元麻布春男の週刊PCホットライン

Pocket PC 2002搭載PDA 2台を試す
~PDAはメモリ容量が重要?



●1カ月使ってみたPocketGear

 PC Watch編集部から借用したPocket PC 2002機(NEC PocketGear)で、筆者がPDA再入門して1カ月余りが経過した。この間、極力持ち歩くように努めはしたのだが、どうも最近サボリがちになりつつある。どうも、あまり良いユーザーではないようだ。

 せっかくのPDAをつい置きっぱなしにしてしまう理由は、大きさや重量の問題というより、使い道にあるようだ。たとえばPDAの主要な用途の1つである住所録だが、いまどき電話番号の管理は携帯電話で行なうのが普通だろう。PDAを見ながら、携帯電話のボタンを押すのはバカげている。以前、リコーのCaplio RR30を取り上げた時に触れたように、PocketGearのカラー液晶は、デジタルカメラの写真をチェックする用途には向かない。結局、Outlookに入力したスケジュールを見るのに使うくらいしか、活用していないのが敗因だと思われる。

 もちろん、Pocket PCは、単に住所録管理やスケジュール管理にしか使えないわけではない。パッケージソフト、シェアウェア、フリーソフトを含め、膨大な数のアプリケーションが揃っており、様々な用途に対応可能である。ただ、対応可能なことと、誰でも簡単にできることはちょっと違う。筆者の率直な感想をいえば、PDAって結構面倒くさいのね、ということになる。筆者がPDAを面倒くさく感じる原因は、どうやら情報とメモリの不足にありそうだ。

 まず情報の不足だが、マニュアル、エラーメッセージ、書籍など、PCに比べてあらゆる局面で不足を感じる。たとえば、無線LANカードを用いて街中のサービスエリア(いわゆるホットスポット、日本では某社の登録商標なのだが何と呼べばよいのだろう)でメールを読もうと思っても、この方法について解説された情報はほとんど見かけない。マニュアルも大半の書籍も、無線のネットワーク接続といえばPHSと判で押したようにワンパターンなのはなぜだろう。

 実は、筆者は最初うまくいかなくて、とても悩んだのである。物理的にはつながっているのだけれど(電波は十分な強度で届いているのだけれど)、Webブラウザも受信トレイ(メールソフト)も使えない。ところが、Pocket PCのエラーメッセージは「接続できません」の一点張りで、何が悪いのか教えてくれない。結局、接続できたのだが、何のことはない、リセットが必要だったのである。そうならそうと言ってくれればいいのに、結構、こういう事例に事欠かない。

●メモリ容量の不足は致命的

 もう一方のメモリ不足は、PocketGearの内蔵メモリが32MBであることも、おそらく大きく影響している。Pocket PCでは内蔵メモリ(SDRAM)をアプリケーションのインストール(ハードディスク代わりの記録用)と、実行の両方に用いる。32MB機では、記録用と実行用が16MBづつ、という感じになる。たとえば業務用として、ある特定のアプリケーションをインストールして使う分には、おそらく32MBでも困らないのかもしれない。だがPCと同じように、あれも、これもと色々なアプリケーションを入れ始めると、記録用の16MBなどアッという間だ。また、最近のデジカメの画像のようにデータサイズが大きいと、16MBの実行空間では手狭に感じられてしょうがない。

 メモリ不足を補うには、CFやSDといったメモリカードを活用することになる。アプリケーションを内蔵メモリにインストールするのではなく、CFやSDにインストールすることで、内蔵メモリを節約するのだ。その際、日本でPocket PCを使う場合、CF Type 2スロットはネットワーク接続用に必須だから、このアプリケーションはSDに書いておこうとか、これはスタンドアロン以外で使わないから安くて大容量のメディアがあるCFに書いておこうとか、ユーザーの悩みは尽きない。もちろん、メモリスロットが2つあることは良いことなのだが、2つあるがゆえに悩みもするのである。

 Pocket PC機を使っていると、こうしたチマチマとした作業がどうしても生じてしまうようだ。筆者は、この作業をしながら、大昔、まだパーソナルコンピュータがハードディスクを内蔵しておらず、2台のフロッピーディスクだけで使われていた頃を思い出してしまった。あの頃は、同時に利用可能な2枚のフロッピーディスクに、どうすれば理想の環境を作れるか、一生懸命考えたものだった。何かシステムを変更したらリセットすることと合わせ、Pocket PCって昔のパソコンみたい、というのが1カ月使ってみての感想だったりもする。

 大企業での一括導入のように、IT部門がセットアップした端末を使うだけなら、こうした悩みは不要だ。しかし、個人で使うとなると、結構マメに手を入れないと自分の手に馴染む1台にはならない気がする。それを可能にするには、使い手に、世界に1台しかない自分のPDAを作るのだ、という強い意志や、マシンのメインテナンスにかける大きな情熱みたいなものが求められるように思う。どうも筆者はそこまで勤勉でないというか、マメさが足りないというか、ダメなユーザーかもしれない。

●大容量メモリが搭載されたPDA「GNEIO e550GX」

【写真1】USBクレードルに設置したGENIO e550GX

 そんなPDA失格かもしれない筆者の手元に、短期間ではあるが東芝の最新のPocket PC 2002機であるGNEIO e550GXが届けられた。GENIO e550GXはPDAとしては異例の大容量128MBメモリ搭載機であり、ひょっとするとチマチマしたメモリ管理から開放されるのでは、という期待感がある。また、搭載する低温ポリシリコンTFT液晶なら、ひょっとしてデジカメ写真を見るのにも使えるかも? という期待もある。

 実物(写真1)を手にしてまず感じたのは、小さくて軽い、ということ。並べて比べると、PocketGearとそれほど変わらないのだが、GENIOを持った時に小さく感じる。カタログ上もGENIOがわずかに小さいのだが、それ以上に小型な印象だ。にもかかわらず、GENIOが搭載する低温ポリシリコンTFT液晶は4インチと、このクラスとしては最も大きい。輝度、コントラスト共に良好で、これなら写真の表示も可能だと思える。

 そこで実際に試してみたが、ディスプレイが4インチと小さい上、解像度が240×320ドットしかないため、やはり最近の400万画素とか500万画素の写真の表示には向かない。液晶の表示品質以上に、縮小率が大きくなってしまうのが辛い。しかし、VGA~XGAくらいの写真なら、何とかなりそうだ。写真2は、PocketGearとGENIOで同じ写真(VGA解像度)を表示させたところだが、GENIOの方が明らかにメリハリの利いた表示となっている。GENIO e550GXのハードウェアは、メモリ容量を除けば、基本的に前世代のGENIO e550Gと同じ。メモリ容量を気にしない(低温ポリシリコン液晶が欲しい)というのであれば、e550GXの発売後に価格の下がったe550Gを狙うのも良いかもしれない。

【写真2】RR30で撮影した写真(VGA解像度)をPocketGear(左)とGENIOで表示したところ。GENIOの表示の方がコントラスト、シャープネスともに上回る 【画面1】GENIO e550GXのメモリ使用状況。128MBあるってことは素晴らしい。実行空間だけで54.40MBの空き領域があるが、PocketGearの全メモリ容量を上回っている。(画面のキャプチャには小笠原博之氏作成のImageServer v1.00amを使用した)

 さて、128MBメモリの威力だが、こちらもなかなかのものだ。画面1は、GENIO e550GXのメモリ使用状況を表示したものだが、余裕の空き領域だ。上でデジカメ写真の表示に用いたビュワーソフト(新潟キヤノテックのEasyViewer for PocketPC)で画像を表示する場合も、ちょっと画像が大きくなると、メモリ不足のエラーメッセージが表示されるが、128MBもメモリがあると結構大きな画像も表示できてしまう。何より、これだけメモリがあると、それほどメモリ管理を意識せず、だらしなく? 使えてしまうのがうれしい。予算が許せばe550GXを選びたい、とは誰しもが思うところだろう。

□関連記事
【10月31日】東芝、128MB RAM搭載の「GENIO e」新モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1031/toshiba.htm

バックナンバー

(2002年11月14日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.