元麻布春男の週刊PCホットライン

IDF展示の新マザーボードに見るIntelプラットフォームの今後


●Intelの廉価マザーの注目点

 4月の16日から3日間、舞浜のヒルトン東京ベイで、IDF Japanが開催された。その展示会場で、ちょっと目をひいたのが、公式には未発表のチップセットを用いたIntel純正マザーボードの展示だ。

 展示されていたのは、Intel 845E、Intel 850E、Intel 845G、Intel 845GLの4種のチップセットを用いたマザーボード。Intel 845EとIntel 850Eは既存のものをFSB 533MHz対応に改めたものであるのに対し、Intel 845G/GLはグラフィックス機能を内蔵した統合型のチップセットである(Intel 850EのみがICH2、ほかはすべてUSB 2.0対応のICH4という違いもある)。これらの中には、すでにサードパーティ製のマザーボードが秋葉原の店頭に飾られたものもあり、新チップセットという観点からのニュースバリューはそれほど高くないかもしれない。だが、筆者にはいくつかの点で発見があった。

 特に注目したのは、最も廉価なIntel 845GLチップセットを用いたマザーボードだ。展示されていたのはD845GLADとD845GLLYの2種で、いずれもmicroATXフォームファクタのマザーボード。違いは、前者がメインメモリにSDR SDRAMを採用するのに対し、後者がDDR SDRAMを採用しているという点にある。ほかは完全に、といって良いほど共通で、型番とメモリのDIMMスロット以外に区別がつかないほどだ(写真1)。

【写真1】
Intel 845GLチップセットを用いたD845GLAD。メインメモリはSDR SDRAM(PC133)対応。Intel 845G/GLチップセットのノースブリッジには、これまでIntel 850/Intel 845チップセットに用いられたものより明らかに大型のヒートシンクが取り付けられている(ハンダ付けにより固定されており、取り外し不可)。グラフィックスの内蔵に伴うトランジスタ数の増加に対応したものだろう


Intel 845G/GLチップのノースブリッジチップに貼り付けられた大型のヒートシンク。ハンダ付けで固定されており、取り外すことはできない

 このD845GLAD/D845GLLYで筆者の目が止まったのは、「拡張スロットがPCIのみ」ということ。Intel 845Gチップセットと異なり、Intel 845GLチップセットは外付けAGPスロットをサポートしない(内蔵グラフィックスのみ)ため、AGPスロットを持たないのは当然としても、D845GLAD/D845GLLYにはもう1つ足りない? ものがある。それは、CNRスロットだ。つい最近、CNRスロットに対応したサウンドカードを取り上げた者として、つい目がいってしまった。

 このところのIntel製マザーボードでは、一部のOEM向けを除き、原則的にCNRスロットとオンボードのLAN機能(10/100Base-TX)が排他となっている。その理由について、Intelから正式な回答をもらったわけではないが、想像できる理由としては、ICHが内蔵するLANインターフェイス(MII)が1つしかないため、オンボードにMIIを利用したLANを実装してしまうと、CNRのLANカードを利用できないことが挙げられる(CNRのIntel製LANカードは、一時ではあるが秋葉原で流通した)。そういう意味では、今回展示されていたD845GLAD、D845GLLYともにオンボードLANを備えており、CNRスロットを持たなくても不思議はない。



●CNRが消え、AC'97 CODECチップが変更に

【写真2】
Intel 845Gチップセットを用いたD845GRG。PCIスロットの上にCNRスロット用の空きパターンが確認できる。外部AGPスロットがある点もD845GLAD/D845GLLYとの違いだ

 ただ、これまではオンボードLANを持ったCNRスロット無しのマザーボードであっても、マザーボード上にCNRスロット用のパターンだけは残されていた。今回展示されていたマザーボードでも、D845GRG(写真2)をはじめ、他のすべてのマザーボードにCNRスロットの空きパターンが確認できた。不思議に思ってCNRスロットのあるべき? 位置の周囲を見ているとあることに気づいた。それは、AC'97 CODECチップが、これまでIntel製マザーボードで使われてきたAnalog Devices製のものからSigmaTel製のものに変えられていたのである。Analog Devices製のAC'97 CODECチップを採用したIntel製マザーボードでは、様々な付加機能を備えたSoundMaxと呼ばれるソフトウェアが利用できるが、D845GLAD/D845GLLYでは、SoundMaxの利用はできないことになる。

 HerculesのSC-CORE 6 DIGITALを取り上げた際、異なるメーカーのCODECチップを組み合わせて、マルチチャンネルのサウンド機能を実現することが事実上不可能であると述べたが、現在CNRに対応したサウンドカードのリファレンスデザインがほとんどAnalog Devices製のCODECによるものであることを考えれば、D845GLAD/D845GLLYにCNRスロットがないことも納得がいく。ただし、SigmaTel製のCODECを採用したためCNRスロットがなくなったのか、CNRスロットを採用する予定がなかったからCODECチップにSigmaTel製を採用したのかは分からないのだが。



●i845プラットフォームは低コストにフォーカス?

 いずれにしても、Intel純正のIntel 845プラットフォームは、相当低コストを意識したものになっていることは間違いない。CNRスロットを省略した上、SoundMaxの添付も見送る反面、LANを標準搭載するというのは、ターゲットを企業が一括大量導入するクライアントPCに絞ったからなのだろう。Intel 845E、Intel 845Gチップセットについては、microATXとATXの両方が提供されているのに対し、Intel 845GLではmicroATXが2種類というのも、低コスト意識の現れだ。

 Intel 845GLプラットフォームの本命は、年内に登場すると言われているNetBurstマイクロアーキテクチャベースのCeleronだと思われるが、企業のクライアントPC向けとして、相当思い切った価格設定がされることが期待できる。もちろん個人ユーザーであっても、PCとしてベーシックな機能でOKというユーザーなら、Intel 845GLプラットフォームは意外と狙い目かもしれない。後は内蔵グラフィックスのアナログ的な画質が、期待を裏切らないことを願うばかりだ。

□Intel Developers Forum 2002 Spring Japanのホームページ
http://www.intel.co.jp/jp/developer/idf-j/
□関連記事
【4月10日】【元麻布】光デジタル端子付きCNRサウンドカードを試す
~CNR普及を妨げる問題点を考える
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0410/hot195.htm

バックナンバー

(2002年4月18日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.