CeBIT 2002 Hannoverレポートやじうま編

JVCのミニノートPCを触ってみました!
~各ブースにはF1カーを大々的に展示

会場:Hannover Messe
会期:3月13日~20日(現地時間)




●JVCのミニノートはチップセットに統合型のSiS630Tを採用

JVCのMP-XP7210。超低電圧版モバイルPentium III-M 750MHzを採用し、重量はわずか875gと、現時点で正式発表されているWindows XPが動作するノートPCとしては世界最軽量
 山田久美夫氏のレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0315/cebit06.htm )にもあったように、JVC(日本ビクター)はCeBITの会場において、A5サイズのミニノートPC、「MP-XP7210/3210」を発表した。

 その模様に関しては山田氏のレポートを御覧戴くとして、ここでは会場で実際に展示してあったマシンを触るなどして判った詳細なスペックをお届けしよう。

 CPUは超低電圧版モバイルPentium III-M 750MHz(Tualatinコア、L2キャッシュ512KB)で、パフォーマンスモード時は750MHz(1.1V)、バッテリ最適化モード時は300MHz(0.95V)で動作する。

 チップセットは統合型チップセットのSiS630Tになっており、ビデオ機能はチップセット内蔵のSiS300相当のグラフィックスコアを搭載する(ビデオメモリはメインメモリの一部を利用するUMA方式)。内蔵されているモデム、オーディオ、Ethernet(SiS900相当)はチップセットの機能として搭載されている。

 SiS630Tが採用されているのは、SiS630Tのノースブリッジがサウスブリッジ1チップに統合されており、チップの実装面積を小さくすることができるためだ。本製品のような小型ノートPCに適している。

 なお、SiS630TにはIEEE 1394および、SDメモリーカード/PCカードコントローラの機能は搭載されていないため、それぞれTI、リコーのチップが採用されている。

 HDDは、IBMのIC25N030ATCS04が採用されていた。これは型番を調べてみると、IBMのTravelstar 40GNシリーズの30GBモデルで、2.5インチで9.5mm厚の製品となっている。残念ながら、外部からはアクセスできないようになっているので、HDDの交換には本体を分解する必要があるだろう。

 こうして見ていくと、MP-XP7102/3210は意外とスタンダードなパーツで作られていることがわかる。

【スペック表】
 MP-XP7210DEMP-XP3210DE
CPU超低電圧版モバイルPentium III-M 750MHz超低電圧版モバイルCeleron 650MHz
メモリ(最大)256MB(384MB)128MB(384MB)
HDD30GB20GB
チップセットSiS630T
ビデオ機能SiS630T内蔵(UMA)
液晶8.9インチTFT
1,024×600ドット/32bitカラー
オーディオSiS630T内蔵/ステレオスピーカー
インターフェイスPCカードスロット(Type2×1)、SDメモリーカードスロット、USB 1.1×2、100Base-TX対応Ethernet、モデム、VGA(ミニコネクタ)、マイク、ヘッドホン端子
IEEE 13941ポート-
キーボードドイツ語(16mmキーピッチ、1.5mmストローク)
ポインティングデバイススティックポイント
バッテリ駆動時間2時間(内蔵)/12時間(オプション)
本体サイズ225×152×28mm(幅×奥行き×高さ)
重量875g


●活気付くアンダー1kgのノートPC市場、課題は「何ができるのか」の提案

デバイスマネージャで各デバイスを表示したところ。チップセットにはSiS630Tが採用されている
 現時点では日本市場への投入は明らかになっていないが、MP-XP7210は、これまで発表済のWindows PCで世界最軽量だったLOOX Sシリーズを5g下まわる875gを実現している。

 ソニーも先日バイオUという新しいジャンルの製品の開発意向表明と開発中製品の公開を行なったが、ここにきて急にアンダー1kgのノートPC市場が俄然活気付いてきたことは、モバイルユーザーとして素直に歓迎したい。

 あとはメーカー側が、アンダー1kgならではの使い方をユーザーに提示できるかどうかだ。これまでも、こうしたアンダー1kgの製品はいくつか登場してきた。古くはIBMのPalm Top PC110、NECのMobio、東芝のLibretto ffなど華々しく登場しては消えていった。これまでのパターンを見ていくと、こうした製品が登場したときに、メディアは大絶讃する。だが、実際にはあまり売れないで、結局メーカーはビジネスにならず消えていくということが繰り返されてきた。

 各メーカーの担当者が指摘するのは、そうしたアンダー1kgのPCを何に使うのかということを上手く提案できなかったという反省の弁だ。今後、この市場が本格的に立ち上がるためには、こうしたアンダー1kgの製品で何ができるのかということをユーザーに提案していく必要があるといえる。ただ単に「PCが小さくなった」と主張するだけでは、広くコンシューマに受けいれられるのは難しいだろう。

 そういう意味では、本製品をビクターが日本で投入する時や、バイオUでソニーがどのようなメッセージを打ちだしてくるのか、そのあたりに期待したい。特に、「市場がないのではないか?」と皆が考えていた液晶デスクトップPC市場に、バイオWで殴りこみをかけて大成功を収めたソニーがどのようにバイオUを売りこんでいくのか、その点がこのアンダー1kg市場の成否をにぎっているのかもしれない。


●CeBIT会場にはF1マシンが花盛り?

トヨタ自動車のAM01(TF101)。昨年型のテストマシン。今年から参戦を開始しているが、スポンサーは松下電器産業(Panasonicブランド)
 昨日、マレーシアでF1マレーシアグランプリが開催されたばかりだが、ここドイツでは、4度もワールドチャンピオンになっているドイツの英雄ミハエル・シューマッハを輩出しているだけあって、F1は大人気のスポーツになっている。

 さて、ここCeBITにもそういう事情を反映してか、各社のブースにはスポンサーをしているF1カーが展示され、大きな注目を集めていた。

 例えば、今年からF1に参戦しているトヨタ自動車は、メインスポンサーである松下電器産業(Panasonic)のブースに昨年型のAM01を展示していたし、日本の佐藤琢磨選手がドライブしていることで注目を集めているジョーダン・ホンダは、そのスポンサーであるドイチェポストのブースに展示されていた。また、マレーシアGPで1、2フィニッシュを飾ったウィリアムズ・BMWは、メインスポンサーであるコンパックコンピュータのブースで、またマクラーレン・メルセデスはテクニカルスポンサーであるキヤノンのデジタルカメラの被写体用にと大々的に展示されていた。

ドイチェポストに展示されたジョーダン・ホンダのEJ11。ディスプレイは今年型のEJ12となっているが、マシンは明らかに昨年型のEJ11だった。ただし、カラーリングは今年のバージョンで、日本の佐藤琢磨のシールが貼られていた
コンパックのブースにはウィリアムズ・BMWの昨年型FW23を展示。コンパックがスポンサーになった最初の年には、ノーズに大きな「Intel Inside」のシールが貼られていたのだが、いまは貼られていない。やはりF1は額が大きいので、Intel Insideプログラムの適用が除外されてしまったのだろうか? キヤノンのブースにはマクラーレンメルセデスの旧型MP4/16を展示。キヤノンのデジタルカメラの被写体として利用されていた。どこかの国での展示会のように被写体=若い女性と発想がいかないあたりは好感が持てる

 だが、なんといっても最も目立っていたのは、今年からボーダーフォンがスポンサーとなった、フェラーリだ。ドイツの第2のキャリアであるD2を傘下におさめるボーダーフォンは、ドイツではそのD2ブランドを強力にアピールしている。そのプロモーションの一貫として行なわれたのが、実車のフェラーリを使って行なわれたレースゲームだ。

 見てわかるように、モノコックにはホンモノのフェラーリ(おそらく一昨年型だと思われる)を使用し、来場者が実際に乗って、EAスポーツのFormula1 2001を利用したレースが行なわれるのだ。ドイツの英雄ミハエル・シューマッハのマシンに乗れるとあって、このプロモーションは大人気で、多くの来場者がわれ先にと挑戦していた。

 ボーダーフォンと言えば、日本ではJ-PHONEが傘下の会社となっているが、ぜひ、日本のショーでもチャレンジしていただきたいものだ。いかがだろうか? >J-PHONEのプロモーション担当の方

ボーダーフォンではフェラーリに乗りこんでF1ゲームを行なうプロモーションを行なっていた。ちなみに、フェラーリにはPCユーザーに馴染みが深いスポンサーもついている


●ドイツ人の話題の中心はiモード、日本人の多くは逆取材攻勢に辟易?

e-Plusのブースではiモードを大々的にプロモーション
 さてPC Watchでは、PC関連の話題を中心にお届けしてきたため、さもCeBITの話題の中心はチップセットやノートPCであるかのように思われたかもしれないが、実はそれらの話題はCeBITの一部でしかない。今年のCeBITで最も注目されていた話題とは、ドイツ第3のキャリアであるE-Plusが3月17日よりスタートしたドイツ版iモードだ。詳しいことは、姉妹誌ケータイWatchを参照して頂きたいが、展示会場ではかなり気合いの入った展示が行なわれ、多くの来場者がE-Plusのブースで熱心に質問される姿が見られた。

 面白かったのはNTTドコモ関係者ではない、日本人展示員のぼやきだ。日本人展示員の方に「今年のCeBITはどうですか?」ときいてみると、みな一様に「いや~今年はiモード一色ですよ、関係ない私達にもiモードはどうだという質問がくるぐらいですから」とぼやくことしきりだった。

 実は、筆者もプレスルームで仕事をしていると、多くのドイツ人プレスに、iモードはどうだとか、auのEZwebはどうなんだとか、こちらが参ってしまうぐらい多くの質問に、まったく仕事にならなかったこともあったほどだ。

 とりあえず、今の所ドイツではiモードに対する期待感、興味は非常に高いといってよさそうだ。果たして、1年後にもう一度来たときに、iモードに対する興味は継続しているのだろうか? 日本発のトレンドが、世界で通用するのかどうかには、我々日本人としても気になるところだ。なお、その来年のCeBIT 2003は、2003年の3月12日~19日(現地時間)に渡って、再びHannover Messeにおいて開催される。


●Bluetoothを使ってキーボードを分離したFUJITSU SIEMENS

ノートパソコンからのキーボード分離にBluetoothを利用
 もうひとつ会場内で見かけたユニークなノートを紹介しておこう。FUJITSU SIEMENSブースに展示されているB4サイズクラスのモバイルワークステーションだ。製品自体はCAD用途などに使われるものだが、この製品のキーボードは本体から分離させて利用することができる。ワイヤレス技術にはBluetoothを採用している。

 分離したキーボード内にもキーボードやトラックパッド、そしてBluetoothを駆動するための二次電池が入っているはずだが、それほどの重量感はない。キーボード部分の充電は、本体に装着しているときに行なわれるようなので、あまりにも長時間外しっぱなしというわけにはいかないようだ。

 念のため、より小型のノートブックなど、ほかのラインナップへの応用の有無も確認してみたが、現時点では決まっていないという。


●携帯電話を使って簡単なプレゼンテーションを

現時点ではコンセプト出展ながら、ちょっと楽しそうな使い方
 SIEMENS Mobileブースに参考出展されていた携帯電話対応の簡易プロジェクター。端末内に保存したデータをスクリーンや壁などに映し出す。

 担当者によれば、マンツーマンでの打ち合わせなどで利用できるプレゼンテーションツールという使い方を想定しているようだ。いまのところコンセプトのみで、デモで映し出されているデータは端末内ではなく、プロジェクター内に保存されているデモ用のデータ。また、それなりの光量も必要なため、バッテリなどどういった電力供給形態にするかも課題のようだ。

 とはいえアイディアは面白く、むしろ日本では仕事用途ではなく、若者が楽しい使い方を考えつきそうな気がするが……。


●そのほかに会場で目に付いたもの

東芝ブースに参考出展されたメタノールを使う燃料電池。デモ用のカットモデルになっているため、実際に動作はしていない。リチウムイオン電池に比べて、5~10倍程度の能力を有するという。同社のPDA「GENIO」に取り付けた形でのイメージ出展。サンプルユニットの重量は500g程度とのこと Philipsブースに参考出展されたMiraを使った端末機。ワイヤレス技術にはIEEE 802.11bが使われている。実際に稼働しているのは向かって左側に位置するポータブルタイプのほう。まだまだ試作段階ということで、詳細については明らかにされていない 非常に地味ながら、Apple Computerの製品もオリンパスとの共同展示という形でCeBITにお目見えしている。オリンパスブースの2階部分にはデジタルコミュニケーションとメディカルシステムをテーマにした、オリンパスによるMac OS上の各種ソリューションが展示、実演されていた

□CeBIT 2002のホームページ(英文)
http://www.cebit.de/homepage_e/
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JVCがA5サイズの小型ノートPCを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0315/cebit06.htm

(2002年3月19日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング/矢作 晃(akira@yahagi.net)]


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