第159回:そういうあなたはどんなノートPCを使ってるの?



 数カ月ぶりに成田空港に向かうと、ワールドカップ期間を意識しているのか、いろいろな変化があるので驚いた。知らなかったのは僕だけかもしれないが、いつの間にか(実際には5月27日から)出発ゲートで無線LANによるインターネットアクセスが無料で楽しめるようになっている。電源を入れたら勝手につながってしまったので気付いたが、そうでなければ知らないままだったろう。念のため、どんな場所でも無線LANの電源を入れてみるものだ。

 成田エクスプレスの無線LANサービスと同じように、WIDEプロジェクトに絡んでの実験だそうで、7月まで実験が続けられるそうだ。近く成田空港利用の機会がある人は、ゲートで試してみるといいだろう。速度も3Mbps近く出ており、非常に快適にインターネットを利用できた。

 悔やまれるのは、ワールドカップがもし来年だったなら、無線LANアクセスサービスの認知も広がり、大イベントを契機にインフラが整ったかもしれないことだろう。長野オリンピック時に長野周辺のPHSサービスエリアやカーナビの渋滞情報システムが整ったのと同じような効果が期待できたのだが。


●何を使っているの? と訊かれるが

 こんな連載をやっていると、いつも訊かれるのが「何を使っているの?」というお話。おかげで何回か、このネタを扱わせてもらった。あるメーカーの部長さんに「本田さん、新製品はほとんど買っているんですよね? 」と訊かれたが、さすがにそんなに買っていては身が持たない。普通の人よりは買い換えサイクルは早いかもしれないが、決して取っ替えひっかえ状態というわけではない。

 そんな僕も昨年末にB5ノートを探していると書いたことがあったが、実はそれから何も買い換えていない。新型バイオノートSRは購入寸前だったのだが、低輝度時の液晶パネルの見にくさが理由で迷っているうちに買い換え時期を逃し、コンパックのEvo N200のモニターを行なうことになった。

 今年に入っては同じくソニーのバイオノートVXを、Evo N200と組み合わせて使おうと目を付けていた。出張時などにはどちらにしろ2台持っていかないと、故障時に仕事ができなくなる。1台は軽量でバッテリ重視、もう1台は画面サイズとキーボード重視で行こう。そう思ったわけだ。

 ただバイオノートVXが搭載する液晶パネルは14.1インチ。ならば高解像液晶パネルを比較的早期に搭載するソニーのことだから、SXGA+モデルが出たらそれを買おう。そう心に決めていたら、XGAのまま行くらしい。

 そんなわけで方針転換。Evo N400cとEvo N200の2台でまかなってきた仕事を、1台でこなせる製品を購入。2台を使い分けるのではなく、出張時はN200をバックアップで持っていき、基本的には新機種1台だけで仕事をこなすことにした。


●すべての条件がそろうわけではないが

Dynabook SS S5/280PNKW
 結論から言えば、僕が今回選んだのはDynabook SS S5である。週末からのニューヨーク出張に合わせ、コンパクトフラッシュモデルに後ろ髪を引かれながらも、発売日の午前中に無線LAN内蔵モデルを購入した。

 機種を選ぶ上で必須条件としたのは

 ・12.1型以上の低輝度時でも見やすい液晶パネルを搭載していること
 ・ストレス無く長文の原稿も書けるキーボードを搭載していること
 ・最低でも5時間以上のバッテリ駆動が可能なこと
 ・無線LANと有線LANの両方を内蔵していること
 ・1.5kg前後の重さに収まっていること

である。また、必須ではないが次の点も重視した。

 ・ハードディスク容量は30GB、最低でも20GB以上
 ・メモリは256MB以上に増設可能
 ・コンパクトフラッシュスロットがPCカードスロットとは別にあること
 ・IEEE 1394もしくはUSB 2.0、いずれかの高速インターフェイスを搭載していること

 これらの条件を各製品に当てはめてみると、購入したDynabook SS S5とシャープの新型MURAMASAが浮かび上がってくる。全条件をカバーしているのは新型MURAMASAのほうで、購入したDynabook SS S5はハードディスク容量で引っかかる。また、コンパクトフラッシュスロットと内蔵無線LANが排他という点も、MURAMASAに比べてスペック上は劣っている点だ。

 ただ、改良が進んだとは言え、MURAMASAのキーボードは個人的に違和感を覚える。ストロークが半分しかないDynabook SS Sシリーズの方が、長時間のタイプでも疲れない。これは個人の好みなのでどうしようもない(MURAMASAのキーボードの方が好きな人もいるから、善し悪しの問題ではない)。

 一方、ハードディスクは現在、モバイル利用時専用に使っているEvo N200で使用している容量がおよそ12GB程度。デジタルカメラの画像は、必要なものを除いてすべてデスクトップPCで管理しているので、ハードディスク上で増える量が大きいデータは、PDF化している資料だ。これもこれまでの増加ペースを考えると、なんとか今年いっぱいはハードディスクのオーバーフローを経験せずに済むだろう。その後は1.8インチハードディスクの容量増加に期待だ(もっともマイナーな1.8インチは入手できない可能性もあるが)。

 また無線LAN内蔵であれば、コンパクトフラッシュスロットが無くとも困るケースはあまりない。あるにこしたことはないが、必須というわけでもないため、これもあきらめることにした。

 すべての条件にマッチするわけではないが、ハードウェアそのものには満足している。特に操作性や画面サイズと重さ、それにセカンドバッテリ装着時は実働で6時間以上使える点など、様々な要素のバランスという意味では、これまで使っていた2機種の良いところだけを取り出したような印象だ。


●付属ユーティリティもよく考えられているが、筐体は若干弱め

 加えて実際に出張先に持ち込んでみると、付属のユーティリティなど様々な点でよく考えて作られていることがわかる。

 たとえば内蔵モデムは世界48カ国の回線に対応しているが、WindowsのテレフォニーAPIで設定される発信地設定と連動して、自動的にモデムの設定を各国の仕様に合わせてくれる。実際には日本仕様のままでも利用できることがほとんどなのだが、知らず知らずのうちにきちんと正しい設定が行なわれるのは便利。

 また最近のビジネス系のPCによく付属する、複数のネットワーク設定を簡単に切り替えるためのユーティリティもプリインストールされていた。手動でネットワーク接続のプロファイルごと切り替えることも可能だが、有線/無線の両LANアダプタと連動し、ケーブルが接続されているとき、切断されているとき、あるいは無線LANのSSIDに応じて自動的にネットワーク設定を切り替える機能があるのが特徴。

 自宅のSSIDを検出すると自宅のワークグループに参加した時にはDHCP、会社のSSIDでは自IPアドレスだけDHCPでDNSは固定IPアドレスに、といった具合に、状況次第で自動的に設定を変更してくれる。

 システムのリカバリも、リカバリ非対応のCD-ROMドライブしか持っていないユーザーを考慮してか、ハードディスクリカバリが本モデルからサポートされた。反面でローコスト化をねらっているのかリカバリCDが付属せず、約3GB程度をリカバリイメージ保存用パーティション(不可視属性)に取られる。本機のインストールイメージには、Windows XPのi386フォルダ、各種アプリケーションとドライバのインストールイメージなども保存されているため、購入直後の状態で空き容量は12GB程度しかない。

 リカバリ用インストールイメージはノートンGhostのファイルになっているようだが、通常の手段では吸い出すことすらままならない。将来のハードディスクアップグレードを考えると不安なところもある。とりあえずWindows XPのライセンス数は1本分余っているので、アプリケーションとドライバのイメージだけをバックアップしたが、できることならハードディスクリカバリモデルでも、オプションでいいからリカバリCDを用意してほしいところだ。

 また、超薄型の筐体は強度的な不安も感じている。たとえば僕の購入した個体は、液晶を閉じたとき、右端が浮いた状態になる。最初は液晶パネル側に歪みがあるのか? と思ったが、液晶パネル側の強度には全く問題がない。問題があったのは本体側で、特に右パームレスト周辺の強度に問題があるようだ。

 購入時の歪みも、パームレスト右手前角をつまんで力を加えると、それほど力を加えなくとも歪みを緩和できた。この部分は肉抜き部も多く、ある程度力がかかると変形してしまうのは仕方がないのかもしれない。左パームレストとキーボードの間あたりに、熱が多少こもりがちになる点、内蔵無線LANの感度が悪い点とともに、本機の数少ない欠点の1つだと思う。


●ニューヨークのホテルにて

 ところでこうして原稿を書いている今は、ニューヨークで開催される展示会TECHXNYを取材するため滞在しているホテルの一室。ここ、Crowne Plaza Times Square Manhattanは、本来ハイスピードインターネットサービスが利用できるはずなのだが、ホテルの従業員によると現在、システムが故障中で利用できないのだとか。

 それではと電話料金を見ると、市内電話が最初の3分1ドル30セント、その後1分ごとに10セントのチャージという、目の玉が飛び出るような高額設定だ。1泊の料金は昨年のテロ以降かなり下がり、1泊300ドルといった法外な金額ではなくなったが、こんな電話料金では仕事にならない。

 米国での滞在では、いつもハイスピードインターネットサービスを利用できるホテルを選ぼうと努力するのだが、Webサイトの案内では利用可能となっていても実際にはサービスそのものが無かったり、部屋によって利用できない場合があったり、はたまた今回のように故障があったり。念のため確認のメールや電話を入れてもダメな場合がある。

 旅行会社でも、こうしたふつうの旅行者があまり利用しない(?)サービスに関しては、リクエストを出していても確実性に乏しい場合があるので、出張先や旅行先でインターネットが使えるはずだと思いこんでしまわないようにしたい。

 もう1つ、余談ではあるが、今回、出張時に仕事をしながら音楽を聴きたいと考えて小型(といっても劇的に小さいわけではない)のスピーカーをスーツケースに忍ばせて持ち込んでみた。奈良にあるスピーカー専業のベンチャー企業タイムドメイン社のアクティブスピーカー、タイムドメインミニだ。

 4cmフルレンジのこのスピーカー、フルレンジだけあって定位が良く、音の立体感も結構ある。さすがに音域レンジが狭いため、全ジャンルを完璧に鳴らし切るといったことは望めないが、そこらのヘッドホンやPC用小型スピーカーの音とは比べものにならないほど自然な音が出てくる。元々、出張先に持ち出すことを考えているわけではないが、滞在先でも良い音で音楽を聴きたい人はスーツケースに入れて持ち出してみてはいかがだろう。

 なお、同じデザインのスピーカーは、富士通FMVシリーズの一部にも添付されている。これはタイムドメイン社から富士通にライセンスしているものだそうで、金型そのものは同じらしい。ただ、タイムドメイン社は黙して語らないものの、実際にFMV付属の卵形スピーカーと比べると、タイムドメインミニの方が音が良く感じる。

 富士通FMVシリーズ用のタイムドメインスピーカーは秋葉原などで単品販売されている(価格はこちらの方がずっと安い)ので、好みと予算に応じて選ぶといい。個人的には簡易ケースが付属し、音も優れていると感じるタイムドメイン社の製品をおすすめしておく。


□タイムドメインのホームページ
http://www.timedomain.co.jp/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0618/toshiba.htm
【1月16日】富士通、FMV-DESKPOWERシリーズを一新
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0116/fujitsu3.htm

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(2002年6月25日)

[Text by 本田雅一]


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