の仕様となっているという。さらに、Prescott FMB2では4重が推奨とされており、今後もより電圧周りへの要求は厳しいことになっていきそうだ。 なお、このほかMolexはDDR2 SDRAMのメモリソケットを展示したほか、TIはIEEE 1394bのデモを行なった。
□IDFのWebサイト(英文) (2003年2月22日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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