プロに聞く ThinkPadを綺麗にするコツ

〜 IBMリユースセンター直伝 ThinkPadクリーニング術 〜

 持ち歩くノートPCは汚れがち。傷や手垢で悲惨な状態になっているThinkPadを持ち歩いている人も少なくないだろう。傷の補修は素人では難しいかもしれないが、ThinkPadの美しさは何とか維持したいものだ。そこで、ThinkPadを綺麗に磨くコツを、日本アイ・ビー・エム(IBM)藤沢工場にある「リユースセンター」のプロたちに伝授してもらうことにした。(取材日:2002年10月21日) [Text by 米田 聡]
 
 
ごく普通のOAクリーナーを活用

 リユースセンターに関しては、すでに本誌Anniversary Special 09「ThinkPadの第2の人生」で取り上げられているので参照して欲しいが、IBMが回収した使用済みのThinkPadを、品質保証付きの中古製品に復活させて出荷するところだ。前ユーザーの激しい利用で汚れたThinkPadを、誰が見ても「製品」に違いないと納得させられるレベルまで磨きあげる技量を持った、いわばThinkPadをレストアするプロ集団だ。そんなプロ達に秘伝を伝授してもらえば筆者のThinkPadも新品同様によみがえるはず。

日本アイ・ビー・エム 藤沢事業所 リユースセンターで動作チェック中のThinkPadたち

 ……と思ったが、そこはプロ。普通では手に入らない道具や薬品を使っているかもしれない。いくら技を伝授してもらったところで道具が揃わなければ意味が無いかもしれない。などという不安を抱えつつ藤沢のPCリユースセンターを訪れたが、不安は杞憂に終わった。

 とにかく、まずはプロが使う、ThinkPadを磨くための道具から紹介しておくことにしよう。

  • きれいなウェス(タオルなど)数枚
     ThinkPadを磨くための布。リユースセンターではタオルが使われていたが、吸水性がある適当なものなら何でも構わない。ただし、汚れのない綺麗なものが必要だ。また、汚れのふき取り、からぶきなどに使うし、本体を傷つけないために机の上にも敷いておくので、何枚か用意しておく。
     
  • OAクリーナー&シール剥離剤
     使う薬品類は、ごく普通のOAクリーナーと文房具店などで売っているシール剥離剤。残念ながらPCリユースセンターで使われているクリーナー類の銘柄までは明らかにできないのだが、決して特殊なものではない。PCショップでも普通に売られているもので、ヤシの成分が入っているというクリーナーが使われていた。プロと同じクリーナーを使いたい読者は「ヤシ」をキーワードに探してみるといいだろう。
     OAクリーナーでも取れない頑固な汚れや、しつこいシール跡にはシール剥離剤を使う。こちらも普通に売っているものだが、ThinkPadの塗装を痛めない剥離剤が必要だろう。購入する際には剥離剤の説明書をチェックして、塗装をいためなさそうな剥離剤を選んで欲しい。
     
  • 割り箸&使い古しの歯ブラシ
     細かい部分を綺麗にするために割り箸と歯ブラシを使う。先端を平らに削っておくのがポイント。歯ブラシは使い古しのものでよい。割り箸と歯ブラシで隅々まで磨こうというわけだ。ちなみに使い古した歯ブラシは、熱湯につけると毛先がまっすぐに揃うそうだ。
     
  • 明るい照明
     拭き取るべき汚れを際立たせるために、照明が必要だ。薄暗いと見えない汚れも、近くにある照明を斜めからあてれば良く見える。作業の前に電気スタンドを用意しておくといいだろう。
掃除道具一式。左上からOAクリーナーとシール剥離剤、布数枚、割り箸、歯ブラシ。その右は食器洗い用のセルロースたわしとペンキ塗り用のハケ。たわしは汚れがひどいところにまれに使うことがある。ハケは仕上げにホコリをはらうのに使う。その右は紙製のOAクリーニングクロスだが、なくてもいい。肌の弱い人はゴム手袋を付けて作業をしよう 作業台で説明を受ける筆者。作業台には蛍光灯の電気スタンドが1つ付いている。ThinkPadを傷つけないために、台の上にタオルを敷いておく

OAクリーナーはよく拭き取るべし

 では、ThinkPadの清掃に入ろう。まず拭き掃除を開始。OAクリーナーを染ませたタオルで表面の汚れを丁寧に拭き取っていく。

 しつこい汚れは、OAクリーナーを多めに使ってみたり、シール剥離剤を使うなどして拭き取る。ただし、あまり1箇所だけに力を込めて磨いていると、その部分だけテカるなど色が変わり、変に目立つようになるので注意が必要、とのプロの指導を受けた。

 ちなみに、筆者のThinkPad s30は比較的、外側は綺麗。だが、本体上面にしつこい汚れがついていた。実はこれ、夏の夜に自宅でThinkPad s30を使っていたところ小さな羽虫が飛んできたので容赦なく叩き潰した跡なのだ。傷ではないから容易にOAクリーナーで拭き取れるかと思ったが、意外や意外。いくら頑張って磨いても羽虫の跡はなかなか取れない。シール剥離剤を試し、かなり目立たなくなったものの、斜めから光を透かしてみるとバッチリと虫の跡が残っている。どうやら、羽虫の体液に含まれていた脂分か何かがThinkPadの塗装と反応して一種の傷のようになってしまったらしい。羽虫の祟り、恐るべしである。

まずOAクリーナーを染ませた布で、外部を拭いていく 汚れのひどいところには直接OAクリーナーをかけたり、シール剥離剤を使う パームレストや液晶パネルの額縁も拭く

 さて、外部をOAクリーナーで大まかにきれいにしたら細部に移る。プロとアマチュアの差は「細部の仕上げ」にあるのだそうだ。スクエアに見えるThinkPadだが、裏面や上面のロゴマークの隅、本体の周囲にはウェスが届かない角がたくさんある。ウェスで全体をぬぐっても細部はきれいにならず、ホコリ(のような白っぽい何か)が隅々に残り、外観の美しさを損ねてしまう。

 そこで事前に用意しておいた割り箸と布を使って隅の汚れをぬぐい去っていく。このときに先を平らに削った割り箸の威力が発揮されるのだ。割り箸に布を巻き付けると、普通では拭き取れない隅を綺麗にできる。

 細かい溝がたくさんある部分などでは、溝一本一本を割り箸と布で拭いていくのは大変だ。そこで、歯ブラシでまとめて拭こう。

布を割り箸に巻きつけ、細くなったところで溝や凹部を拭く リブのように細い溝がたくさんあるところは歯ブラシが便利 拭き取りが終わったら、タオルを水で洗い、固く絞り、仕上げ拭きをする。タオルは頻繁に洗う
コネクタの周囲やクリックボタンの溝、廃熱孔なども、割り箸に巻きつけた布や歯ブラシで拭くときれいになる

 最後に、水を含ませてよく絞った綺麗なタオルで付着したOAクリーナーやシール剥離剤を拭い去る。これも重要なポイントだ。汚れを取り去っても、OAクリーナーが残っていると、その部分にホコリが付着したり、手垢や指紋がついて、すぐに汚くなってしまうからだ。だから最後は綺麗な水でThinkPadを丁寧に拭いて仕上げる。この作業はとても重要だ。

 実際、照明を当てると正面からは見えない液晶面の汚れが確認できる。そこまでやって、初めて製品として出荷できるということなのだろう。

 最後に液晶面やキーボード面も水を含ませた綺麗なタオルで、付着したOAクリーナーを拭き取る。この作業は表面の清掃と同じく、清掃後に汚れるのを防ぐ意味で重要だ。

大胆かつ繊細に……液晶面とキーボード面の清掃

 外側が終わったら、次はキーボードおよび液晶パネル面である。

 キーボード面の清掃は基本的に外面と変わらない。まず表面をOAクリーナーを含ませた布で拭き、次にキーの隙間を割り箸と布を使ってきれいにする、という手順だ。よほど汚れが激しい、あるいはキーの隙間にコーヒーやタバコの灰をこぼしているようならキートップを外すなどの対処が必要だが、普通の汚れなら先を平らにした割り箸と布できれいに拭き取ることができる。

 一方、やはりプロとアマチュアの差が出やすいのが液晶パネル面の清掃だ。通り一遍に拭いても、いちおうはきれいにできるが、液晶の隅(額縁と液晶パネルの境目)に白っぽいホコリが残ってしまう。その部分は、やはり割り箸と布を使って丁寧にホコリをぬぐい去るのがポイントだ。

割り箸に巻きつけた布で、キーとキーの間を拭く 液晶パネルをOAクリーナーで拭く パネルと額縁の境目を、割り箸に巻き付けたタオルで拭く

 ちなみに、液晶面の汚れは商品の価値を落とす大きな原因になるようだ。PCリユースセンターには液晶パネル面の仕上げを確認する監督がいて、仕上がりを厳しくチェックしている。筆者は自分のs30の液晶を必死にぬぐったのだが、残念ながら監督からは失格の烙印を押されてしまった。作業中は気付かなかったのだが、照明を斜めにあててみると一部に汚れが残っていたのである。

仕上がりチェック前にハケやOAダスターでホコリなどをはらっておく。ホコリを汚れと見間違えて、余計な作業をしてしまうこともあるからだ 監督が仕上がりをチェック。ThinkPadを動かして角度を変えたり、照明に近づけたりすると、見えなかった汚れが見えるようになる

 ところで、実際に自分のThinkPadを掃除していて思ったのだが、PCリユースセンターのプロたちは傍から見ていると、かなり大胆に作業を進めているように見える。OAクリーナーをたっぷり使って、ゴシゴシと磨くのだ。

 一方、筆者はというと、どうしても「恐る恐る」という感じになってしまう。ThinkPadが壊れたら……と思うと手に力が入らず、大胆になれない。

 しかし、実のところThinkPadは、そう簡単には壊れない。もちろん、本体内にOAクリーナーや水が大量に浸入してしまったり、あるいは力を入れすぎれば壊れるだろうが、普通の拭き掃除程度で壊れるほどヤワではないのである。大胆かつ繊細に作業を進めるのがThinkPadを美しくするポイントになりそうだ。

新品同様によみがえったThinkPad

 ということで、ひととおりの清掃は終了。掃除し終わったThinkPadは、見違えるほど綺麗になった。やはり、たまにはThinkPadも清掃して面倒を見てやるべきなのだろう。

これは担当編集部員が持ち込んだX24。左が掃除前、右が掃除後。手の脂などで汚かった液晶パネル表面が、新品同様に 最後の仕上げはトラックポイントのキャップの交換。新品のキャップは見ていても使っていても気持ちがいい

 紹介してきたように、PCリユースセンターでは特殊な道具や薬剤を一切使わずにThinkPadを掃除していた。道具は普通でOK、要は清掃の腕ということ。何度か清掃していると慣れてきて、思った以上にThinkPadを美しく輝かせることができるはず。読者も本稿を参考に、プロの清掃を目指してThinkPadを磨いてみてはいかがだろう。

(2002年11月12日)

[Text by 米田 聡]


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PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp

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