Macworld Conference&Expo / San Francisco 2003基調講演レポート

まれに見る製品ラッシュとなった基調講演(前編)
〜4つのiアプリケーションが連携して生まれた「iLife」


今回新たに発表されたハード、ソフトの新製品の数々

会場:San Francisco The Moscone Center
会期:1月7日〜10日(現地時間)



 Macworld Conference&Expoの会場となるThe Moscone Centerには、早朝6時頃から開場を待つ人々の行列ができあがった。もちろん、お目当てはEsplanade Ballroomで行なわれるスティーブ・ジョブズCEOの基調講演である。こうしたMacworldならではの光景は日本も米国もさほど変わらないが、東京開催中止の報があるだけに複雑な思いもある。

●“Switch”のキャンペーンは順調と報告

 そうした人々を飲み込んだ基調講演会場は「What a Wonderful World」をBGMに、定刻からやや遅れて暗転。満場の拍手のなかステージにジョブズCEOが登場した。「今日は伝えるべき情報がたくさんある。さぁ、始めよう」といつものフレーズでスタート。さらに、この基調講演がMPEG-4を使った最大規模のストリーミング・イベントとして世界各国にライブ配信されていると胸をはった。

 最初は、昨年から始まった“Switch”のキャンペーンがテーマ。中でも、なぜか大人気の学生出演者「Ellen Feiss」のスライドが表示されると、開場は笑いと喝采で複雑な雰囲気が生まれる。キャンペーンの開始以来、同社のホームページ内に設置されているSwitchのサイトには延べ780万人のアクセスがあり、うち68%がWindows上のブラウザからアクセスしており、ユーザーはSwitchすることに大きな興味を抱いているとコメントした。

 また、2001年5月に最初のApple直営店がオープンしてから、20カ月間ですでに51店舗が全米に展開。これらの各店舗から15マイル圏内に生活する人口は8,500万人にものぼるとして、潜在的顧客の存在と店舗がカバーするエリアの充実ぶりを強調した。これら直営店でのMacの売り上げは、およそ50%がWindowsからのいわゆる“Switcher”に対して販売されているとして戦略が成功していることを印象づけた。ちなみに、昨年12月の来店者数は140万人にものぼり「これはMacworldでは20回分の来場者だ」として、製品体験の場がMacworldに頼るだけではないことを暗示してみせている。

 既存の情報からは、全米の教育者に向けたMac OS Xの無償提供が好評で、昨年末で終了の予定を今年3月末まで延長したり、先週には「iCal」、「iSync」といったアプリケーションがアップデートされたことなどを矢継ぎ早に報告した。

黒のタートルネックにジーンズというお馴染みのスタイルで基調講演を務めるスティーブ・ジョブズCEO Switchキャンペーンのサイトに、Windows上のブラウザからアクセスした割合。およそ500万アクセスに達するという。彼らはSwitherの予備軍と、潜在的ユーザーの獲得を目指す 初出店から約20カ月間で、全米で51店舗へと増加した直営店。各店舗から15マイル圏内に生活する住民は8,500万にもおよぶという

●iPod対応スノーボードウェアが登場

日本市場におけるMP3プレイヤーのシェアの42%をiPodが占め、トップシェアを米国とともに達成しているという

 報告の中には、iPodの販売台数が60万台に達し、特に日本ではMP3プレーヤー市場における42%のシェアを獲得して、米国と並びMP3プレーヤーのトップシェアを達成しているという紹介もあった。ほかにiPod関連では、スノーボードメーカーのBurton社が、iPodに対応するウェアを発表。インナーにiPodを装着できるほか、袖口に用意されたリモコンでiPodの操作が可能になっている。米国のAppleStoreでは499ドルでオーダーが可能になっているという。

 Mac OS X関連では、昨年8月にリリースしたJaguarことMac OS X 10.2の登場で、Mac OS Xのユーザーが500万人に達したという。また、2003年中には900〜1,000万ユーザーに到達するものとの見込みを発表した。対応アプリケーションも5,000本に到達。「NASCAR Racing 2002」や「QuickBooks 5.0」など、パッケージのスライドを見せながら著名ソフトの対応が進んでいることも紹介した。

 しかし、実際に名はあげないものの、いくつかのアプリケーションの対応が遅れているとコメントし、暗にこれらのメーカーを牽制してもいる。そのうえで、本日発表する新製品からはMac OS Xが唯一の起動OSになるとして、昨年パリで行なった発表を再度肯定した。


スノボメーカー、Burton社のウェア。インナーの部分にiPodの収納場所が用意されている。米国のAppleStoreでは499ドルで購入可能 ウェアの袖口に用意されているiPod用のリモコン。ゴアテックス素材で防水機能付き 2002年におけるMac OS Xのインストールベースの推移。Jaguarこと10.2の発表以降、230万ほど増加している。このまま2003年には900〜1,000万に達する見通しという

●ビデオ編集ソフト「Final Cut」には廉価版が

 冒頭の約20分ほどを要した情報のアップデートが足早に終わり、いよいよ新製品の紹介に進んでいく。最初のテーマになったのはプロ向けのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」である。現行製品は999ドルで提供されているが、今回一部のプロ向け機能をカットした廉価版が「Final Cut Express」として、299ドルで発表された。

 廉価版とはいえ、画面表示や操作方法はFinal Cut Proとほぼ同等。カラーコレクション機能やリアルタイムエフェクト、そしてさまざまなトランジションなど、これまでProの紹介時に大きくフィーチャーされてきた機能はそのまま利用できるようになっている。また、iMovieからのステップアップを目指すユーザーもターゲットにするためiMovieで利用してきたリソースがそのまま使えるようになっている。

 製品デモは、マーケティング担当の上級副社長であるフィル・シラー氏が担当したが、実際これまでProの機能としてクローズアップされてきた要素を再演してみせる形となっていた。日本国内での「Final Cut Express」の販売価格は、34,800円と設定されている。


ビデオ編集ソフトの廉価版となる「Final Cut Express」を299ドル(34,800円)でリリース 基調講演におけるジョブズCEOの頼れるパートナー、フィル・シラー上級副社長。今回はFinal Cut Expressのデモを担当したが、出番はちょっと少なめ 画面の構成や操作などはFinal Cut Proとほとんど変わらない。カットされたプロ向けの機能とは映像ソースの多様性の部分で(ExpressではDVに特化)、映像編集の機能ではほとんど変わらない模様

●4つのiアプリケーションの統合環境。その名は「iLife」

4つのiアプリケーションが連携する様子。iTunesで取り込んだ音楽のライブラリから直接BGMなどをiMovieやiDVDで利用したり、iMovieで編集したファイルを直接iDVDへ受け渡すことが可能になる

 続いてはiアプリケーションのバージョンアップとなる。2年前、この場所からスタートしたデジタルハブ戦略は成功をおさめ、次のステップはこれらの連携と統合へと向かうとジョブズCEOは説明した。テーマになったのはiTunes、iPhoto、iMovie、iDVDの4タイトル。これらが相互に連携することにより、さらに便利に機能するというわけだ。

 今回バージョンアップのないiTunesは、実は音楽素材のライブラリ化で連携の重要な位置を占める。iPhotoのスライド機能やiMovie、iDVDでのBGMなどいたるところで、iTunesのライブラリが呼び出される。これまではいったんファイルとしたものをそれぞれのアプリケーションで再度取り込むという手順が必要だったため、この連携は使い勝手の向上に寄与するというわけだ。

 iPhotoは新たに「iPhoto 2」としてバージョンアップが行なわれた。従来バージョンは600万本のインストールベースがあるという。バージョンアップのポイントは「ワンクリック・エンハンス」と名付けられたカラーの補正。デジタルカメラで撮影した画像で起こりうるホワイトバランスの狂いを、クリックひとつで自動的に補正する。自らデモを行なったジョブズCEOは、雪のシーンや海のシーンなど、ホワイトバランスの狂いが生じやすいシーンでの数枚の写真を次々に自動補正してみてその機能を紹介した。

 また、もうひとつ「レタッチ・ブラシ」は、画像上のゴミや汚れなどを修正するブラシ。特に難しい設定はなく、修正したい部分をなぞるだけの簡単な操作がポイントだ。デモでは、女の子の顔にかかった前髪を消して見せたり、顔に付いてしまった傷を周囲の肌色に合わせて修正するなど(一緒にソバカスまで消して見せ、笑いを誘った)してみせた。またスライドショーをDVDに書き出すときに必要だった、ファイルのエクスポート手順も、iDVDと機能が連携したことでiPhotoのアルバムからそのまま設定できるようになっている。

iPhoto 2のスライドショーにiTunesのライブラリからBGMを選択する。いったん設定しておけば、取り込まなくても自動的に呼び出される仕組み ワンクリック・エンハンスは、デジタルカメラで生じるホワイトバランスの狂いを、クリックひとつで適正な色調に補正する機能 iPhoto 2のレタッチ・ブラシ。左ほほに付いていた擦り傷を少々手直し。この後、ポインタを鼻まで移動させるとソバカスまで消えて、会場の笑いを誘った

 これまで延べ1,200万本がインストールされたiMovieは「iMovie 3」になっている。リクエストの多かった機能として、作成するムービーにいわゆる栞を付ける「チャプター機能」を追加。ムービー上の音声トラックも音量の調整などをシーン内でより細かくできるようになっている。

 また、これまでは単調だった静止画の取り扱いも「Ken Burns effect」と名付けられたエフェクトの搭載で画期的に進歩している。このエフェクトは一枚の静止画を使って、クローズアップ位置のパンニングなどの効果が加えられる。また、この中での字幕の追加も可能になった。さらに前述のiPhoto同様に、作成したムービーをDVDにする際に、これまで必要だったムービーファイルの書き出しを不要にして、そのままiDVDに作業を受け渡すことができるようになった。

素材の中の音声も、こうして細かく音量の調節ができるようになったiMovie 3 iMovie 3の編集画面。クリップ棚の下に位置するのが、他のiアプリケーションと連携するさまざまな機能を登録したボタン
素材の中の音声も、こうして細かく音量の調節ができるようになったiMovie 3 会場がもっとも盛り上がった機能のひとつ、iMovieでのチャプター設定。iDVDでDVDにするときも、ここで設定したチャプターがそのままメニュー画面に反映される

iDVD 3で大幅に増加したモーション付メニュー画面のテンプレート。テンプレート、ムービー、BGMを画面にドラッグ&ドロップするだけで簡単にモーション付メニューが作成できる

 同時にバージョンアップした「iDVD 3」では、iMovie3で設定したチャプターをそのまま反映して、作成するDVDにチャプターメニューが追加される。他に、やはりこれまではファイルからの取り込みが必要だったメニュー画面のBGMも、iTunesのライブラリを呼び出してメニューから選択できるようになった。そしてiDVD 3のデモでジョブズCEOがもっとも時間を割いたのが、大量に追加されたモーション付のメニュー画面のテンプレート。メニュー画面、ムービーファイル、BGMはメイン画面にドラッグ&ドロップをするだけで、次々とプレビューが作成されていった。

 こうしたiアプリケーションの統合と連携が実現したことで、この統合環境をジョブズCEOは「iLife」と呼んだ。iDVDをのぞく個々のアプリケーションは、1月25日から従来どおりに同社ホームページから無償でダウンロードが可能になるほか、新しいハードウェア製品にはバンドルされることになる。iDVDにも価格は設定されていないが、容量がGB単位に及ぶアプリケーションであるため、ダウンロードでは提供されない。iDVDを含んだ「iLife」がパッケージ化されて49ドルで販売されることになる。このパッケージの日本における販売価格は5,800円。2月上旬に出荷される予定だ。

 基調講演はさらに後編へと続く。

iPhoto、iMovie、iDVDに付いたメニューボタン。それぞれ異なるが、スライドはiDVDのもの。このボタンを利用して各iアプリケーション間で連携をはかる iTunes、iPhoto、iMovieは、無償ダウンロードによる提供が継続される。今回のバージョンアップ分は、1月25日からダウンロード可能 容量がGB単位に及ぶiDVD 3を提供するためのパッケージ販売。2月上旬に49ドル(5,800円)で販売が始まる予定だ

□Macworld Conference&Expoのページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□米Apple Computerのページ(英文)
http://www.apple.com/

(2003年1月8日)

[Reported by 矢作晃]


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