プロカメラマン山田久美夫の「WPC EXPO 2002」デジタルカメラレポート

低価格高機能な画像検索ソフトなどが展示



 アジア最大のPC系イベントである「WPC EXPO 2002」。デジタルカメラ関係では、すでに先月末にドイツで開催されたフォトキナで、この秋冬向けの新製品が数多く発表されたわけだが、今回のWPCはそれらの機種が国内で初めて、一般向けに公開される舞台となった。ここでは大手各社の目立った新製品などについてレポートしよう。


●キヤノン

 キヤノンは、フォトキナで発表となったデジタルカメラやプリンタなど多数の新製品を出品。

 パーソナル向けの「PowerShot G3」や「PowerShot S45」、「IXY DIGITAL320」などは自由に手にし、その感触を確かめることができた。ただ、IXY 320やS45は、従来モデルとほとんど外観が変わらないこともあって、新製品であることに気が付かない人もいたようだ。

 4倍ズームとなったパーソナル機のフラッグシップモデル「G3」は、システムとしての拡張性を重視した展示。店頭で現物を見ることが難しいテレコンバーターなどもカウンターに用意されていた。

 35mmフルサイズの1,110万画素デジタル一眼レフ「EOS-1Ds」は、残念ながらケース越しでの出展のみで、実機に触れることができず、寂しい限りだった。その代わりといってはなんだが、本機が搭載している35mmフルサイズのCMOSが展示されており、ウェハに載った状態のものを見ることもできた。さすがに36×24mmのCMOSセンサーは圧巻。ウェハ一枚から数個しか取れないのを見ると、撮像素子がどれほど高価なものなのか、察しが付くだろう。

 本機はオープンプライスのため、店頭価格が気になるところ。ブースでその点を訊ねてみたところ、目安としては「100万円を切るプライスになる」ということだった。

 さらに今回は秋冬向けのインクジェットプリンタも一堂に展示。こちらはすでに発売されているが、外装にアルミ素材を採用した最高級機となる950iでのプリントデモも行われており、その速さを体感することもできた。



●京セラ

 京セラは今回、新製品となる「Finecam S5」、「S3L」を前面にアピール。

 フォトキナで参考出品された「CONTAX TVS DIGITAL」はアクリル越しでの出展。フォトキナでは自由に触り、操作することができただけに、これは実に残念。アクリル越しではあったが、チタン外装はなかなか高級感があり、質感も高そうな印象だ。発売時期についてはまだ未定で、早くても年内ギリギリという感じになりそうだ。

 世界初の35mmフルサイズCCD搭載デジタル一眼レフである「CONTAX N DIGITAL」も出展されており、こちらは新展開の告知がなされていた。

 具体的には、まず、近々カメラ側ファームウエアの変更があり、画質面などの改良が施されるという。さらに、評判がいまひとつだったRAWデータ展開ソフトも、同時期にバージョンアップされるという。

 初代バージョンは、シンプル過ぎると思われるほど単機能なソフトだったが、今回のバージョンアップでは、マニュアルトーンカーブの適用など、かなり大幅な機能の充実が図られている。いずれも、無償バージョンアップとなり、10月中には同社Webで公開されるという。



●ニコン

 残念ながらスイバル(レンズ回転式)デザインの300万画素機「COOLPIX3500」だけは、アクリル越しでの展示になっており、実機に触れることはできない。基本的には「COOLPIX2500」ベースの300万画素機なので、機能や操作感はほとんど変わらない。ボディカラーも地味なものになっているため、展示に気が付く人は意外に少なかったようだ。

 先だってファームウェアのアップデートが告知され、大幅な機能アップが図られる「D100」や「D1X」も出品されていたが、すでに発売からそれなりの時間が経っているためか、人気はそれなりといったところ。来場者から「35mmフルサイズはいつですか?」という質問を浴びる一幕もあった。

 同社ブースでは、関連会社であるニコンシステムズの展示スペースもあり、こちらではWindows CE機をベースとした画像転送システムを参考出品していた。このシステムは、既発売の同社ソフトと連携させることで、画像データをアップロードし、自動的にデータベースに登録したり、Webで公開できるシステム。

 操作は実に簡単で、デジタルカメラで撮影した画像をCFカード経由でPDAで一覧表示。その中から転送したいカットを選んで、あらかじめ登録してある転送先に自動転送するもの。転送だけなら、現時点でも複数のソフトを組み合わせれば実現できるかもしれないが、簡単な操作だけで転送できるだけでなく、自動的にデータベース化できるのがミソ。もちろん、個人用途というよりは、報道や損保など業務用途をメインターゲットにしたものだが、アイデア次第でいろいろな使い方ができそうだ。

 ただ、CFカードとPHSや無線LANカードを同時に使用することもあって、ダブルスロット式のPDAが不可欠となる。基本的に企業向けのシステムであり、参考出品ということで、価格や発売時期、販売形態は未定という。



●リコー

 リコーブースは「RR30」などが出展されていたが、どちらかというと、業務用途色の強い展示という印象を受けた。

 興味深かったのが、同社のオリジナルソフトであるデジクリップシリーズのデモ。中でも、今年7月からダウンロード販売を開始したという「デジクリップ3」の検索機能は注目すべきものがあった。

 これまで画像検索というと、文字によるキーワード検索がメインであり、画像認識によるものはきわめて高価な業務用データベースのみに限られていた。同ソフトに搭載されているものは、その画像認識による高度な検索機能を、わずか2,000円という超低価格で実現したものだ。

 検索も実に簡単。たとえば、1枚のカットを選んで、それに類似した絵柄のカットを選ばせたり、簡単なイメージを手書きでスケッチすることで、その形状に近い絵柄のカットを自動的に検索することができる。さらに、色による検索も可能。同システムはすでにYahoo!オークション用として実用化されていおり、実績あるもの。

 デモ用の1万枚の登録画像を使って、実際に検索してみたが、かなりいい確率で検索でき、検索速度も高速なものだった。画像データの登録は、登録したいフォルダを選択するだけの簡単なもの。登録時間も、1枚2~3秒程度と十分な速度なので、大量の画像データをHDDに貯めている人でも安心だ。

 価格が手頃なこともあって、撮影画像の検索に苦労している人は、一度使ってみる価値が十分にありそう。個人的には、このソフトに出会ったことが、今回のWPCでの一番の収穫だった。


□デジクリップのホームページ
http://www.ricoh.co.jp/dc/digiclip/


●オリンパス

 巨大なイベントステージを中心とした展開を図ったオリンパス。今回は今秋発売の「C-5050Z」、「X2」、「X1」、「C-730UZ」などをメインにアピールしていた。

 Cシリーズの最高級機となる500万画素3倍ズーム機「C-5050Z」。写真で見ると、C-4040Zとさほど変わらないように見えるが、実機を手にしてみると、従来機よりもワンランク上の高級感があり、質感も上々。機能や操作面でも、同社の「E-20」に近い、なかなか魅力的な仕上がりになっていた。

 新シリーズであるXシリーズの第一弾である超小型の500万画素3倍ズーム機「X2」も出展。こちらは、C-5050Zと同じ1/1.8型500万画素CCDを搭載しているにも関わらず、ふた回りほどコンパクト。しかも、質感は往年の高級コンパクトカメラ的な雰囲気がある。加えて機能面ではC-5050Zとほぼ同等のものを備えるなど、かなり力の入ったモデルに仕上がっている。

 とはいえ、実機に触れてみると、他社の高速起動モデルに比べ、動きがのんびりとしており、動作の切れ味が不足気味なのが気になるところ。また、写真で見るよりも厚手な点も少々気になった。小さな高級機を目指しているとはいえ、このクラスなら500万画素CCDよりも、より手頃な価格で気軽に使える300万画素クラスをラインナップして欲しいところだ。


 フォトキナで発表され話題となった、4/3型撮像素子搭載レンズ交換式一眼レフシステム「フォーサーズ」は、モックアップすらなく、一枚のパネルが展示されているだけの寂しいもの。発売時期やスペックなどについて説明員に聞いてみても、どうも歯切れの悪い返答しか得られず、少々肩すかしを食った印象だ。

 このほか、VGAのCMOSセンサーを搭載したボイスレコーダーや、カメラからPCを介さずにUSB経由でデータ保存ができるMOドライブなども出展されていた。



●松下電器

 松下電器は、WPCに先だって発表した「LUMIX DMC-FZ1」「DMC-F1」、そして開催前日に発表したばかりの「Will D-span」を大々的にアピール。いずれも、会場での人気は上々だった。

 やはり注目は、クラス初の光学手ブレ補正機能を採用した12倍ズーム搭載200万画素機「DMC-FZ1」。ブースでは、多くの人がズーミングして遠方を覗いたり、意識的にカメラを揺らしてブレ補正効果をチェックしていた。また、写真で見る以上に実機がコンパクトなこともあって「これで12倍なんだあ」という人や「なんで200万画素なの?」という質問を説明員に投げかける姿もみられた。


 一方、F7の後継機となる「DMC-F1」は、派手なカラーリングで目を引いていたが、デザインがあまり変わっていないこともあって、3メガ3倍になったものの、ブースでの人気は「FZ-1」に及ばない感じだった。

 2世代目となり「Will」ブランドで登場したMPEG-4カメラ「D-snap」は、なかなかの人気。初代モデルの知名度がいまひとだったこともあって、このWPCで初めてD-snapを知った人も多いようだ。同機は初代モデルの欠点だった操作のわかりにくさと、フレームレートを改善。さらに、インパクトのあるカラーにすることで、初代のポケットに入るMPEG-4機としてのコンセプトがより明確になった印象だ。ただ、携帯電話が簡易動画やVGA静止画の撮影をサポートしつつある現在、もう少し明確な差別化をする必要もありそうだ。

 このほかにも、カメラと同時発表された、SDメモリーカード対応の携帯ストレージやモバイルプリンタも出品されていた。



●ソニー

 ソニーは、今秋発売のサイバーショット「DSC-F717」、「DSC-FX77」をメインに展開。ブースはかなりの賑わいを見せていた。

 中でも、デジタルカメラ初のBluetooth搭載機「FX77」を強くアピールしていたのが印象的だった。もちろん、現時点では通信先が限られているため、用途も限定されてしまうわけだが、今回ブースではエプソンの「PM-860PT」にBluetooth対応アダプタを装着してワイヤレスプリントをデモしていた。

 確かに技術的には興味深いものがあるが、正直なところ、単純にプリントするだけなら、メモリカード経由でもいいのでは……と思ってしまう部分があった。

 なお、フォトキナ発表の200万画素サイバーショットUこと「DSC-U20」は、今回も出品されておらず、国内での展開はまだ未定。また、P型誕生2周年記念の「P7ゴールド」は出品されておらず、少々残念だった。



●NHJ

 エヌエイチ・ジャパン・ホールディングス(NHJ)は、モックアップながらも来春発売予定の新ラインナップを出展、来場者の注目を浴びていた。

 中でも注目されるのは、EXILIM風薄型ボディに210万画素CMOSセンサーを搭載した液晶付きモデル「D'sign by Che-ez!」。サイズの点ではEXILIMより若干大きめだが、なかなかスタイリッシュ。液晶モニタも1.6型のD-TFDタイプを採用し、ストロボを内蔵。SDメモリーカードに対応する。電源はリチウムイオンで、USB経由でデータ転送と充電ができる。現時点ではマクロ機能を搭載するかどうか、まだ決定していないという。店頭予想価格は2万円くらい。発売時期は来年2月を予定しているという。

 210万画素CMOSセンサーの実力は未知数だが、価格次第ではEXILIMやコニカのRevio C2の対抗モデルになる可能性も十分にありそうだ。


 動画モデル「Che-ez! Movi」の後継機として、「Che-ez! Movi 3」も参考出品。こちらは折り畳み可能な1.5型TFT液晶を搭載したMPEG-4モデル。メモリカードはSDメモリーカードが利用できる。こちらは来年4月の発売を予定しており、店頭価格は2万円台になるという。

 このほか、超小型の32万画素CMOSセンサー搭載機「Che-ez! Snap」(11月発売予定)も出品されていた。

 いずれもユニークな存在ではあるが、従来の同シリーズに比べ、やや遊び感覚が薄れ、全体的に価格も高めになり、本格派指向になっている点が少々残念。とくに来年は、カメラ付き携帯電話がより台頭してくることを考えると、このような展開になってくるのは仕方ない部分もあるが、カメラメーカーが苦手な、いい意味での面白さを前面に出した展開を期待したいところだ。



●日本ポラロイド

 日本ポラロイドブースでは、米国で人気上昇中の液晶モニタ搭載の携帯ストレージ「Nixvue VISTA」を出品していた。

 このストレージは、2.5インチHDDをベースにしたもので、本機単体でCFカードからのデータ保存ができるもの。さらに、本機にはカラー液晶モニタが搭載されており、通常のJPEGデータが閲覧できる上、主要各社のRAWデータにまで対応している点が大きな特徴。もちろん、液晶モニタでの拡大表示やビデオ出力、撮影データの表示も可能だ。

 現時点で対応しているRAWデータは、EOS D60/D30、D1/D1X/D1Hなどだが、今後EOS-1DsやD100などにも順次対応していくという。

 今回発売されるものは、20GB HDD内蔵タイプ。高機能なこともあって、価格は79,800円(会場特価は69,800円だった)と少々高めだが、液晶モニタでピントの確認までできるため、わざわざ大きなノートPCを持ち歩きたくないという人には、なかなか魅力的な存在といえる。


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WPC EXPO 2002レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/wpe02.htm

(2002年10月23日)

[Reported by 山田 久美夫]


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