DirectX 9時代を見据えたParhelia-512の実力をチェックする
~Matrox Parhelia FR版のパフォーマンス



インフォマジック「Matrox Parhelia FR版」

 古くはMillennium/Mystiqueファミリー、G100/200/400/450/550などをリリースしてきたMatrox Graphicsは、高品質で高性能なビデオカードを提供するメーカーとして知られてきた。しかし、3Dグラフィックス時代に入り、NVIDIA、ATI Technologiesの両メーカーによる開発競争にやや後れをとり、最近では“もう終わったのか?”とさえ思われていた。

 ところが、5月に新GPUのParhelia-512を発表し、再びグラフィックス市場に名乗りを上げ、にわかに大きな注目を集める存在となった。既に秋葉原ではMatrox Graphicsの代理店であるインフォマジックによるParhelia-512を搭載した“Matrox Parhelia FR版”というビデオカードの発売が開始され、大きな話題を呼んでいる。ここでは、Matrox Parhelia FR版のパフォーマンスなどに迫っていきたい。



●DirectX 9世代を見据えているけど、DirectX 8仕様のParhelia

 今回インフォマジックが出荷したMatrox Parhelia FR版のFRとはFirstReleaseの略で、リテール版の発売に先駆けて先行発売バージョンとしてリリースされたものだ。

 実はParhelia-512を搭載したビデオカードは、Matrox Graphicsからリリースされるが、化粧箱に入れられて発売されるリテール版と、白箱に入れて組み込み向けなどに出荷されるバルク版の2種類がある。両製品の違いはグラフィックスチップのコアクロックで、リテール版が220MHzが予定されているのに対して、バルク版は200MHzとなっている。ただ、日本での代理店であるインフォマジックによれば、これは予定であって、実際にはリテール版のクロックが本当に220MHzになるのかはまだ流動的であるようだ。

 Parhelia-512の特徴は、DirectX 9世代の機能を先取りして取り込んでいることだ。

【各ビデオカードのスペック】
 Matrox Parhelia-512(Bulk版)GeForce4 Ti 4600ATI RADEON 8500
コアクロック200MHz300MHz275MHz
AGPバスインターフェイス4x4x4x
メモリバス幅256bit128bit128bit
メモリクロック500MHz650MHz550MHz
メモリ帯域幅16GB/s10.4GB/s8.8GB/s
ハードウェアT&Lバーテックスシェーダによるエミュレーション対応対応
バーテックスシェーダ421
バーテックスシェーダバージョン2.0 1.1 1.1
ピクセルパイプライン444
テクスチャユニット422
ピクセルシェーダバージョン1.31.31.4
外部モニター出力322
RAMDAC(外部)2(1)22
製造プロセスルール0.15μm0.15μm0.15μm
トランジスタ数8,000万トランジスタ6,300万トランジスタ6,000万トランジスタ

 具体的にはバーテックスシェーダとピクセルシェーダに違いが見られる。といっても、バーテックスシェーダは、DirectX 9でサポートされるバージョン2.0が搭載されているものの、ピクセルシェーダに関しては1.3にとどまっており、DirectX 9の仕様である2.0は搭載されていない。

 このあたりの事情については、後藤弘茂氏のコラム“DirectX 9対応GPUがまだ登場できない理由”に詳しいので、ここでは詳しくは解説しないが、要するにピクセルシェーダ2.0をインプリメントするには、さらに多くのトランジスタを割かなければならないのだが、既に8,000万トランジスタと、Pentium 4の倍近いトランジスタを利用しているParheliaでは、ほとんど製造が難しいレベルになってしまう。そのため、バーテックスシェーダのバージョンは1.3にとどまっていると考えるのが妥当だろう。そういう意味では、まさにParheliaはDirectX 8とDirectX 9の過渡期にあるグラフィックスチップなのだ。


●DX8世代のチップとしても強力な仕様を持つParhelia

 だが、ParheliaはDirectX 8世代のグラフィックスチップとしても強力な機能を持っている。まず第一に256bitというバス幅の広いビデオメモリをサポートしたことにより、500MHz(250MHzのDDR)のビデオメモリで16GB/secという非常に広い帯域幅を実現していることだ。

Parhelia-512コア ブロックダイヤグラム

 NVIDIAのGeForce4 Ti 4600が10.4GB/sec、ATI TechnologiesのRADEON 8500が8.8GB/secという帯域幅であることを考えると、Parhelia-512がいかに圧倒的であるかがわかるだろう。広帯域幅は、処理するデータが多くなるとき、例えば1,600×1,200ドットなどの高解像度で、フルスクリーンアンチエイリアシング(Full-Scene Antialiasing、FSAA)処理などを行なっている場合に、性能に大きな影響を与える。高解像度ではビデオメモリの帯域幅がボトルネックとなり、パフォーマンスがでないことが多いからだ。

 また、レンダリングエンジンも非常に強力になっている。Parhelia-512ではレンダリングパイプラインはGeForce4 Ti、RADEON 8500と同じ4パイプラインとなっているが、パイプラインあたりのテクスチャユニットは4ユニットとなっている(いわゆる4P4Tという構成になっている)。さらに、それぞれのパイプラインは5ステージのピクセルシェーダに出力を渡すことができる。これにより、Parhelia-512は、1クロックで36シェーダもの処理が可能になっており、GeForce4 Ti、RADEON 8500の16に比べて倍以上の処理が可能である。

 なお、Parhelia-512ではバーテックスシェーダは4つ搭載されているが、ハードウェアT&Lは搭載されていない。このため、DirectX 7のハードウェアT&L処理を行なう場合には、バーテックスシェーダがエミュレーションすることになる。


●標準でトリプルディスプレイ構成が可能

 Parhelia-512には2つのRAMDAC(10bit RGB)とTV/ビデオエンコーダが内蔵されており、標準でデュアルCRT出力とTV/ビデオ出力が可能である。さらに、オプションでDVIトランスミッタないしはRAMDACを搭載することで、デュアルDVI出力、さらにはトリプルCRTディスプレイという構成が可能になっている。インフォマジックのMatrox Parhelia FR版には、こうしたDVIトランスミッタとRAMDACが搭載されており、

(1)シングルCRT
(2)シングルDVI液晶ディスプレイ
(3)デュアルCRT
(4)デュアルDVI液晶ディスプレイ
(5)シングルCRT+テレビ出力
(6)シングルDVI液晶ディスプレイ+テレビ出力
(5)トリプルCRT

 などの構成が可能になっている。カード上には2つのDVIコネクタが用意され、ここに、付属のDVI-CRT変換コネクタ、DVI-デュアルCRT変換ケーブル、DVI-ビデオ(コンポジットないしはSビデオ端子)変換ケーブルを接続して利用することになる。

 なお、このトリプルCRT環境では、Parheliaの記事でも既報の通り、“Surround Game”と呼ばれるパノラマ表示機能にも対応している。これにより中央のディスプレイに通常のゲーム画面を、左右のディスプレイに左右の画面を表示できる。Microsoft Flight Simulator 2002」、「Quake III Arena」、「STARWARS JEDI KNIGHT II JEDI OUTCAST」、「Soldier of Fortune II: Double Helix」、「Unreal Tournament 2003」などのタイトルが対応するとMatroxでは説明している。

トリプルディスプレイでは、このようにデスクトップが表示される


●DirectX 9の機能を先取りしたベンチマークで性能を発揮

 それでは、ベンチマークを利用してParheliaのパフォーマンスを探っていこう。利用したのはDirectX 8世代用のベンチマークである3DMark2001 Second Edition(Build330)、Matrox Graphicsより提供されたSharkMark、NVIDIAが公開しているChameleonMark、さらにOpenGLのAPIを利用するid SoftwareのQuake III ArenaとSPECのViewperfの各ベンチマークだ。さらに、3DMark2001 SEに関してはアンチエリアシングを有効にした状態でもテストを行なった。環境は以下の通りで、結果はグラフ1~グラフ6だ。

【テスト環境1】
  グラフィックスコアビデオメモリ
 ドライバコアアーキテクチャコアクロックメモリクロックメモリメモリバス幅メモリ帯域幅メモリ容量
Matrox ParheliaMatrox 1.00.01.226Parheliaー512200MHz500MHzDDR SDRAM256bit16GB/s128MB
GeForce4 Ti4600Detonator XP 29.42NV25300MHz650MHzDDR SDRAM128bit10.4GB/s128MB
RADEON8500ATI リファレンス 6.13.10.6037R200275MHz550MHzDDR SDRAM128bit8.8GB/s64MB

【テスト環境2】
CPUPentium 4 2.53GHz
マザーボードIntel D845GBV
チップセットIntel845G
メモリ(容量)DDR SDRAM(DDR266、256MB)
HDDIBM DTLA-307030
OSWindows XP Professional

■ベンチマークテスト結果

グラフ1 グラフ2 グラフ3
グラフ4 グラフ5 グラフ6
グラフ7 グラフ8

 3DMark2001 SE(グラフ1)に関しては、ParheliaはRADEON 8500にも、GeForce4 Ti 4600にも及ばなかった。だが、アンチエイリアシングを有効にした状態(グラフ2)ではやや状況が異なっている。

 Parheliaはアンチエリアシングとして4xのフルシーンアンチエイリアシング(Full-Scene Antialiasing、FSAA)と、フラグメント・アンチエリアシング(Fragment Antialiasing、FAA)というモードの2つを備えている。

 FAAは主に境界線に対してのみアンチエイリアシング処理を施す技術で、FSAAに比べて処理ピクセル数が少ないのにも関わらず、高いクオリティの画面表示が可能になる。このFAA 16xを有効にした場合、性能低下が少なく、1,600×1,200ドット/32bitカラーや1,280×1,024ドット/32bitカラーなどではGeForce4 Ti4600を上回っているのがわかる。気になるクオリティだが、FSAA 4x時よりも若干クオリティが低いと感じる程度で、アンチエイリアシングなしと比較すると高いクオリティであることがわかる。

アンチエイリアシングなし 4xAA 有効
FAA 16x 有効 アンチエイリアシング設定画面
■スクリーンショット(bmp)のダウンロード(約9MB:zip形式)

 グラフ3、グラフ4はいずれもグラフィックスチップベンダが提供するバーテックスシェーダ、ピクセルシェーダの機能を利用したベンチマークソフトだ。Matroxが提供するSharkMark(グラフ3)では、バーテックスシェーダとピクセルシェーダの性能を計測する。

 Matroxによれば、このSharkMarkはDirectX 9でサポートされる機能を先取りしているとのことであり、ここではMatroxの主張通りParheliaが高い性能を示している。NVIDIAのChameleonMark(グラフ4)も同様のテストだが、3DMark2001 SEではRADEON 8500に遅れをとっていたParheliaも、RADEON 8500を大きく上回り、NVIDIAのGeForce4 Ti 4600に迫る性能をたたき出している。

 グラフ5、6はOpenGLのAPIを利用して描画する3DゲームのQuake III Arenaと、3DベンチマークのSPEC Viewperfだ。いずれの結果においても、Parheliaは、RADEON 8500やGeForce4 Ti4600に劣る結果となっている。OpenGLを利用した場合の性能にはやや改善の余地があると言っていいだろう。


●トリプルディスプレイや画質といった面で評価できる人向け

 以上のように、正直なところDirectX 8やOpenGLといった既存のAPIを利用する3Dアプリケーションで利用する限り、Parheliaが最高性能を発揮するとは言えないだろう。現在リリースされているような3Dゲームで利用するのであれば十分すぎる描画性能を持っているとはいえ、現在の3Dゲームでとにかく最高性能を追い求めたいという用途にはあまり向いていないかもしれない。

 だが、DirectX 9の機能を先取りしたSharkMarkの結果を見てわかるように、近い将来にDirectX 9の機能を先取りしたり、あるいはDirectX 9に対応したような3Dゲームが登場すれば、その時には状況が変わる可能性があるといえ、その点に期待したい。また、256bit幅ビデオメモリによる16GB/secという広帯域幅が実現されていることにより、高解像度やアンチエイリアシングを利用した場合には、高い処理能力を期待できる点は評価していいだろう。

 また、6万円弱という価格設定に関しては、議論の余地がある。最近ではNVIDIAのGeForce4 Ti4600を搭載したビデオカードが5万円程度にまで下がってきているので、正直高いという印象だ。ただ、8,000万トランジスタからくるこの手のチップとしては非常に大きなダイサイズ、x32のDDR SDRAMという高価なDRAMを8つも使っているということを考えると、この値段になってしまうのも致し方ないところで、今後量産効果による価格下落に期待したい。

 だが、それ以外にも目を転じると、Parheliaならではの魅力もある。特に1枚でトリプルディスプレイを実現できる機能に関しては、他のビデオカードにはないメリットだと言える。また、Matroxの画面表示に関しては、好みであるというユーザーも多く、そうしたユーザーにとっては、それなりに高い3D描画性能を持ったParheliaは、まさに待っていた製品だということができるだろう。

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~店頭では59,800円前後の見込み
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(2002年7月5日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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