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PCを超えポストXboxデバイスを目指すnForceの戦略


●PC以外の分野にも目を向けるNVIDIA

nForce 2によるホーム向けソリューションを手に取るHenry氏
 NVIDIAのnForceファミリが目指すのは、単なるPCのチップセットではない。PCとデジタル家電にまたがる新しいマルチメディア機器のプラットフォームだ。つまり、メディア処理中心のゲーム機やSTB(セットトップボックス)、ホームゲートウエイのような、非PCデバイスも視野に入れた戦略だ。アーキテクチャ的にはPCを継承するが、その戦略はPCを超える。

 NVIDIAでnForce戦略を統括するDrew Henry(ドリュー・ヘンリー)氏(NVIDIA Senior Director, Platform Business)は、nForce戦略を次のように説明する。

 「(nForceで)フォーカスするのはPCエリアだけではない。PC以外の分野にも目を向け始めている。Xboxはその種の製品の好例だ。我々はnForceのテクノロジが、こうした新分野の製品にも搭載されるようにして行きたいと考えている。といっても、NVIDIAの興味はeメールを処理するようなタイプの機器にはない。非PCでもメディアセントリックな製品にフォーカスする。日々、ビデオやオーディオ、ストリームビデオなど、多くのメディアが創造されている。ビジネスでもコンシューマでも、そうしたメディアを利用できるパワフルな製品へのニーズは強まっている。当社がプラットフォームプロセッサ群に力を入れるのは、そうした戦略が背景にあるからだ。我々の製品は、PCアーキテクチャに影響を与えるだけでなく、PCを超えて拡大する」。

 Xboxは実質的にnForce+GeForce 3.5だった。NVIDIAからすれば、XboxもnForce戦略のひとつの成果であり、nForceの延長線上にはゲーム機も並ぶことになる。マルチメディア機器のプラットフォームに必要な機能をすべてそろえることで、ゲーム機まで含むデジタル家電へとNVIDIAのテクノロジを広げる。それがnForce戦略の図式だ。


●MCPはNVIDIAにとって最も戦略的な製品

右から、Hector Ruiz AMD社長兼CEO、Jen-Hsun Huang NVIDIA社長兼CEO、Drew Henry NVIDIA Senior Director, Platform Business
 そうしたnForceのなかで核となるのは、ノースブリッジ側の「IGP(Integrated Graphics Processor)」ではない。むしろ、従来のサウスブリッジに当たる「MCP(Media & Communications Processor)」が中核となる。

 「MCPは当社にとって非常に重要だ。おそらく、最も戦略的な製品だと思う。それは、当社にとって、付加できる技術要素が多いからだ」とHenry氏は強調する。

 NVIDIAはMCPをCPU、GPU(またはIGP)と並ぶ、3つ目のプロセッサと位置づける。実際、MCPにはハイパフォーマンスのデュアルDSPコアがオーディオユニット「APU(Audio Processing Unit)」内部に含まれており、3D/2Dオーディオをプロセッシングできる。また、MCP2では、それに加えてUSB 2.0やIEEE 1394、そしてデュアルのEthernetを内蔵する。

 ここで目立つのはデュアルEthernetで、片方は従来通りNVIDIA独自のMACだが、もう片方は3COMのMACを統合している。NVIDIAによると、典型的な利用方法としては、3COMのEthernetをADSLなど高速インターネットとの接続に使い、NVIDIAのEthernetを家庭内LAN用途に使うといった姿だという。つまり、ホームゲートウエイとしての使い方を想定したためのデュアルEthernetなのだ。

 「PCをメディアセントリックな世界のデバイスにするためにMCPを設計した。MCPの背景にあるアイデアは、メディアとコミュニケーションにプロセッシング能力を提供できる、多くの機能を統合したシングルチップだ。つまり、PCを使ってデータを早く伝送したり、PCがネットワーク世界で強力なクライアントとしてメディアを消費し制作するのに必要な機能を全て提供する」とHenry氏はMCPの設計思想を説明する。


●64bitバージョンのCrush 17も開発

 NVIDIAは、昨年6月に最初のnForceを発表した時に「Distributed Processing」をコンセプトとして掲げた。つまり、PC内で必要なプロセッシングをCPU以外のプロセッサに分散させるという方向性だ。これは、すなわちCPUから処理をnForceやGPUに移すこと、つまり脱CPU中心主義と言い換えてもいい。今回のnForce 2発表では、そうした方向性はますます鮮明になった。

 また、NVIDIAは当初からnForceを、PCのローコストソリューションのための統合チップセットとは明確に区別した。メインストリームの単体グラフィックスに匹敵する性能を提供できる統合ソリューションがnForceのコンセプトだ。nForceがPCの枠に留まらず、幅広いマルチメディア機器のプラットフォームを目指すなら、これは当然の方向だろう。

 もっとも、nForce自体は下への展開をする。例えば、NVIDIAは今回発表したCrush 18ファミリのほかに、Crush 17と呼ばれる製品も開発している。「Crush 18とCrush 17の違いは、Crush 18が128bitバージョンで、Crush 17は64bitバージョンであることだ。これは、現在のnForce 420と220の関係と同様だ。nForce 420が128bitつまり2つの64bitメモリインターフェイスを持つ高性能版なのに対して、nForce 220は64bitのシングルメモリインターフェイスしか持たない廉価版となっている」とHenry氏は説明する。

 だが、今回の発表にCrush 17は含まれていない。64bitの廉価版は、継続してnForce 220(Crush 11)が提供される。「おそらく、64bit版(Crush 17)もそのうち出すだろう。しかし、現在のところは128bitにフォーカスしている」とHenry氏は説明する。これは、グラフィックス内部コアに見合うメモリ帯域が、現状では128bitインターフェイスでないと得られないためだと見られる。

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【7月16日】【海外】NVIDIAがHammer向けチップセット「Crush K8」の計画を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0716/kaigai01.htm
【7月16日】NVIDIA、GeForce4 MXコアを内蔵したnForce2を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0716/nvidia.htm

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(2002年7月16日)

[Reported by 後藤 弘茂]

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