一ヶ谷兼乃の

インターネットインフラの見直しとトラブル対策
~Bフレッツに最適なルータは?


 何度も言うようであるが、筆者にとってインターネットは電気、ガス、水道などと同じように欠かせないインフラだ。

 現在、筆者宅ではBフレッツ・ベーシックタイプ、フレッツ・ADSL 8Mの2つのサービスを受けている。今年に入ってからというもの、FTTHなどの高速回線への対応をウリにしたルータが各社からつぎつぎと発売された。筆者も実際に購入して、その実力はどの程度のものなのかを確認しつつ、いろいろな製品を試している。また、2つのブロードバンドインターネットサービスを利用してきて、いくつかトラブルも体験したので、本日と明日の2回にわけて、レポートしてみたい。



■Bフレッツ用ルータの入れ替え

 筆者は個人的に購入したり、雑誌の製品レビューなどでいろいろなルータを試してきた。ルータという製品は実際に使ってみないと、動作が安定しているのか、どのような設定のときにどれくらいのスループットが望めるのかは、判らないのが実情である。

 筆者がルータの入れ替えを思い立ったのは、2001年の年末である。それからというのも、個人的に購入したのが5機種。そのほか、製品レビューでいろいろな製品に触れてきている。ここで感じたのが、あまりにも動作が不安定な製品が多いということだ。

 製品レビューで借りたものは、発売前の試作機なども含まれるため、動作が安定しないのもやむを得ないが、パソコンショップの店頭に並べられ、商品として売られているにもかかわらず、正常に動作するものがあまりにも少ないことには驚きを覚える。

 ルータとは通信機器であり、安定動作するということが最も基本的な条件だ。例えば、最近一般的になってきた通信機器としてHubがある。もし、不定期に1、2分間だけ通信不能になるようなHubがあれば、これは不良品と判断されるのが普通ではないだろうか。

 それ以外のほとんどの時間では普通に通信できるからといって、正常な製品であるとはいえないだろう。筆者はHubと同じようにルータも、連続稼動があたりまえで、一日に何度も通信ができなくなるような製品は、個人向けの製品であっても不良品だと判断している。残念ながら、最近の高速スループットをウリにしているルータの中には、不良品としか判断できない製品があまりにも多いのである。

 動作が不安定な製品のほとんどはファームウェアを更新することで、安定動作が期待できる。そのため現在不安定な動作であっても、将来的には安定動作するかもしれないのだが、実際に店頭に並べるのであれば、安定動作するレベルにまで完成度を高めてからにして欲しい。完成度もなにもわからないまま、新製品に飛びついて購入してしまう状態を「人柱」と表現するが、まさにその状態になってしまった人も多いのではないだろうか。

 筆者がこれまで購入してきたルータの中には、既に処分してしまったものもあるが、現在も所有しているもののなかから、いくつか紹介してみたい。



■高価だが非常に信頼性の高い「XR-300/TX2」

センチュリーシステムズ「XR-300/TX2」

 まず紹介したいのが、センチュリーシステムズ「XR-300/TX2」。これは昨今1万円台で発売されているルータが多いなか、実売価格が4万円前後であり、純粋に個人向けとはいえないが、筆者が最も気にいっているルータの1つである。

 この「XR-300/TX2」は、昨年末このPC Watchの記事でも紹介しているので、憶えている方もいると思う。このときはメーカーから機材を借りて2カ月以上試用していた。当時は、Ver.1xxxやVer.2.0ベータ版のファームウェアであったが、Ver.2.0の正式版発表を機に、自分で購入してみた。

 筆者が購入するに至った理由は、十分なスループットや動作の安定性、マルチセッション対応という点である。

 購入当時はマルチセッションに対応していなかったが、対応ファームウェアのスケジュールが発表済みであった。現在はマルチセッションに対応したファームウェアが公開されており、筆者もASAHIネットとフレッツ・スクエアの両方に同時接続して、シームレスにそれぞれのサービスが利用できる、快適な環境が実現できている。

 まず特徴に挙げられるのは、非常に安定していることだ。どのような設定を行なっても不安定な動作がみられない。本来、通信機器とはそういうものであるのだが、現状においてはこの機種の一番の特徴だといってもいい。

 次に、スループットに関しても、筆者宅のBフレッツ・ベーシックタイプの回線で、30Mbps以上のスループットが確認できている。これに関しても、現在のところ十分なスループットだと判断している。

 最後のマルチセッションに関してもまったく問題なく、満足している。もちろん、これら以外にも「XR-300/TX2」の魅力的な機能は数多くあるのだが、筆者がまだ活用しきれていないというのが実際のところだ。

 余談となるがメーカーのサポートが良い点も特筆に値する。「XR-300/TX2」自体の特徴ではないが、ユーザーにとっては重要な事柄ではないだろうか。

 センチュリーシステムのホームページでは、最新ファームウェアだけでなく、最新ファームウェアに対応したリファレンスマニュアル、いろいろな使用環境での具体的な設定方法が説明されている資料なども公開されている。

 また、筆者がファームウェアの更新を失敗してXR-300/TX2が動作しなくなったときでも、メーカーへ返送して、メーカーに到着した当日中に復旧して返送してもらうことができた。これは筆者が特別な扱いを受けたのではなく、全てのユーザーに対して行なわれている対応であることを付け加えておきたい。

 これらの状況からわかるように、筆者宅のBフレッツ・ベーシックタイプの回線には、このXR-300/TX2が接続されている。

 現在のところ、筆者が利用する環境でのXR-300/TX2に対しての不満はほとんどない。不満には思っていないが、今後のファームウェア更新時に期待したいのが、Universal Plug and Play(UPnP)への対応と、MTU値の編集機能である。

 MTU値の変更は、以前のファームウェアでは変更できたのだが、現在のファームウェアではユーザーが任意に設定することができなくなっている。MTU値をいじってしまうことでのトラブルを避けるために、あえてユーザーが設定を変更できないようにしている思われるが、全ての環境でメーカー設定値がベストなMTU値になるわけではないため、ユーザーに開放してもらいたい。

 UPnPに関しては、さすがに今すぐ対応するには難しい状況下であると思うが、対応表明だけでも欲しいところである。



■ルータ選びはリアルユーザーの声を聞くことが重要

ハイウエストブレインネット「PBR005」

 そのほかに所有しているルータには、ハイウエストブレインネット「PBR005」とNTT-ME「BA5000 PRO」の2機種である。

 ハイウエストブレインネット「PBR005」のほうは、以前この連載でレビューしたときには、PPPoE環境でうまく使えないといった状況であったが、現在公開されているVer.H1.08のファームウェアになって、ずいぶんまともになった。

 PPPoEでの接続がうまくいかないといったことはなくなったが、時々、全てのセッションが突然切れる現象が発生している。セッションが切断された直後でも、新たな通信を行なうことができるためプロバイダとの接続が切れているとも考えにくい。この現象が通信量の過負荷によるものなのか、通信時間によって起こるものなのか、それとも別な原因がトリガーになっているのか判らないが、とりあえず筆者の環境で利用するには、安定性が足りないと判断した。

 同社のルータは積極的にUPnPへ対応するという先進的な面や、不具合についてもファームウェアが更新されるにしがたって徐々に改善されてきているので、今後の対応に期待したい。



NTT-ME「BA5000 PRO」

 NTT-ME「BA5000 PRO」は、対応が発表されているUPnPやマルチセッション機能だけでなく、デザインやNTT-MEというブランドに惹かれて購入してきたものだ。

 こちらも、購入当初は比較的安定して動作したが、マルチセッション機能がうまく動作しなかったために、お蔵入りになっている。4月下旬現在、Version 2.03 27のファームェアが公開されているが、UPnP対応のファームではないために、アップグレードはしていない。こちらもUPnP対応ファームが公開されたときにでも、再度試してみたいと考えている。

 ルータを選ぶ際、あらかじめいろいろな製品を自分で試すということは不可能である。本来であれば、パソコン誌やインターネット関連誌での製品レビューなどが、購入の参考となる情報であるはずなのだが、筆者がいろいろな雑誌を読む限りでは、実際に利用したとは思えない記事があまりにも多いのに苛立ちを感じている。

 読者の方々がルータを選ぶ際には、インターネット上での掲示板や個人ページでの使用記やレビューが、ルータ選びのよりよい情報源となるのではないだろうか。ここで記載した内容は、少なくとも筆者が実環境で利用した結果得られたもので、読者の方々へ多少でもお役に立てれば幸いである。

(次回へ続く)


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(2002年5月1日)

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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