今回のフォトキナでは、レンズ一体型のコンシューマー向けデジタルカメラが多数発表されたが、前回レポートしたものを除けば、正直なところ、新展開といえるほどの動きは少なく、いわゆる正常進化的なイメージでの展開となった。
一方で、驚くほど多くの、注目すべき展開を見せたのが、デジタル一眼レフの世界だ。
まず、フォトキナ前日には、1,000万画素を越える、35mmフルサイズ(35mmフィルムと同じサイズ)のCMOSセンサーを搭載したデジタル一眼レフが、コダックとキヤノンから相次いで発表された。この世界は今年の春に600万画素時代を迎えたばかりだというのに、わずか半年あまりで、一気に1,000万画素超の世界に突入したわけだ。
●コダック、実販4,000ドル台の1,400万画素一眼レフを発表
コダックは、「DCS Pro 14n」というニコンボディをベースとしたモデルを発表。本機は、有効画素数 1,371万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載したもので、35mm一眼レフスタイルのモデルでは、現時点で最高の画素数とセンサーサイズを実現した、超弩級モデルだ。
さらに驚くのは、その価格設定。これまでコダックのDCS Proシリーズは、プロ市場をターゲットにしていたため、いずれもかなり高価で個人レベルでは手が届かないほどだった。
だが、このモデルは、米国でのリストプライスは約5,000ドル。単純に日本円に換算しても、60万円弱で、この性能を手にすることができるわけだ。
このCMOSセンサーはコダックが開発したものだが、実際の製造はベルギーのヒルファクトリー社が担当するという。
また、本機は単に高画素なだけでなく、かなり多くの特徴を備えている。まず、記録媒体はCF Type IIとSDカードのダブルスロットであり、両方のメディアへの同時記録はもちろん、それぞれのメディア用に画像サイズと画像フォーマットを別々に設定することも可能だ。
連写は秒間1.7コマ。通常は8枚まで連続撮影ができる。だが、バッファメモリを増設することができ、本来の256MBから512MBにすることで、最高で18枚も、1,400万画素の画像を連続撮影できるわけだ。
さらに、本機では、コダックDCS Proシリーズの従来モデルと同じRAWデータがベースだが、本機からは「ERI-JPEG」と呼ばれる独自のJPEGファイルでの撮影も可能になっている。
これは、通常のExif2.2準拠の24bitJPEGファイルに、36bitRAWデータとの差分データを付加したもの。通常のJPEGファイルとして利用することもできるうえ、専用プラグインを経由することで、RAWデータに近い自由度のある画像補正ができるという、スグレモノ。しかも、RAWデータに比べ、ファイルサイズは1/2~1/4程度に抑えられるため、高画素モデルにとってきわめて便利なファイルフォーマットといえる。
一眼レフカメラとして基本部分はニコンから提供を受ける。ハード的には「F80」だが、実際にはカスタムの部分がかなり多いようだ。ボディの上面は「F80」そのものという感じだが、それ以外は同機専用のマグネシウムボディが奢られており、質感は上々だ。
手にした印象も、とても高品位で信頼感のあるもの。外寸では「富士フイルム S2Pro」とほぼ同等なのだが、グリップ部が大きく、日本人の手には少々あまる感じもあるが、十分、許容範囲という感じだ。操作感はとても良好で、デジタル一眼レフに不慣れな人でも、すぐに慣れて撮影できるレベルだ。
ブースでの人気は高く、説明員は終日、来場者からの質問責めにあっていた。また、実機も数台あり、触ることもできた。日本国内での発売も考慮されており、すでに日本語メニューも実装されていた。
もちろん、実写デモとプリント展示が行われており、その画質の高さには目を見張るものがある。本機の場合、従来のDCS Proシリーズと同じく、撮像素子にローパスフィルターがないため、画像の切れ味がきわめて鋭く、他のデジタル一眼レフとは一線を画すレベルだ。しかも、サンプルを見る限り、条件の悪いシーンでも、偽色やモアレも発生していない点には感心してしまう。絵づくりもコダック系らしい、見栄えのするものに仕上がっている。
米国での発売時期は12月。日本国内は来年2月になるという。もちろん、国内での価格は未定だが、ぜひ「ニコン D1X」と同等か、それを下回る戦略的な価格で展開して欲しいところだ。
□ニュースリリース
http://www.kodak.co.jp/JP/ja/corp/news/02057kpd.shtml
●キヤノン、35mmフルサイズ1,110万画素CMOSセンサー搭載の「EOS-1Ds」
キヤノンは待望の超高画素機である「EOS-1Ds」をフォトキナ前日に発表した。
今回のフォトキナ最大の目玉は、この「EOS-1Ds」になるはずだったのだが、35mmフルサイズの14メガピクセル機「DCS Pro 14n」が、ほぼ半額で発表されたこともあって、ややインパクトが薄れた印象だ。
本機は、同シリーズのフラッグシップ機である「EOS-1D」をベースに、自社開発の35mmフルサイズの1,110万画素CMOSセンサーを搭載した、待望の超高画素モデルだ。
「EOS-1D」との外観上の違いは、ボディ前面のエンブレムに「s」が加わった程度で、パッと見た感じでは、まったくといっていいほど、見分けが付かない。
機能面では連写性能以外の性能は、「EOS-1D」のものを踏襲しており、フラッグシップモデルらしい、質感の高さや切れ味のいい操作感を実現している。
使ってみて、まず感心するのは、35mmフルサイズCMOSだけに、35mm一眼レフ用レンズがそのままの画角で使える点は、やはり便利。これなら35mm一眼レフと、全く同じ感覚で撮影ができる。
画質は上々。さすがに解像度は高く、600万画素を軽く上回る実力を備えており、35mmフィルムと完全に肩を並べるレベルに到達した感じだ。また、明暗の再現域も広く、なかなか撮影しやすいモデルに仕上がっていた。もっとも、解像度が高いため、微細なブレが想像以上に画質に大きく影響するので、この点には要注意だ。
また、本機はあらゆるシーンでの撮影に対応するため、CMOSセンサー前面にローパスフィルターが装備されている。そのため、ローパスなしの「コダック 14n」に比べると、輪郭の明瞭さという点では一歩譲る感じもあった。このあたりはメーカーとしての考え方の違いに起因する部分といえそうだ。
問題は価格。さすがに「現時点でできるだけのことを盛り込んだ」というだけであって、その機能と完成度の高さには感心すべき点がきわめて多い。ただ、その分、価格もきわめて高価であり、オープンプライスながらも、日本国内での実販価格は95万円前後になるとアナウンスされている。もっとも、14nのような強力なライバルが登場したため、実販価格の下方修正が行われる可能性もゼロではないだろう。
□関連記事
【9月24日】キヤノン、35mm1,110万画素CMOSセンサー搭載一眼レフ「EOS-1Ds」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0924/canon1.htm
(2002年9月30日)
[Reported by 山田久美夫]