元麻布春男の週刊PCホットライン

Intel 845E/G/GL搭載マザーボード用途別購入比較


 前回の本コラムに対し、休止状態でもタスクスケジューラによるタスクの実行が可能である旨のご指摘を多数いただいた。休止状態でタスクが実行できないというのは、筆者の誤りで、実際にはタスクは実行可能であった。ここにお詫びするとともに訂正させていただきたい。またご指摘いただいた読者の方々に感謝いたします。


●まずはベンダを揃える

Intel 845GLチップセットにPC133 SDRAMを組み合わせたD845GLLY。PS/2キーボード/マウスコネクタとパラレルポートコネクタの間に、Intel 845E/Gチップセットならば用意されるUSBコネクタの空きパターンが見える
 先週末は、Intelの新しいチップセット、Intel 845E/G/GLチップセットを採用したマザーボードの発売ラッシュだった。これだけ色々な製品が出ると、どれを選んだら良いのか、目移りしてしまいそうなほど。ここでは、いったいどのチップセットがお買い得なのか、調べてみたい。

 ここで比較の対象にするのは、すべてIntel純正のマザーボード。その理由は、価格を比較するという観点でベンダを揃えたいこと、現時点で上記3種類のチップセットすべてのラインナップをmicroATXで揃えられるのがIntel純正に限られること、の2点だ。フォームファクタをmicroATXで揃えるのは、Intel 845GLチップセットのマザーボードがmicroATXのみであるから。どうも市場での価格は、フォームファクタの原則(小さいmicroATXの方が安い)に必ずしも従っていない(アキバ的には流通量の豊富なATXの方が割安)ようだが、今回の比較はmicroATXで揃えてみることにした。

 以上の条件によりエントリーされるのは、D845EPT2、D845GRG、D845GLAD、D845GLLYの4種。実際には、この4種類にLAN付きとLAN無しの2タイプがあるため、計8種類ということになる。Intel 845GLチップセットが2枚エントリーされているのは、D845GLADがDDR SDRAM、D845GLLYがSDR SDRAM(PC133 SDRAM)をベースにしているためだ。データシート的にはIntel 845GチップセットもPC133 SDRAMをサポートしていることになっているが、Intelを含め今のところこの構成のマザーボードを出荷しているベンダはないようだ。

 この4種類のマザーボードの主な仕様について表1にまとめておいた。Intel 845GLベースのマザーボードは、AGPスロットがないだけでなく、USBポートも2つ少ないことがわかる。AC'97 CODECについては、ハードウェア的な差はそれほどない(強いていえば、CNRスロットを用いたアップグレーダビリティだが、あまり実用的ではない)ものの、AD1981Aの方がソフトウェア的なオマケ(SoundMAX)が充実している。

【表1】4種類のマザーボードの仕様
  D845EPT2 D845GRG D845GLAD D845GLLY
チップセット Intel 845E Intel 845G Intel 845GL
FSB 400/533MHz 400MHz
メモリ DDR SDRAM SDR SDRAM
内蔵グラフィックス なし Intel Extreme Graphics
AGPスロット 1 なし
PCIスロット 3 4
USBポート(※) リア4/フロント2 リア2/フロント2
AC'97 CODEC AD1981A STAC9766T
CNRスロットオプション LAN無しモデルのみ なし
※フロント用のUSBポートは、ヘッダピンコネクタがオンボードに用意されているのみで、ケーブルなどは添付されない

 問題は、こうした仕様の差が、どれくらい価格の差として反映されているか、ということだ。そこで、AKIBA PC Hotline!から、上記8種類のマザーボードの最低価格を抜き出したのが表2である。マザーボードによりLAN付きとLAN無しの価格差がバラついているが、これはLAN付きの最低価格店とLAN無しの最低価格店が、必ずしも同じではないことの影響もある。現在、100BASE-TX対応のPCI Ethernetアダプタの価格は極めて安価。Intel純正という「ブランド料」を差し引いても、2,100円というのはちょっと割高、1,000円前後ならオプションとしてリーズナブル、というところだろうか。

【表2】4種類のマザーボードの販売価格
  LAN付き LAN無し 差額 備考
D845EPT2
(Intel 845E/DDR)
16,980円 15,480円 1,500円 オンボードLAN代?
D845GRG
(Intel 845G/DDR)
17,800円 16,700円 1,100円
D845GLAD
(Intel 845GL/DDR)
15,900円 13,800円 2,100円
D845GLLY
(Intel 845GL/SDR)
14,500円 13,780円 720円
 
Intel 845GL/SDRとIntel 845GL/DDRの差額 1,400円 20円 - DDR/SDRのソケット代差額?
Intel 845GLとIntel 845Gの差額 1,900円 2,900円 - AGPスロット/FSB533代?
Intel 845GとIntel 845Eの差額 820円 1,220円 - 内蔵グラフィックス代?
※AKIBA PC Hotline!の不定期相場一覧i845E/G/GL搭載マザーボード不定期調査(5/18)より最低価格を抜粋

 さて、この表2で注目したいのは、チップセットの異なるマザーボード同士の比較だ。まず同じIntel 845GLチップセットを使った2枚のマザーボードの比較だが、その価格差(無理にこじつければ、DDR DIMM用とSDR DIMM用のソケット代の差ということになるだろうか)がほとんどないことがうかがえる(ある意味で当然のことだが)。ただ、Pentium IIIなどからのアップグレードを考えるユーザーが忘れてはならないのは、D845GLLYなら手持ちのPC133 SDRAMが流用可能であるのに対し、D845GLADの場合、おそらくメモリを新規に購入しなければならない、ということだ(アップグレードを考えているユーザーでDDR SDRAMベースのマシンを持っているユーザーは少ないハズ)。マザーボードに価格差がなくとも、メモリ代が余分にかかることを忘れてはならない。

 次に考えたいのは、もしDDR SDRAMを購入する場合、D845GLADとD845GRGのどちらを購入すべきか、ということだ。表2からいくと、Intel 845GLとIntel 845Gの差額は1,900~2,900円。つまり1,900~2,900円で、4本あるPCIスロットのうち1本をAGPスロットに交換でき、背面のI/Oパネル部にUSB 2.0コネクタを2個追加、なおかつ将来的なFSB 533MHzへのアップグレーダビリティを買うことができることになる。2,900円という金額の重みは、人それぞれで違うだろうが、筆者はこの差額なら、D845GRG(Intel 845G)を買った方が得だと思う。

 逆に言えば現状の価格では、少なくとも秋葉原などでマザーボードを1枚買いする個人ユーザーにとって、Intel 845GLチップセット+DDR SDRAMの組合せは、あまり存在価値がないことになる(大手PCベンダが採用する場合は、また話が変わるが)。個人ユーザーにとってIntel 845GLチップセットの存在価値は、PC133 SDRAMと組み合わせることで、手持ちのメモリを流用可能、ということに絞られるように思う(この組合せで性能がどうか、というのはまた別の話)。Intel 845GLベースのマザーボードの価格は、もう少し引き下げられるべきではないだろうか。

 もう1つ気になるのは、Intel 845GとIntel 845Eの価格差だ。Socket 370ベースのシステムを現在使っているユーザーの中には、Pentium 4世代のチップセットで使えないAGPビデオカード(1.5V対応ではない)のユーザーもいることと思うが、GeForce2 MXクラスのカードを使っているユーザーも少なくないと思われる。ハッキリ言って、Intel 845G/GLの内蔵グラフィックスは、性能、表示品質共にGeForce2 MXに及ばない。手元に使えるAGPカードがあるのなら、使った方がベターだ。という観点からD845GRGとD845EPT2の価格差を見ると、その差は820~1,220円ということになった。

【図1】買い物ロジック
 Intelは内蔵グラフィックスをタダ同然の価格で売っているようなものだが、たとえ100円であろうと、不必要なものを買う必要はない。手元に使えるビデオカードのある人は、D845EPT2を買うべきだろう。だが、もし手元に流用できるビデオカードがない場合、予算が厳しければとりあえずD845GRGを買う、ということは大いに考えられる。将来、性能的に、あるいは表示品質的に内蔵グラフィックスに満足できず、AGPビデオカードを買い足す場合も、失う金額は820円~1,220円程度で済むからだ。この金額では、まともなビデオカードはまず買えない。とりあえず「つなぎ」としての出費であれば、これくらいはやむを得ないだろう。

 以上のロジックをまとめたのが図1だ。ここではとりあえず、スタートラインとして、現時点で最も安価なmPGA478対応プロセッサであるCeleron 1.70GHzを選んでみた。ビデオカードを流用しているにもかかわらず、それを必要としないD845GLLYよりアップグレードコストが高くつくD845WN(無印Intel 845)は、できれば選びたくない気がする。差額が4,000~5,000円生じるが、DDR DIMMを1枚買ってD845EPT2にするか、価格を重視してD845GLLYにした方が良いかもしれない。


●Intel 845GとIntel 845GLを比較

 だが、それにも増して気になるのは、D845GLLYの性能だ。PC133 SDRAMを流用できるのは良いのだが、性能差がDDR DIMMの購入費を上回るようでは、魅力がなくなってしまう。というわけで、ここではIntel 845GLとIntel 845Gの性能を比べて見ることにした。Intel 845GLのマザーボードは、これしかないのでD845GLLYを使用。Intel 845GのマザーボードはD845GRGにしたかったところだが、手元にあったATX版のD845GBVで代用した。D845GRGとD845GBVはBIOSアップデートのファイルも共通で、基本性能には大差はないハズである。

 表3は、CPUにCeleron 1.70GHzを用いた場合の、D845GLLYとD845GVBのベンチマークテスト結果だ(基本的にはCPUの性能が向上するほど、両者の性能差は開くものと考えられる)。PCMark 2002によるとPC133メモリとDDR266メモリの性能差は約1.8倍。これが、3Dグラフィックス性能(3DMark 2001 SE)や、インターネットコンテンツ制作(SYSMark 2002 Internet Content Creation)に強く影響しており、この2つの分野での性能差は40%を超える。一方、Office Productivityでの差は約20%と、上の2つに比べれば小さくなっている。

【表3】Intel 845GL(D845GLLY)とIntel 845G(D845GBV)の性能比較
  D845GLLY
(PC133 CL2)
D845GBV
(DDR266 CL2)
性能差
(※D845GLLYを100とする)
PCMark 2002 - CPU 3,673 3,886 105.8%
PCMark 2002 - Memory 1,804 3,280 181.8%
3DMark 2001 SE 791 1,164 147.2%
SYSMark 2002 Rating 102 135 132.4%
SYSMark 2002 - ICC 128 181 141.4%
SYSMark 2002 - OP 82 100 122.0%
※いずれもメモリ256MB、OSはWindows XP Professional、1,024×768ドット/32bitカラー(85Hz)

 そして、この2つの間の価格差は約8,000円。8,000円という金額の重さは人によって違うだろうが、40%の性能向上は十分8,000円に値するのではないだろうか。もしそうなら、結局D845GLLYは、個人ユーザー向きではないかもしれない。Office Productivityでの性能差が小さかったことからして、WordやExcelで業務を行なう(それもPC133メモリを大量にストックしている)企業のクライアントPC向け、ということになるのかもしれない。とすれば図1は、個人ユーザーにとってはもっとシンプルに、手元に流用可能なAGPビデオカードがあるならD845EPT2、なければD845GRGということで良いのだろう。


●Intel 815Eからのアップグレードは有効か?

 最後に、もう1つ比較をしてみた。それは、1世代前のグラフィックス統合チップセットであるIntel 815との比較だ。Intel 815の内蔵グラフィックスに比べIntel 845Gの内蔵グラフィックスは、3Dグラフィックス機能的にはテクスチャ圧縮のサポートなど強化されている部分もあるが、3Dグラフィックスを目当てに買うほどではない。3DMark 2001 SEのスコアでGeForce2 MXの半分程度、というところだ。しかし、それ以上に、対応可能な解像度の制限が大幅に緩和されたこと、ハードウェアオーバーレイ可能な解像度の制限が事実上なくなったことなど、改善された部分は決して少なくない。もちろん、プラットフォームとしての性能の底上げも果たされており、全般に基礎体力が向上している。それを確かめたのが表4だ。

【表4】Intel 845GLとIntel 815Eの比較
  D815EEA
(Intel 815E)
D845GLLY
(Intel 845GL)
性能差
(※Celeron 700MHzを100とする)
搭載CPU Celeron 700MHz
(FSB 66MHz)
Pentium III 1B GHz
(FSB 133MHz)
Celeron 1.70GHz -
PCMark 2002 - CPU 1,644 2,560 3,886 236.4%
PCMark 2002 - Memory 802 1,387 2,145 267.5%
3DMark 2001 SE 472 608 834 176.7%
SYSMark 2002 Rating N/A N/A 116 N/A
SYSMark 2002 - ICC 93 95 150 161.3%
SYSMark 2002 - OP N/A N/A 90 N/A
※いずれもメモリ256MB、OSはWindows XP Professional、1,024×768ドット/16bitカラー(85Hz)

 表3と異なり、表4ではデスクトップの色数が16bitカラーになっているが、それはIntel 815では1,024×768ドット時に、3Dグラフィックス機能やハードウェアオーバーレイを利用可能なのが16bitカラーまでであるため(このあたり、基礎体力の向上を感じる部分である)。また、今回の限られた時間では、どうしてもIntel 815ベースのマザーボード(Intel D815EEA+内蔵グラフィックス)上でSYSMark 2002のOffice Productivityテストを完了させることができず、不完全な比較となってしまった。それでも、予算にして25,000~27,000円のアップグレードの効果が、かなりあることが確かめられたように思う。可能ならあと8,000円追加して、Intel 845Gベースのマザーボードにしておく(AGPカードの手持ちがあればIntel 845Eベースでもよい)と、よりアップグレードの費用対効果が高まるのではないだろうか。

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(2002年5月29日)

[Text by 元麻布春男]


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