1月8日(現地時間)発表 バンダイは1月8日、2005年の発売をめどに、本格的なエンターテインメント猫型ロボット「ドラえもん」の開発を開始するとアナウンスした。 バンダイはそのベースとなる技術を米Evolution Robotics(以下ER)からライセンスを受けることを明らかにしており、同社の最新技術の集大成であり、その開発ベースになると思われる試作ロボット「ER2」のデモンストレーションをCES会場同社ブースにて行なった。 ●ERの製品第一号「ER1」 ERは2002年9月、ノートPCをロボット化できる自作キット「ER1」を499ドルにて発売開始している。CES会場内ERブースではそのER1のデモンストレーションも行なわれていた。
ER1はノートPCを固定させるフレームとモーター駆動される車輪、CCDカメラを組み合わせた製品で、それら周辺デバイスの制御と情報処理をノートPC側で行なうシステムを採用。 ノートPC側にオリジナルOSをインストールする必要はなく、そのノートPCで動作しているWindows環境に同社のロボットソフトウェアをインストールするだけでよい。また、オプション品として、物を掴んだり、外界に影響を与えたりできる「グリップ・アーム」や、外界の障害物情報を検知する「赤外線センサー」なども発売しており、ユーザーの用途や楽しみ方に応じて自分のER1をアップグレード/カスタマイズできる仕組みを提供している。 ER1はユーザーが実際にSDKを使ってソフトウェアを作成するという楽しみ方がメインであり、一般消費者向きの製品ではない。しかし、ローコストで高度なオリジナルロボットが作れる手軽さが受け、発売以来ロボット愛好家や研究者の間で人気商品となっているという。 これまでに、実際のチェス盤を使ってのチェスプレイ、玄関までピザの料金を払いに行く、ペットに餌をあげる、といった優秀なアプリケーションが誕生している。 ER1に組み込むノートPCの奨励スペックは以下のようになっている。 ・500MHzクラスのCPU ●ERの製品第2号「ER2」
今回、CESで初公開となったER2は、ER1の進化形で、ロボットソフトウェアをアップグレードして、障害物センサーやグリップアームの制御を最適化したもの。 ER2の最もセンセーショナルな特徴は、初めて連れて行かれた部屋の障害物状況を学習して、移動可能範囲を把握、最適な移動経路を算出するvSLAM(Vision Based Simultaneous Localization and Mapping)機能にある。 オブジェクト認識機能も強化され、立体物を見せられるとER2はその形状を学習。以降、その形状の一部しか見えていなくても、その物を「それ」と認識することが可能だという。つまり、グリップアームと組み合わせれば、「なくしものをER2に探してきてもらう」といった活用も不可能ではないというのだ。 このほか、ER2のvSLAM機能と強力なオブジェクト認識機能を組み合わせた、以下のような機能が実装されているという。 ・セキュリティ:遠隔地から自宅内のER2の視覚映像をインターネット経由で確認する なお、ER2は、CESにおいて同社の技術デモンストレーションのために製作したもので、基本的に市販の予定はないと説明していたが、CESでの反響の大きさを受けて年内に2,000~2,500ドル程度で販売することも思案中とのこと。 現時点でのER2のスペックは以下のようになっている。 ・CPU:Pentium 4 2GHzクラス ●「ドラえもん」はどうなる? それでは「ドラえもん」はどうなるのか。今回の技術提携の発表に際し、バンダイロボット研究所所長 芳賀義典氏が「子供達の教育パートナーとしてのロボットを開発する」と述べていることからER2ベースとなることを強く予感させる。 この点についてERの社長兼COOのAlec Hudnut氏にインタビューしたところ、「ER2に実装した技術を応用してドラえもんを開発することは明らかだ。しかし、ER2をそのままドラえもんにするということはない」とコメント。 まだ、開発に着手したばかりであり、コンシューマ製品となれば、ER2ベースではオーバースペックな部分もあるとのことで、ER2に実装した技術を取捨選択して「ゼロから開発する」ということになるそうだ。 「まだコンセプトも価格レンジも決まっていないが、我が社の技術を活用する以上はただのおもちゃにはならないだろう」とAlec Hudnut氏。価格レンジ的にはAIBOなどと同クラス、あるいはそれ以上になる可能性も否定できないようだ。 外観はER2のような「いかにもロボット」という面持ちになるのだろうか。「バンダイとの共同開発になる以上、みんながよく知っているドラえもんの見た目になるはずだ」。 手足のギミックはどうなるのだろうか。まさか二足歩行というのも大げさな気がするが、かといってER1のような車輪むき出しというのも寂しい。「その点は分からない。まだ開発は始まったばかりで、我々以外がプロジェクトに参加してくる可能性もある」。 「一つ、あらかじめ理解して頂きたいのは、我々は(ロボット用の)ソフトウェア開発会社ということだ。そして我々がライセンスしたのは我が社のロボット・ソフトウェア・プラットフォーム(ERSP:Evolution Robotics Software Platform)だ。我々はバンダイが要求する仕様に応えるソフトウェアは開発するし技術も提供する。それらが実装されたドラえもんは素晴らしい人間のパートナーとして活躍するロボットになるはずだ」。 ERは4月3日よりパシフィコ横浜にて開催されるROBODEX2003に合わせて来日し、今回のドラえもん開発に関しての記者会見、あるいは同社最新技術のデモンストレーションを行なう予定とのこと。 「こんなときにドラえもんがいてくれたら……」よく聞かれるこの願いは2005年に現実となるのか。 □2003 International CESのホームページ(英文) (2003年1月14日) [Reported by トライゼット西川善司]
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