Apple expo 2002 基調講演速報
~来年以降の製品からMac OS Xが唯一の起動OSに

日時:2002年9月10日~14日(現地時間)

会場:Palais des Congres(基調講演)
   Paris Expo ,Porte de Versailles(展示会場)



 パリで開催されるApple expoは、9月10日(現地時間)、2年ぶりに幕を開けた。昨年は、米国で発生した同時多発テロの影響を受け開催直前に中止を発表。イベントは開催されないまま、パリ市内には予定されていたApple Computerの広告があふれかえるという光景が生み出された。

 今年は待望の開催にこぎつけたが、基調講演会場のPalais des Congres(パレ・デ・コングレ)には金属探知のゲートなども登場するなど、いまだその影響は影を落としている。とはいえ、2年ぶりのスティーブ・ジョブズCEOの登場を、Palais des Congresに集まった聴衆は熱狂的な拍手と声援で歓迎した。その熱気は米国開催のMacworld Conference and Expoをも上回るものであった。

●2003年の新製品からは、Mac OS Xが唯一の起動OSに

 講演のなかで触れられていた時間はわずかであったが、特に既存のMacユーザーにとって重要なキーワードとなるのが、起動OSのMac OS Xへの一本化である。現状販売されているMacは初期起動OSこそMac OS Xへ移行していたが、すべての製品がデュアルブートに対応し、Mac OS 9を起動OSとして選択することも可能になっていた。

 ジョブズCEOは、これから4カ月にわたるMac OS Xの次の大きなステップという表現を使い、2003年以降に発売される新製品については、Mac OS 9を使った起動をサポートしないことを公式に認めた。Mac OS XのClassic環境のなかでの旧アプリケーションの利用は、引き続きサポートされる。

 ジョブズCEOは、現状Mac OS XそしてMac OS 9双方への対応を続けているGPUのドライバ開発を例にあげ、開発資源の集中の必要性を強調した。さらに、現時点でMac OS Xのインストールベースは300万ユニット。これが2003年の一月までには500万ユニットになるという見通しを示した。曰く、OSの転換としてはもっとも速いペースでの推移が続いているという。また、現状3,000本を数えるMac OS X対応のアプリケーションも、やはり一月までに5,000本に達するものとの認識を示した。

現在発売されているMac製品の構成。Mac OS 9、Mac OS Xとも起動OSに設定でき、Mac OS Xのなかで、Classic環境が利用できる 2003年に発売される新製品では、旧アプリケーションはMac OS XのClassic環境のみで動作させることになる 2003年の新製品からは、Mac OS Xが唯一の起動OSとなる
現在、Mac OS Xのインストールベースは300万ユニット。来年1月には500万ユニットに達するという見通し 現在、Mac OS X対応のアプリケーションは約3,000本。開発資源の集中で、来年1月には5,000本へと増加するという

●iCalは今日から、iSyncは今月末から無償ダウンロードを開始

9月10日付けで無償ダウンロードが開始された『iCal』。Mac OS X 10.2に対応

 Apple関連情報を丹念に追いかけているものにとっての今回の基調講演における数少ないトピックスは、「iCal」と「iSync」の提供開始日のアナウンスということになる。

 7月にNew Yorkで開催されたMacworld Conference&Expoで初公開されたスケジューラーソフト「iCal」は、すっかりお馴染みの『Today!』のスライドとともに同日付の無償ダウンロードが開始された。Mac OS X向けのアプリケーションだが、対応するのはバージョン10.2以降に限られる。

 「iCal」に関するデモは7月のMacworldとほぼ同一の内容で、ジョブズCEOのスケジュールをもとにした内容をみずからデモした。.macサービスとの連携によるインターネットへの公開や、友人のスケジュールを取り込む手順などをひととおりこなすと、初見となるここフランスの会場からは拍手と歓声が起きた。

 いっぽうのデータ同期ソフト「iSync」も、ソニーエリクソンの新型携帯「T68i」を使ってデモが披露された。ジョブズCEOは新世代携帯のキーワードとしてGPRSへの対応、カラー液晶、Bluetoothの搭載、そしてSyncMLへの対応などをあげている。ちなみにヨーロッパ地域でこの「T68i」は、月極契約の場合、250~300ユーロ程で販売されている。

 iSyncを使ったシンクロナイズの対象には、携帯電話、iPod、そしてPDA(Palm)があげられているが、この日は携帯とiPodのみがデモされた。ちなみに「iSync」は同日のダウンロードではなく、βリリースと前置きをつけたうえ、今月中の配布開始を明らかにしている。こちらもiCal同様、Mac OS X 10.2以降の対応だ。

Digital Hub戦略の概念図。ハイライトしているiPod、携帯電話、PDAが「iSync」を使ってMac OS Xと接続されるデジタルデバイス 「iCal」に表示されたジョブズCEOのスケジュール。ビジネスのスケジュールを始め、家庭の予定や子供の予定なども書き込まれている 「iSync」により、iPodに転送された「iCal」のスケジュール。基調講演当日のスケジュールが表示されている
Bluetoothを使って、ソニーエリクソンの携帯「T68i」とシンクロナイズ 「iSync」はβリリースという扱いで、今月中に配布が開始されるとアナウンスされた 大事なデータは「iSync」で携帯へ転送。データの入力や管理は母艦となるMac OS XでというのがDigital Hub的考え方。携帯ごとすべてを失わないように……

●講演の大半を割いたMac OS X 10.2“Jaguar”のデモンストレーション

 基調講演の時間の大半が割かれたのは、すでに8月24日から全世界で出荷が始まっている“Jaguar”ことMac OS X 10.2に関連するデモンストレーションである。

 機能アップした「Finder」、ジャンクメールの自動選別機能などを追加した「Mail」、さらに「アドレスブック」や「QuickTime6」、「Sherlock 3」、「Inkwell」、「ユニバーサルアクセス」などが次々に、そして精力的にデモされた。ちなみにここヨーロッパでは、Mac OS X 10.2は139ユーロで販売中。ジョブズCEOは、すべてのMacを新しくするOSとあらためてPRした。

 ちなみに、いつもはジョブズCEOの右腕として、ステージでのデモンストレーションを受け持つフィル・シラー上級副社長だが、明日サンフランシスコで開催されるSEYBOLD SEMINARSで講演を行なうため、ここパリには不在。今回は変わって、Mac OS のディレクターをつとめるKen Bereskin氏など数名がこれらのデモを担当している。

 こうした数あるデモのなかで、会場の大きな歓声を受けたのが「Rendezvous」に関するデモだ。実は今年のWWDCでもMacworldでも披露された内容だが、iTunes3を使った音楽ファイルのシェアをテーマにしたもの。ジョブズCEOが自宅のMacで音楽を聴きながら作業をしていると、息子役(笑)のKen Bereskin氏が帰宅する。手に持ったPowerBook G4のスリープを解除すると、彼の音楽ライブラリがRendezvousの機能によりジョブズCEOのMacにも表示され、ストリーミングにより再生が可能になるというものだ。PowerBook G4のふたを開け閉めして、ライブラリの表示が変わるたびにどよめきが起きていた。

 ちなみにデモで使われているiTunes3は特別仕様のもので、現在ダウンロードが可能なiTunes3ではRendezvousはまだサポートされていない。iTunesへのRendezvousの実装は、2003年の1月と予告されている。

 Rendezvousに関しては年末をメドにプリンタの対応が表明されているが、これまで対応を表明していたエプソン、HP、Lexmarkに加えて、今回キヤノンとXeroxが加わった。また、具体的な製品名こそ明らかにされなかったが、デジタル家電におけるRendezvousのサポートのため、Philipsとのパートナーシップを発表。Philipsの社長兼CEO、Gerald Kleisterlee氏がビデオで登場し、Rendezvousにかける期待とApple Computerとのパートナーシップにメッセージを送った。

 この日の基調講演ではハードウェアに関連する新しいアナウンスはなく、冒頭のわずかな時間にUpdateと称して、17インチ液晶のiMacや、Windows対応のiPod、そして新しいPowerMac G4がサマリーといった趣きで紹介されるにとどまった。講演の終盤、会場前方に陣取った熱心なユーザーからはお馴染みの「One More Thing…」を期待する小さなどよめきも起きたが、舞台袖に姿を消したジョブズCEOの再登壇はなかった。

自らもMacに向かってMac OS Xの「iChat」や「iCal」などのデモを披露するジョブズCEO 不在のフィル・シラー上級副社長に代わり、ステージデモの大半を担当したMac OS Xのディレクター、Ken Bereskin氏 Rendezvousに対応したiTunes3を使って、音楽ファイルをストリーミング演奏。この仕様を含んだiTunesは来年1月に提供される予定
Rendezvousへの対応を表明しているプリンタメーカー各社。従来の3社に加えて、キヤノンとXeroxが加わった デジタル家電のRendezvous対応を表明したPhilips。社長兼CEOのGerald Kleisterlee氏がビデオでメッセージ Mac OS X対応のアプリケーションとしてデモされたゲーム「STARWARS JEDI KNIGHT II:JEDAI OUTCAST」

□Apple expo 2002のページ(英語)
http://www.apple-expo.com/uk/home/index.html
□ニュースリリース(Mac OS Xのみ起動)
http://www.apple.co.jp/news/2002/sep/11macosx.html
□ニュースリリース(Rendezvous)
http://www.apple.co.jp/news/2002/sep/11rendezvous.html
□iCalのダウンロード
http://www.apple.co.jp/ical/

(2002年9月11日)

[Reported by 矢作 晃]


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