FTTHユーザーにもお勧めの高速ルータ「Aterm BR1500H」



■ブロードバンドルータ新製品ラッシュで気になるコト

 インターネットのブロードバンド環境が爆発的に普及しているのは、説明するまでもない。ブロードバンド化に伴い、ブロードバンドルータも次々に新製品が登場してきている。気になるのは、各メーカーが、同じようなタイプの新製品を次々に発表し、発売していることだ。

 ブロードバンド環境の普及により、数年前のようにホームページ閲覧やメールの送受信といったシンプルな使い方だけではなく、現在ではメッセンジャーでのリアルタイムの会話やネットワークゲーム、P2Pツールによるファイル交換など、様々なアプリケーションでインターネットが活用されている。

 そのため、多くのメーカーは、主要なアプリケーションすべての環境で動作確認を行なわず、製品を出荷しているのが現状だ。理解に苦しむことだが、カタログやパッケージに記載してある内容すらまともに動作しないという酷い製品も存在する。はっきり言ってしまうと、発売当初から様々なアプリケーションの全てが問題なく動作する安価な個人向けブロードバンドルータは、存在しないと言ってもいい状況なのだ。

 そこでメーカー各社は、製品発売後に不具合を解消したファームウェアをユーザーに提供することで、これらの問題に対処している。そのため、ユーザーに誠実なメーカーであれば、ユーザーから報告のあった不具合をきちんと調査し、不具合を解消したファームウェアが提供されている。

 その反面、ユーザーに不誠実なメーカーでは、不具合が治らないだけでなく、カタログに記載されていた機能がいつになってもサポートされないといったケースもみられる。それだけでなく、旧製品のサポートも満足にされないまま、次々に同様な新製品を発売するという、常識では理解できないメーカーも存在する。

■ブロードバンドルータ選択の条件はユーザーサポート

 あたりまえの話になってしまうが、カタログやパッケージに高速なルーティングや高い機能が売りとして記載されていても、記載どおりに動作しなければ、まったく意味がない。と言っても、現状では最初から完全な製品を発売するのは事実上不可能だと言えなくもない。

 そこで、ブロードバンドルータを購入する際には、購入後にきちんとサポートが受けられるかどうかを見極めるのが重要になってくる。

 インターネットの様々なBBSなどを調べていくと、実際にその製品を使っているユーザーの生の声を聞くことができる。そのため、どの製品がサポートがいいか、そうでないのかが分かってくる。

 残念ながらブロードバンドルータを販売しているショップでも、なかなかこの手の情報を持っているところは少なく、ルータの購入前には、自分なりに調べてみるというのも必要だろう。

 幸い筆者は、自分で購入したり、メーカーからの貸与によって、数々のブロードバンドルータを実際に利用できる機会がある。すべてのアプリケーションを検証するわけにはいかないが、筆者が利用している範囲に限っても、サポートの良い製品、悪い製品が存在する。

 今回は筆者の目から見て、購入しても今後後悔する確率が最も低いと思われるブロードバンドルータを紹介したい。

 ブロードバンドルータに関しては、ユーザーによって使用方法が多岐にわたるため、すべてのユーザーが満足し、しかも安価という製品は存在しないと言っていい。しかし、メーカーサポートが手厚い製品を選択することで、より満足度の高い製品を選べるかもしれない。

■お勧めは、NEC「Aterm BR1500H」

Aterm BR1500H

 先に結論をいってしまうと、筆者の観点で現在最もお勧めの個人向けブロードバンドは、NECの「Aterm BR1500H」(以下BR1500H)である。

 ここでは、実売価格が3万円以下の製品を個人向けブロードバンドルータと分類した。もちろん、ブロードバンドルータ機能以外に無線LAN機能などがあれば、個人向けでも3万円を超える製品が存在しているが、今回はシンプルなブロードバンドルータ製品の中で比較した結果である。

 BR1500Hのカタログスペックは、NECのサイトをチェックしてもらうことにして、ここでは実際に使用した内容を中心に、BR1500Hを紹介していく。この記事で記載しているBR1500Hの内容は、最新ファームウェア・バージョン(7.48)のものだ。

 BR1500Hは、PPPoE対応のブロードバンドルータだ。PPPoE使用時でも、筆者の環境では、上り下りとも50Mbps程度のルーティング速度は記録されている。これは、NetBIOSなどのパケットを遮断するフィルタリング設定や、不正検出を行なうセキュリティ保護機能を効かせた状態でのルーティング速度である。ADSLだけでなく、FTTHユーザーでも十分なスループットだろう。

 BR1500Hは、DHCPサーバー機能やポート番号によるフィルタリング、スタティックルーティング設定といった基本的な機能を搭載している。NAPT環境でうまく動作しないアプリケーションの多くは、ポートマッピング機能で動作させることができるだろう。

 設定方法に関しては、他社のほとんどのブロードバンドルータ同様にブラウザで設定することになる。Atermシリーズでは、初級者にでも利用できるようなツールが付属されることが多いが、BR1500Hに関しては特にそういったツールは用意されていない。

フレッツスクェアの速度確認ページ。50Mbpsを超える結果は、FTTHユーザにも十分なスループットだ ブラウザを使った設定画面。設定に関しての操作性や難易度に関して、他のブロードバンドルータとの差異はあまりない Windowwsのファイル共有関連の通信を遮断する設定が初期状態で設定されているのは好感が持てる

【Radish Network Speed Testing Ver.2.24 - Test Report】
使用回線NTT Bフレッツ ベーシック
プロバイダぷらら
測定条件精度:高 データタイプ:標準
下り回線速度:54.08Mbps (6.760MByte/sec) 測定品質:99.3
上り回線速度:44.16Mbps (5.520MByte/sec) 測定品質:98.7
測定者ホストo017236.ap.plala.or.jp
測定時刻2002/11/29(Fri) 3:38
プロバイダを経由した状態での通信速度結果。上りが若干遅いが、実際の通信で問題になることはないだろう。ブロードバンドルータによっては下りと上りの通信速度の差が著しくことなる製品も存在するが、BR1500Hでは問題ない結果となった
測定サイト http://www.studio-radish.com/tea/netspeed/

 また、付属のマニュアルも簡易なものなので、より詳しい情報が必要な場合には付属CD-ROMに入っているPDF形式のマニュアルを参照することになる。BR1500Hが他社のブロードバンドルータ製品と比べて設定が難しいといったことはないが、WARPSTARなど、他のAtermシリーズに付属する簡易設定ツール類が無いのは残念である。

 UPnPに対応しているところもBR1500Hを薦める理由のひとつだ。現在、UPnP対応のアプリケーションは限られてしまうが、そのひとつにWindows Messengerがある。

 メッセンジャー系のアプリケーションによるコミュニケーションは常時接続環境での大きな魅力である。メッセンンジャーの中でも、筆者はWindows Messengerを愛用しており、UPnP対応はブロードバンドルータを選択するときの大きな要因になるのだ。

 今後、UPnP対応のアプリケーションが増えていくことが予想されるため、ブロードバンドルータのUPnP機能は欠かせないものだと言ってもいいだろう。

 今回紹介しているBR1500Hでも、発売直後のファームウェアの状態では、いくつもの不具合が存在した。ただ、これらの不具合に対して、NECが誠実に対応し、その都度修正を行なってきた結果、最新ファームウェアでは大きな問題点は見られない。

 これは、ユーザーからの不具合の報告から原因を解析し、場合によっては不具合の報告のあったユーザーにβ版のファームを提供し、試してもらうといったことを繰り返した結果で、現在ではとても完成度の高いブロードバンドルータに成長している。

■「Aterm BR1500H」の良いところ

 NetBIOSなどのポートフィルタリングをした状態で、PPPoE接続時にスループットが20Mbps以下という機種なら、比較的安定して動作するUPnP対応ルータは何機種か存在する。しかし、FTTHサービスでも利用できるようなスループット性能を備えた機種となると、ほとんど選択肢が無いのが実情だ。

 筆者はFTTHのサービスであるNTTの「Bフレッツ ベーシックタイプ」を利用しているため、標準的なポートフィルタリングを行なった状態でスループット性能が50Mbpsを超え、UPnPにも対応している高速ブロードバンドルータを常日頃から物色している。

 もちろん、カタログベースであれば、この条件をクリアするブロードバンドルータは、何機種も存在する。しかし、PPPoE接続での安定した動作をするモノ、ネットワーク対応各種アプリケーションが正常に動作するコト、といった条件を加えると、ほとんどの機種が条件から外れてしまうのだ。

 特に、ADSL環境で10Mbps程度のスループットでは不具合は見られないものの、FTTH環境で30Mbpsを超える環境で使用すると、数時間の利用で原因不明のフリーズが発生するケースもある。

 また、機種によっては、PPPoE接続時にカタログに記載しているスループット値の半分以下の実効速度であったり、UPnPへの対応予定をアナウンスしておきながら、一向に対応ファームウェアを公開する気配すらない製品も少なからず存在する。

 安定動作し、PPPoE時でも30Mbpsを超えるブロードバンドルータは、センチュリーシステムやマイクロ総合研究所からも発売されているが、現時点では残念ながらUPnPに対応していない。

 マイクロ総合研究所ではNetGenesis SuperOPTシリーズのUPnP対応を検討していると聞いているが、この原稿を執筆している時点では、まだ公開されていない。同様にセンチュリーシステムのXRシリーズの一部の製品ではUPnPに対応する予定が発表されてはいるが、現状では価格が約50万円の最上位機種「XR-1000」のみが対応しており、個人でも購入できそうなXR-350/DESやXR-360のUPnP対応ファームウェアはいまだに公開されていない。

 実はBR1500Hも、発売直後に購入した時点では、確かにFTTHでも十分なスループット性能を持ち合わせているものの、いくつかの不具合が存在し、筆者の環境では使い物にならないと判断せざる得なかったのだ。

 しかし、数度のファームウェアのバージョンアップによって、現在発売しているUPnP対応高速ブロードバンドルータとしては、群を抜いて完成度の高い製品に成長している。現状でも、使用環境によっては、細かな不具合がないわけではないが、多くのブロードバンド環境では問題となることはないだろう。

 ブロードバンドルータを発売しているメーカーは数多いが、ユーザーが報告した不具合に対して誠実に対応しているメーカーは、残念ながら数えるほどしか存在しない。酷いものになると、カタログやパッケージに記載してある性能すらクリアしていない製品もある。

 筆者は、発売直後から現在までBR1500Hをウォッチしてきたが、NECがユーザーからの不具合に対して、前向きに対応してる姿勢が感じ取れる。また、ファームウェアのバージョンアップにより、不具合の解消だけでなく、機能の追加や改善、処理速度の向上なども実現されている。

 このように、筆者が高速ブロードバンドルータとしてBR1500Hを薦める大きな理由は、単に製品としての完成度が高いというだけでなく、購入後のサポートが期待できるため、安心して使い続けられるという点が大きい。また、実売価格が1万円前後と安価な点も、筆者がBR1500Hをお勧めする要因のひとつだ。

 NAT環境ではどうしても動作しないアプリケーションに関しても、「PPPoEブリッジ機能」によって回避する手段が用意されており、購入後に通信によるトラブルが最も少ない製品だと、筆者は評価している。

■最後に

 実は、今回紹介したBR1500Hと同じ技術は、NECが製造している他の通信機器のブロードバンドルータ機能にも生かされている。

 例えば、同社の無線LAN「WARPSTARシリーズ」やNTTの「Web Caster 610M」などにもBR1500Hの技術、ノウハウが生かされているのだ。BR1500Hの成長は、同時にこれらの製品の完成度を高めていることになったわけだ。

 これは、たとえば無線LAN機能を備えたルータが必要であれば、同社のWARPSTARシリーズ製品を選択することで、完成度の高い製品を手に入れることができるということになる。また、WARPSTARシリーズの場合には各種設定ツール類が充実しており、初心者にはBR1500Hよりも扱いやすいかもしれない。

 筆者はこれまで様々なブロードバンドルータを利用してきた。それらは、数時間の利用で動作が不安定になるとか、カタログ記載の機能が実現されていないといったものが非常に多かった。

 現在発売されている製品の数で単純に判断すると、その半数以上がカタログや仕様どおりに動作しないという印象だ。特に、PPPoEを利用して、FTTHのような高速通信を行なう環境では、不安定な動作になってしまう製品が多い。

 なかなか難しいことではあるが、ブロードバンドルータの購入を考えているのであれば、単にカタログスペックや実売価格だけで判断するのではなく、実際に利用しているユーザーの声を聞いたり、インターネット上で情報を集めて検討することをお勧めしたい。

 完成された製品が無い状況の高速ブロードバンドルータに関しては、ユーザーに対してのメーカーの姿勢やサポートが、特に重要だということを理解してもらいたい。


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(2002年12月17日)

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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