WinHEC 2002レポート 1

250gのCrusoe搭載Windows XP機を展示
〜TM6000と256bit Crusoeは2003年に延期

OQOのUltra-Personal Computer。わずか250gで、Crusoe TM5800/1GHzと10GBのHDD、4インチのLCDを備える

会期:4月16〜18日

会場:Wasington State Convention & Trade Center



 4月16日〜18日の3日間に渡り、Microsoftのハードウェアエンジニア向けカンファレンスであるWinHEC(Windows Hardware Engineering Conference)が、Microsoft本社があるアメリカ合衆国ワシントン州シアトルのワシントン州コンベンション&トレードセンターにおいて開催されている。

 その会場近くのホテルにおいて、CPUメーカーのTransmetaが記者説明会を開催し、ベンチャー企業のOQOが開発した、わずか250gというWindows XPが動作するPCのプロトタイプを公開した。また、Transmetaのロードマップもアップデートが加えられ、昨年の段階で今年にリリースするとされていた統合型CPUのTM6000および256bit Crusoeが2003年に延期されたことも明らかになった。

●4インチの液晶を搭載しわずか250gのWindows XPベースPC

 3月11日にソニーがプロトタイプを公開したバイオU、CeBIT 2002の会場で公開されたJVC(日本ビクター)の「MP-XP7210DE」、既にリリースされている富士通のLOOX Sなど、ここ最近Windows XPが動作する1kg以下のノートPCが続々と発表されている。これらの製品はいずれも1kg弱となっており、キーボードも用意されているなど、いずれもPCとして使うことを前提にしたマシンだと言える。今回、この流れをさらに加速するプロトタイプが公開された。それが今回OQO(1999年に設立されたばかりのベンチャー企業、オーキューオーと読む)の“Ultra-Personal Computer”だ。

 Ultra-Personal Computerはキーボードやマウスなどを取りはらい、タッチスクリーンの4インチディスプレイ、Crusoe TM5800/1GHz、東芝の1.8インチの10GB HDD(1プラッタ)などを採用することにより、250gというPCとは思えない小ささを実現した、Windows XP Professionalが動作するPCだ。製品名は今のところ決まっていないようで、仮に“Ultra-Personal Computer”と呼ばれている。サイズは105×74×22mmと非常に小型で、筆者が持参したThinkPad X22、折りたたみ型CLIEなどと並べて写真を撮影したが、圧倒的に小さくなっている。主なスペックは以下の通りだ。

【Ultra-Personal Computer】
CPUCrusoe TM5800/1GHzまで対応
チップセットCPUに内蔵(ノース)+ALi(サウス)
ビデオチップSMIないしはATI
メモリ256MB
HDD10GB(1.8インチ、1プラッター)
ディスプレイ4インチ、640×480ドット(VGA、タッチスクリーン)
バッテリーリチウムポリマー(12W/h、MP3再生時で7時間程度)
ポートIEEE 1394×1、USB(v1.1)×1、拡張ポート×1
ネットワーク無線LAN(IEEE 802.11b)、Bluetooth
サイズ105×74×22mm
重量250g以下

となっている。実際には動作する様子は公開されなかったのだが、既にマザーボードなどは実際に動作するものが入っており、Windows XP Professionalが動作するという。

ThinkPad X22(B5サイズサブノート)とメモリスティックとの比較。非常にコンパクトであることがわかる 折りたたみ型CLIEとの比較。ほぼ同じような大きさであることがわかる。縦方向はCLIEの方が大きい 高さはCLIEよりも大きい22mm

●フル機能のPCとしても、ストレージとしても使える柔軟性

 拡張ポートには、オプションの拡張ケーブルで外部ディスプレイポートを接続したり、クレ−ドルに接続して、キーボードやマウスをつけて利用できる。さらに、この本体自体をノートPCの形をしたドッキングステーションに内蔵してフルファンクションのPCとして利用したり、同じようにデスクトップPCの形をしたドッキングステーションに内蔵して、デスクトップPCとして利用することも考えられているという。また、IEEE 1394とUSBポートが標準で用意されているため、IEEE 1394(6ピン)やUSBポートに周辺機器をつないで利用することも不可能ではない。

この大きさなのにファンが内蔵されている ポート類。左から拡張ポート、USBポート、IEEE 1394ポート(6ピン)
オーディオポート 無線LANのアンテナとポインティング用のボタン

 つまり、これは「HDDにディスプレイとCPUが付いた」製品だと考えればいいだろう。データを持ち運んで利用し、いつでもどこでもポケットから出して利用できる、そんな製品だと言える。250gと小さいのに無線LAN、IEEE 1394、USBとネットワークに接続する手段や拡張ポートが用意されているので、例えば出先ではIEEE 1394経由で相手のPCに接続してネットワーク接続したり、USBで接続できるデジタルカメラを利用してデータを吸い出し、無線LANのホットスポットからデータを送信するということもできてしまう。

 「この製品は標準のWindows XPマシンとして動作する。Windows XPのプラットフォームには、ハードウェア、ソフトウェアが無数に存在しており、この製品はそれを全て利用できる」(OQOのジョリー・ベルCEO)とのコメントの通り、フル機能のWindows XPマシンであることのメリットは非常に大きい。確かに、640×480ドットのディスプレイは、正直に言って十分な解像度ではないだろう。だが、それもHDDにLCDが付いているのだと考えれば、致し方ないところだ。

 例えば、こんな使い方のモデル(ユーセージモデル)が考えられる。筆者の友人は、会社と家の間でのデータの移動に、東芝の5GBのPCカードHDDを利用している。彼は家にあるデスクトップPCと会社にあるノートPCの間でデータを共有できればよいと割りきっているので、そういう選択になっているそうだが、そのHDDカードに、CPUとディスプレイが付いてしまった、というのが今回の製品なのだ。これまではできなかったが、会社から家への移動時間にデータが見ることができたり、場合によっては編集できたらどうだろうか。それが、重たいノートPCではなく、この250gの小さなデバイスでできるとしたら、より便利だし、いつでもどこでもデータにアクセスできるというユビキタスの概念が実現されることになる。デザインなどにはまだまだ見なおす点はあるとは思うが、非常に興味深い製品と言えるだろう。

 なお、本製品のターゲット価格は1,000〜1,500ドル(CPUのグレードなどにより異なるようだ)となっており、OQOのOEM先である家電のトップブランドメーカーから、今年の末に出荷される予定であるという。

拡張ポートに拡張ケーブルを挿しているところ。この例はVGAコネクタとUSBポートを拡張しているところ OQOのジョリー・ベルCEO

●2002年はTM5800にフォーカスし、TM6000や256bit Crusoeは2003年へ延期

 さて、昨年末から今年初めにかけてのTM5800の生産トラブルという悪いニュースで話題となってしまったTransmetaだが、同社のPCプラットフォームマーケティングディレクターのマイケル・ディネッフ氏によれば「既に生産面のトラブルは解消した。OEMメーカーに対して順調に出荷している」とのことで、生産面でのトラブルはもうないと強調した。

 ただ、この影響は同社の今後の製品計画にも影響を及ぼしたようで、1月のInternational CESの時点では2002年中に出荷するとしていたTM6000(統合型CPU)、256bit Crusoeは2003年に延期となったことが明らかになった。これについては「2002年はTM5800のクロックやCMSのバージョンを上げることにフォーカスする。そして2003年に満を持してTM5800の低電圧版、TM6000、256bit Crusoeをリリースしていきたい」(ディネッフ氏)と説明されている。

 このように、製品をしぼって開発をするというのは、Transmetaにとってよい選択だろう。TransmetaはIntelやAMDと違って大きな会社ではなく、開発リソースも限られているはずだ。そうした会社にとって、複数のラインを用意するよりも、現在需要がある製品を開発していったほうがよりよい選択であると言えるだろう。OQOのジョリー・ベルCEOが「この製品はTransmetaのCPUでなければ考えられなかった」と述べているとおり、まだまだ「CrusoeでなければできないPC」というフィールドは確実に存在しているし、これからも創造して欲しいものだ。言いかえれば、こうしたまだ未開拓の市場をどのように切り開いていけるか、それがTransmetaが生き残るための条件となるだろう。

□WinHEC 2002のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/winhec/
□Transmetaのホームページ(英文)
http://www.transmeta.com/
□OQOのホームページ(英文)
http://www.oqo.com/

(2002年4月17日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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