会期:2月18日~21日(現地時間) Intelのマイク・フィスター副社長はIDFの3日目に行なわれた基調講演の中で、Itanium 2プロセッサのデモなどを行ない、同社が今年リリースを予定している0.13μmプロセス版Itanium 2“Madison”の廉価版となる“Deerfield”(ディアフィールド)が、低電圧版Xeonとしてリリースされることが明らかになった。 ●急速に立ち上がりつつあるItanium 2のマーケット 「皆さんが思っているよりも、Itanium 2の市場は急速に立ち上がっていますよ」とは、フィスター氏の発言ではなく、あるOEMメーカー関係者の弁。初代ItaniumのMerced時代には悲惨な状況だったIA-64だが、McKinleyコアのItanium 2の登場で状況は大きく改善されつつある。その最も大きな理由は、Itanium 2の強力な処理能力だ。 NEC(HewlettPackaradと並ぶItanium 2の主要なOEMメーカーだ)の32ウェイ Itanium 2サーバー「Express5800/1320Xc」は、サーバーの処理能力を計測する主要なベンチマークの1つであるTPC-Cにおいて、富士通「PRIMEPOWER 2000」(SPARC 64/128プロセッサ)に続いて第2位となっている。TPC-CのWebサイトによれば、スコアあたりの価格では富士通のPRIMEPOWER 2000が28.58ドルであるのに対して、NECのExpress5800/1320Xcは12.98ドルとなっており、処理能力のみならずコストパフォーマンスの点で抜きん出ている。 こうしたこともあり、メインフレームのリプレース用途などを中心にItanium 2の評価を行なう顧客は増えており、Itanium 2のOEMベンダは好調に出荷を伸ばしつつあるという。
●2003年のItanium 2は、MadisonコアとDeerfieldコアが投入される フィスター氏はItanium 2の現状についてふれ、「すでに多くのOEMベンダがItanium 2を搭載したサーバーを出荷してくれている。例えば優れたSPARCサーバーを持つ富士通にも、2004年にはItanium 2サーバーを出荷していただける予定だ。Microsoftを始めとするOSベンダやアプリケーションベンダが、様々な対応ソフトウェアを出荷してくれており、Itanium 2の環境は整いつつある」と述べ、Itanium 2プラットフォームの助走期間が終了し、本格的な離陸がすでに始まっているとして、Itanium 2の成功に自信を見せた。
そしてItanium 2の今後について、「2003年にMcKinlyの0.13μm版でL3キャッシュを6MBに強化したMadisonを出荷し、2004年にはMadisonのL3キャッシュを9MBに強化したバージョンを追加する。また、2003年にはローエンド向けのItanium 2としてコードネーム“Deerfield”で呼ばれてきたコアを、Low Voltage版Itanium 2として追加する」と述べ、今年はMadisonとDeerfieldの2製品でItanium 2のラインを強化していくことを明らかにした。 Madisonについては、すでにISSCCにおいて詳細が発表されている( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0210/isscc01.htm )。Madisonは製造プロセスルールが0.13μmに微細化され(現行のItanium 2=McKinleyコアは0.18μm)、クロック周波数は1.5GHzへと引き上げられる。L3キャッシュは最大で現行Itanium 2の倍となる6MBに引き上げられ、4MBと3MB版も用意される。フィスター氏はMadisonを今年の夏までにリリースすると説明したが、OEMメーカー筋の情報によれば、第2四半期と説明されているという。 Deerfieldは、Madisonの廉価版と位置づけられるプロセッサで、やはり0.13μmプロセスで製造される。クロック周波数は1GHzで、1.5MBのL3キャッシュを搭載する。また、Madisonがデュアルプロセッサだけでなく、4ウェイ、8ウェイ、さらに32ウェイなどもサポートするのに対して、Deerfieldはデュアルプロセッサ構成のみとなる。なおフィスター氏は、Deerfieldのリリース時期を2003年とのみ説明したが、OEMメーカー筋の情報によれば、第3四半期が予定されているという。 今回フィスター氏は、Deerfieldの位置づけを「低電圧版のItanium」とした。これはDeerfieldが、モジュラーサーバーやブレードサーバー、ラックサーバーといったフロントエンドサーバーの市場をターゲットとしているからだ。これらのサーバーでは、これまでのItanium 2がターゲットとしていたバックエンドの大規模サーバーなどに比べると小型の筐体が採用される。ちょうど、低電圧版Xeonや低電圧版Pentium IIIなどがこうした市場向けとされているのと同じような扱いであると言えるだろう。ただし、Deerfield自体の消費電力は62Wとなっているので、それなりにしっかりした冷却機構は必要となるだろう。それでも、現行Itanium 2やMadisonの130Wに比べれば、圧倒的に省電力となっている。 なお2004年には、すでに明らかになっているとおり、MadisonのL3キャッシュを9MBに増やしたモデルが追加されるほか、Deerfieldの後継となるコアが投入される。こちらに関しては詳細は明らかになっていないが、おそらくMadisonと同じようにL3キャッシュが増やされることになるだろう。2005年には、1つのダイに2つのコアを搭載したCMP(Chip Multi Processor)構成となる“Montecito”が投入される。 ●2003年から2004年にかけてItaniumで大攻勢をかけるIntel 今回発表された、Madison、Deerfiled、Madison 9M、Montecitoなど、これらのMPUはすべて同じプラットフォームで利用できる。Madison、Deerfieldは、現行のItanium 2と同じPAC611パッケージであるほか、Montecitoもパッケージなどは未定であるが、システムバス自体は同じテクノロジを採用する予定だという。また、OEMベンダに関しても、NEC、HewlletPakcrad、Dell ComputerのようなすでにItanium 2マシンを投入しているベンダだけでなく、富士通のようにSPARC64のベンダだったところまでも獲得している。 こうしたエンタープライズ向けのMPUは、新しいMPUを数年に1度投入するのが通例であるため、Intelのように毎年新しいプロセッサを投入するというのは他にあまり例がない。そうしたことからも、Intelがかなり本気でItaniumに力を入れ、普及を目指し大攻勢をかけていくことの決意が伺える。 □IDFのWebサイト(英文)http://developer.intel.com/idf/index.htm □IDF Spring 2003のWebサイト(英文) http://www.intel.com/idf/us/spr2003/index.htm (2003年2月21日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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