第146回:128kbpsパケット通信サービス開始
~これでWebブラウズもサクサクになる?



 本日からいよいよDDIポケットのAirH"に128kbpsパケット通信のオプションメニューが加わった。すでに128kbps対応カードを入手し首を長くして待っていたユーザーもいることだろう。もしくは32kbps対応カードのまま、その評価が確定するのを待っている方もいるかもしれない。

 すでに開始されている128kbpsパケット通信試験サービスのレポートも各誌に掲載されているが、正式サービス初日となった今日、都内での使い心地についてレポートしたい。なお、使用したのは日本通信のプリペイド型PHS通信サービスのb-mobileである。

●これまでの情報を整理

 この記事を読んでいる読者の多くは、すでに128kbpsパケット通信サービスについてご存じだろうが、簡単にこのサービスの情報を整理しておこう。

 DDIポケットの128Kパケット通信サービスは、すでにサービスが開始されていた1基地局あたり1チャンネルを端末が共有し、パケット単位で通信を行なう32kbpsパケット通信サービスAirH"を、4チャンネル分束ねて利用することで最大128kbpsへと高速化を図ったものだ(下り回線速度の場合。上り回線速度は最大68kbpsとなる)。

 4チャンネル分の基地局を確保できなければ128kbpsとはならないわけだが、都市部では4基以上の基地局が通信可能なレンジに入っていることが多い。たとえば僕の自宅は板橋区のマンション8階にあるが、ここからアクセス可能な基地局数は11個で、すべてが最大の電波レベルだ。都心部の様々な場所で調べてみたが、巨大ホテルの真ん中などでは1~3基地局がやっと見える程度という場合もあるが、たいていの場所で10以上の基地局を発見できる。

 郊外に出ると基地局の密度は下がっていくが、僕の自宅から車で気軽に出かけられる範囲では、基地局数が10を下回ることは無かった。また、DDIポケットは128kbpsパケット通信サービスを開始するにあたって、4基の基地局をカバーできない場合に、1基地局あたり2チャンネルをパケット通信に割り当てることが可能なように、基地局のファームウェアをアップデートしている。

 料金は32kbpsの従来サービスと同じつなぎ放題コースの4,980円(年間契約割引時)に加えて、128kbpsで接続するためのオプション128の3,500円が別途必要となる。つまり計8,430円となるわけだ。これに加えてインターネット接続プロバイダの料金が必要になるが、DDIポケットの対応プロバイダ一覧( http://www.ddipocket.co.jp/data/i_air_provider.html )に掲載されているISPと契約済みの場合は必要ない。

 テストに使用した日本通信のb-mobileはオープン価格だが、現在のところ76,000円程度で入手できるようだ。128kbps対応PCカードと1年分の接続料金が含まれており、1カ月あたりに直すと6,300円余り。1年分まるまる買い取りというリスクはあるが、通信カードを購入しなくても良いことなどを考慮するとお買い得度は非常に高い。同社は128kbpsサービス開始に伴って値上げする見込みと昨年末の時点で話していたが、現時点では従来通りの価格で販売されている。

 また、b-mobileは画像データなどの圧縮を行なうプロキシサーバーをメンバー向けに用意することでWebブラウズ時の実効速度をアップさせている。先日は圧縮率を高めた(画質は低下)サーバも追加し、画質と速度を必要に応じて選択することが可能となった。さらにメール送受信など、Web以外のアプリケーションに関しても実効速度を向上させる機能を提供する予定もあるという。

 日本通信に問い合わせたところ、b-mobileサービス全体で利用可能な帯域は現時点で8Mbpsのまま。契約者数は個人ユーザーが約2,000人、法人向けにはそれを上回る数千人分のIDが発行されているが、帯域的にはまだ余裕があるとのこと。さらに帯域が不足した場合は、1Mbps単位での増速を行なえるそうだ。


●Webアクセスもサクサク? 難しい快適性の評価

 さて期待の128kbps、僕自身もこの価格で固定料金のワイヤレスアクセスということで、128kbpsサービスの試験モニターを心待ちにして楽しんだが、当初は思ったほど高速とは感じず、少々残念な思いをした。他の記事によるレポートでは、多くの場所で96kbps程度の実効速度を得られていたようだが、自宅や都内各所で計測してみても60~70kbps程度の速度しか出ない上、回線遅延が非常に大きく(800ms前後だった)Webアクセスをしていると反応の鈍さを強く感じていた。

 実際に128kbpsサービスのテストを行なっている他のプレスに訊いてみると、遅くはないとの話だったため、僕の使っている環境での特殊な例だったのかもしれない。しかし、ここ数日は快適に使えるようになってきた。1基地局2チャンネルのパケット通信に対応した基地局が増えたためなのか、DDIポケットの回線インフラが整ったためなのか、それとも別な原因なのかはわからないが、国内のサーバであればpingの反応は250~400ms程度、実効転送速度も85kbps前後出ているようだ。瞬間的な速度では100kbps以上に達することもある。

 固定系のアクセス回線がMbps単位になっていることを考慮すると、これらの数字は心許なく見えるだろうが、ブロードバンド対応の一部コンテンツを除けば、大きなストレス無く利用できるレベルには達している。当然、26kbps程度の実効速度しか出なかった32kbpsサービスとは雲泥の差がある。

 64kbpsのPIAFS接続と比較しても、128kbpsサービスの方が帯域の広さを生かしサクサクとしたWebアクセスが可能……と言いたいところだが、どちらが快適かは微妙なところだと感じている。単純な帯域幅では128kbpsサービスの方が上なのだが、2つの点で64kbps PIAFS接続の方が優れているためだ。

 64kbps PIAFS接続の場合、ISPでデータが詰まることはほとんど無く、電波状況さえ良好であればコンスタントに57kbps程度でデータが流れてくるのだが、パケット通信の128kbpsサービスでは帯域幅がギャランティされておらず、データの流れも途切れがちだ。瞬間的な帯域幅は128kbpsの圧勝だが、平均すると70kbps程度(あるいはそれ以下)に落ち着く。それでも128kbpsの方が高速ではあるのだが、その差は数字ほどではない。

 またping値が国内サーバで250~400ms程度に改善されたと述べたが、この数字は決して速くない。64kbps PIAFSでは180~190ms程度、固定のブロードバンド回線なら20ms以下だ。このためか、Webをブラウズする際、コンテンツが次々とサクサク表示される間隔は、64kbps PIAFSの方が上に感じる。もちろん、画像が多く貼られたページあたりの容量が大きなコンテンツは128kbpsの方が快適な場合もあるだろうが、日常的なWebサイトのチェックでどちらが快適か? と問われれば、64kbps PIAFSと答えるだろう。

 僕はAirH"128に対して、128kbpsという数字をだけ見て過度な期待はしないように勧めたい。全国で使える定額のワイヤレスの接続サービスで、これだけの帯域を提供していることは高く評価しなければならないし、使い勝手までを含めるとPIAFSより優れたサービスだ。もし外出先でしか利用せず月間の使用時間が短いならば、フレックスチェンジ方式のAirH"や64kbps PIAFSの方が良いという判断もあると思う。

 前述したように、テストに利用したb-mobileの場合、1.5倍速もしくは3倍速に実効速度をアップさせるプロキシサーバーを提供しているが、これらを利用すればサクサク度は大幅にアップする。特に3倍速アクセラレータのMichelleと名付けられたサーバーは快適だ。画像品質の低下が顕著だが、プロキシサーバーを1.5倍のMarionやプロキシなしの設定に切り替えて利用すればいい。日常的な使用にはMichelleで十分だろう。日本通信は現在、プロキシの設定をその場で簡単に切り替えながらWebブラウズするためのツールを開発中で、完成次第ユーザーに配布する。

 128Kサービスの価格が高いか安いかは、ユーザー自身の置かれている環境によって異なると思うが、仕事で外出先からのインターネットアクセスが必要な人にとってみれば、十分に低価格だと思う。特に値上がり前のb-mobileの買い得度はかなり高い。もちろん、定額接続手段が用意されていない地域の人も、導入を検討してみる価値はある。


□日本通信のホームページ
http://www.j-com.co.jp/
□関連記事
【3月12日】日本通信、bモバイルの「アクセラレーター機能」を強化(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/0,,8632,00.html
【1月18日】日本通信のbモバイルも3月26日に128kbps対応(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/0,,7810,00.html
【2001年11月21日】【本田】128kbpsレディの定額PHSサービス「b-mobile」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011218/mobile132.htm

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(2002年3月26日)

[Text by 本田雅一]


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