後藤弘茂のWeekly海外ニュース

これがBaniasだ--来年第1四半期に1.6GHz、LV/ULV版も続けて登場へ


●Baniasの周波数は1.4~1.7GHzに

 Intelの次期モバイルCPU「Banias(バニアス)」は来年第1四半期に通常電圧版、第2四半期にLV(低電圧)版とULV(超低電圧)版が登場する。動作周波数は、通常版が1.6GHz、LV版が1.1GHz、ULV版が900MHz。パフォーマンスは1.6GHz版でPentium 4-M(Northwood:ノースウッド)の2GHz相当。熱設計枠(Thermal Envelop)は通常版が24.5Wで、平均消費電力は1.2Wまで、電力密度(Power Density)が非常に高い。製造プロセスは0.13μm。1MBのL2キャッシュを搭載するほか、L1キャッシュとTLB、キューも強化されている。

 FSBは400MT/sec(ベース100MHz)のクアッドパンプで、基本的にはPentium 4と同じだがモバイル向けにモディファイされている(完全互換ではない)。命令セットはSSE2フルサポート。マルチポイントの、ダイナミックな電圧&周波数マネージメント機能を持つ。チップセットは、登場時に「Odem(オーデム)」、続けて第2四半期にグラフィックス統合型の「Montara-GM(モンタラ)」が加わる。サウスブリッジはICH-4Mで、IntelはICH-4M用の無線LANチップもオプションで提供する。

 Intelの「Banias」製品計画が明らかになり始めた。Intelは、モバイルPentium 4-M発表後、堰を切ったようにBanias情報を出し始めている。おそらく、Baniasの実チップがデモ公開される日も近いだろう。

 以前伝えた通り、BaniasはOEM向けサンプルが、今年第2四半期中に行なわれる予定だ。製品出荷は、来年の3~4月と聞いていたが、現在は来年第1四半期中であることが明らかになっている。製品計画の概略は次のようになっている。


 Q103Q203
通常版-1.7GHz
1.6GHz
1.5GHz
1.4GHz
LV版-1.1GHz
ULV版-900MHz



●クロックはPentium 4-Mの下、Pentium III-Mの上

 まず通常電圧版を見ると、1.4/1.5/1.6GHzで登場して、すぐに1.7GHzが加えられる。その後も高周波数版が1四半期毎に追加され、来年中か2004年頭には2GHzに到達するようだ。おそらく、2GHzレンジのBaniasは、次の製造プロセス90nm(0.09μm)版になると想像される。

 周波数だけを見るとBaniasはちょうどPentium 4-Mのすぐ下に位置する。2003年の第1四半期には、Pentium 4-Mはローエンドで1.8GHz、ハイエンドが2.2GHzに達するからだ。別な言い方をすれば、BaniasはNorthwoodベースのCeleronと同じ周波数レンジとなる。

 しかし、実パフォーマンスはBaniasの方がNorthwoodよりずっと高い。複数の関係者が、Banias 1.6GHzはPentium 4-M 2GHzと同レベルの性能と聞いていると語っている。つまり、Pentium 4-MとBaniasでは、周波数はBaniasが1段下だが実性能は同レベル、そしてTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は10W程度Baniasの方が下という関係になる。ただし、ここで言う性能が、どんな条件のものなのかはわからない。

 一方、Baniasと同レベルのTDPであるPentium III-Mは、同時期に1.33GHzなので、周波数でも明確に差別化される。つまり、1.33GHz以下はPentium III-M、1.4GHz以上はBaniasとなる。このために、Intelは、Pentium III-Mの性能向上を意識的に抑えているフシがあり、1.33GHzに持って行くのも今年の秋冬商戦時期で、1.33GHz以上の製品計画がない。

 LV版1.1GHzとULV版900MHzは、通常電圧版の1四半期遅れで登場する。同時期の、モバイルPentium III-Mは、LV版が1GHz、ULV版が900/933MHz。つまり、周波数だけを見るとLV版はワンステップアップになるが、ULV版は同じ周波数で引き継ぐ。ただし、ULV版の購買層は、比較的テッキーが多いので、これはそんなに問題にならないだろう。ある関係者によると、BaniasのLV版とULV版は、ほぼPentium III-MのLV/ULV版のThermal Envelopを引き継ぐという。



●TDPは25Wレンジに

 TDPで見ると、Banias通常電圧版の24.5Wというスペックは、Pentium III-Mの22W(1.2~1.33GHz)を引き継いでおり、原理的には同じ熱設計で対応できそうだ。しかし、Baniasは電力密度が高いと言われており、そのため、熱設計のハードルはさらに高くなる。ダイ(半導体本体)の面積あたりの発熱が多くなるからだ。0.13μmでも電力密度が高いということは、次の90nm(0.09μm)版ではさらに高くなることを意味する。

 Baniasのキャッシュ量が多いのは、性能のためだけでなく、この電力密度分散の意味もあると思われる。L2 1MBは以前からわかっていたが、今回は、BaniasのL1も大容量になっていることがわかった。正確な量はわからないが、キューとTLBは強化されている模様。こうした改良は、メモリレイテンシのインパクトを減らし、CPUの処理性能の向上に効果がある。

 平均消費電力のターゲットは通常版で1.2W、ULV版はおそらく0.5W。また、Baniasは電圧&周波数を、マルチポイントで制御できるようだが、この部分はまだ詳細がわかっていない。技術的にはCPU側は難しい話ではない。

 TDPや平均消費電力から考えると、BaniasはIntel CPUの中でもっとも優れたパフォーマンス/TDPを誇る。もし、Banias 1.6GHzがPentium 4-M 2GHzと同じ性能なら、性能/TDPは1.3倍になる。



Pentium 4-MのFSBをモディファイ

 BaniasのFSBについても明らかになった。400MT/sec(ベース100MHz)のクアッドパンプと、帯域と方式は現在のPentium 4と同じで、ある程度の互換性があるが、完全に同じではない。あるチップセットメーカー関係者は「BaniasとNorthwoodのFSBは、完全に同じというわけではない。BaniasのFSBには、いくつかのモディフィケーションが加えられているからだ。主にそれは、低消費電力のための機能だ。しかし、バスアーキテクチャが非常に近いのは確かで、同じデザインのチップセットで両CPUに対応できる」と説明する。

 つまり、BaniasとPentium 4-Mは、同じマザーボードにポンと載せられるわけではないが、チップセットは共通化して設計できるという。実際、Intelは、MontaraファミリをBaniasとPentium 4-Mの両方に向けて提供する(ただし、バージョンが異なる)。他のチップセットベンダーも同様に、Pentium 4-M向けチップセットの次世代版でBaniasをサポートするようだ。また、別な関係者は、IntelがPentium 4バスの消費電力が大きいことを認識しており、Baniasではアクティブ時とアイドル時の両方で消費電力を下げられるように改良するようだと以前、語っていた。

 Intelの用意するチップセットはOdemとMontara。OdemはBanias専用に開発されたチップセットで、チップセット自体が非常に低消費電力だという。OdemはPentium 4-Mには提供されない。

 Montaraも新開発のチップセットだが、こちらはBaniasとPentium 4-Mの両方に向けて提供される。Banias用が「Montara-GM」、Pentium 4-M用が「Montara-GML」とされているらしい。通常、Lがつくと外付けAGPバスをサポートしないのがIntelの通例だが、今回はどうなっているかわからない。Montaraのグラフィックスコアは、それほど高機能化はされないようだ。OdemはDDR200/266サポートで、AGP 4X、Hub Link 1.0をサポート。サウスブリッジはOdemとMontaraのどちらも「ICH-4M」で、ICH-4M向けのIntelの無線LANチップも存在する。これは、昨年からOEMベンダーにIntelが予告していた。



バックナンバー

(2002年4月15日)

[Reported by 後藤 弘茂]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.