バイオノートはこれから値上がりする!?
~バイオノートブックコンピュータカンパニー
島田 啓一郎プレジデント インタビュー


島田啓一郎プレジデント
(11日の発表会場にて)

 このところ、周辺機器メーカーを中心に、単体の液晶ディスプレイや、メモリなどで大幅な価格改定が増え、実売価格も上昇している。また、一見、値上げに見えなくても、ほぼ同一の仕様で新しい型番をつけた新製品が登場している例も多い。

 液晶ディスプレイでは17インチ品よりも15インチ品が、メモリでは、一般的なデスクトップPC用よりもノートPC用の方が店頭での値上げ幅が大きい。

 これは、製品を構成する部材の市況の変化が原因と思われるが、各メーカーの仕入れ価格などは守秘義務もあって公開されることはなく、データとして示すことはできない。また、液晶パネル、メモリとも、本体メーカーにとっても重要な部材であり、周辺機器にとどまらずPC本体の価格にも大きく影響する。

 今回は、部材の価格動向と、ノートPCなどの最終製品にそれがどう反映されるかを中心に、バイオノートを統括しているソニー株式会社MNC バイオノートブックコンピュータカンパニーの島田啓一郎プレジデントにインタビューを行なった。



■ノートPCはこれから値上がりする

編集部:このところ製品の値上がりのニュースが多いのですが、バイオノートなどの製品にも影響はでるのでしょうか。

島田:ノートPCの価格はこれから上昇していきます。理由は3つあって、液晶パネルの値上がり、メモリの値上がり、そして円安です。

編集部:それはいつぐらいから始まっているのですか

島田:液晶については昨年末から年始にかけてずっと値上がりしています。メモリは1月からぐっと上がりました。また、部材の購入はドル建てで行なうことも多いので、このところの大幅な円安も影響しています。ここ2カ月の部材の値上がりが、最終製品に影響する時期に来ているということです。

編集部:液晶とメモリはかつての日本のお家芸でしたが、円安が影響しているということは海外調達が中心なのですか。

島田:われわれは日本の会社ですが、PC用の部品は海外からの調達も多く、円安は影響します。

編集部:メモリと液晶の値上がりの理由はなんでしょう

島田:メモリについては各所で報じられている業界の再編とそれに伴う生産量の調整ですね。液晶パネルについては、液晶TVやデスクトップPC用の17インチ液晶ディスプレイの需要増加によって、パネル製品の大型化が進んだことが一因といわれています。液晶パネルは大きなガラス基板から切り出すわけですが、切り出される液晶の大型化によって、最終的なパネルの数が少なくなっているのです。

編集部:基板ベースでは生産量が増えていても、製品となったパネルの数で見ると生産量が減っているわけですね。

島田:そうですね。また、携帯電話や、携帯ゲーム機の液晶がカラー化されたことによって、ディスプレイ用と同じプロセスになってきていることも影響していると聞いています。

 メモリも液晶パネルも装置産業ですから、需給バランスが変わってもすぐに生産量が増えず、市況に影響します。

編集部:部材の調達というのは半年単位などの長期で行なっていると思っていましたが、市況がすぐに影響するものですか。

島田:部材の仕入れ契約は個別ですが、モノによっては順次仕入れています。メモリや液晶は市況の変化が激しいため、比較的短期の契約が多くなっています。私達の仕入れ価格も市況の一部ですから、半年などの長い単位では状況の変化が大きいですから。

編集部:たしかに、半年前のメモリの値下がりはすごい状況でした。具体的にどれぐらい値上がりし、どれぐらいノートPCなどの製品に影響するのでしょう。たとえば、17インチの液晶ディスプレイでは15,000円値上げしている例がありますが、それぐらいですか。

島田:各部材の価格について具体的な数字は申し上げられませんが、現在でも値上がりは続いています。ノートPCの価格でいえば、5万円上がることはないと思いますが、実売価格で数万円上がるとみています。

 私が責任を持って言えるのはノートPCの価格についてですが、液晶デスクトップなどでも同様の状況だと思います。


■売れ筋の製品に大きな影響

オールインワンのバイオノートFXなどに大きな影響が

編集部:ノートPCといってもいろいろなバリエーションがありますが、値上げ幅の大きい小さいはありますか。

島田:影響は全般におよびますが、液晶パネルが大きく、メモリをたくさん積んでいる機種。たとえば15インチ液晶を搭載した3スピンドルの機種などが一番影響を受けるでしょう。市場ではこのクラスが売れ筋であり、出荷量も多い機種です。また、付加価値の大きい高価な機種よりも、低価格帯の機種の方が部材の値上がりの影響を受けやすいでしょう。つまり普通に購入される機種がもっとも大きな影響を受けるわけです。

編集部:このところ、そのあたりのノートPCは、デスクトップPCの置き換えとしても普及して、価格も20万円を切る製品もありますね。

島田:ここ1年ぐらいで、メモリや液晶パネルなどの価格はゆっくりと下がっていました。その値下がり分がここ2カ月ぐらいで一気に埋まり、さらに値上がりしそうな状態です。

 1年かかって下がったものが、1年かかって上がっていけば、新製品の登場するサイクルに合わせて価格を調整できるのですが、このところの価格の上昇は、すごい勢いで、サイクル内で吸収しきれないということです。

編集部:では、バイオノートも型番の後ろにAとかつけて、価格を変えますか(笑)

島田:Aですめばいいですが、B、C、Dとつけていくことにもなりかねません(笑)。部材の値上がりはそれぐらいの勢いです。ここ2、3カ月先の話は必ず上がる方向へ動いています

編集部:メーカーの方が「これから値段が上がる」という話はしにくいと思うのですが、今回、そこまではっきりと話していただけるのはなぜですか。

島田:これまでPCは、同じ製品であれば、待っていれば価格が下がっていきました。また、性能が上がった新製品が登場しても、しばらく待っていればそれが入手可能な値段になっていました。ところが、現在の状況は、今が一番安くて、この先、待っていても下がらないどころか高くなることが、はっきりしています。エレクトロニクス製品としては異常な状態ですね。

 原因の大半は部材の市況ですから、半年先のことは確実には言えませんが、ここ数ヶ月先までに売る製品の部材は、これまでよりも高く仕入れられたものであることは事実です。これはソニーの戦略とかそういう話ではなく、ソニーは値上げをせざるを得ないという現状をお伝えしたかっただけです。

 もちろん、私が言えるのはバイオノートについてです。他のメーカーの方は、「いや、ソニーが上げるのなら、ウチは下げる」とおっしゃるかもしれませんし、そうなると困ったことになりますが。



 バイオノートをはじめとして、各メーカーのコンシューマー市場向け製品はオープンプライスになっていることが多く、メーカーの卸値が変化しても一般に告知されず動向が把握しにくくなっている。PC Watchでは、他のメーカーにも同様のインタビューを試みるとともに、市場価格の調査なども行なっていく。


□バイオのホームページ
http://www.vaio.sony.co.jp/
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(2002年3月15日)

[Reported by date@impress.co.jp]


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