IDF Spring 2002レポート

基調講演:技術革新こそが成長の鍵に
~2004年のIA-64が“Montecito”と発表

クレイグ・バレットCEO

会場:Moscone Center
会期:2月25日~28日(現地時間)



 Intelの開発者向け会議「Intel Developer Forum」は、2月25日正午(現地時間)にクレイグ・バレットCEOの基調講演からスタートした。この中でバレット氏は「インターネットエコノミーは既にインフラができあがりつつある。今後は我々の生活を変えていくだろう」と述べ、IT業界は今後必ず復活していくと力強く宣言した。また、バレット氏の後に登場した副社長兼エンタープライズプラットフォームグループジェネラルマネージャのマイク・フィスター氏は、Xeonプロセッサ用のサーバー向けチップセット“Plums”ことIntel E7500チップセット、さらにはIA-64の今後のプロセッサロードマップなどについて語った。


●「“オタク”のためのIDFへと回帰する」とゲルジンガー氏

IDFのトップを切って登場したIntelのパット・ゲルジンガーCTO(最高技術責任者)。いつのまにかメガネをコンタクトに変え、イメチェン(?)していた

 最初に登場したのは、Intelの副社長兼CTOのパット・ゲルジンガー氏。Intel技術陣の“顔”として知られるゲルジンガー氏は、IDFのオーバービューについて語った。それによれば、今回はいくつかの新しい技術トラック(例えば、3GIOやWebサービス、802.11aなど)が追加され、展示会であるShow Caseもこれまでにない規模で開催されるという。また、ハードウェアだけでなくソフトウェアの割合を増やしているのも特徴で、いくつかの新しいソフトウェアのセッションが追加されているという。

 今回のIDFについてゲルジンガー氏は「IDFは“オタク”、特に“技術オタク”のためのイベントだ。そうしたエンジニアのためのディープなイベントに回帰する」と述べた。



●「IT業界は必ず回復する、技術革新が鍵だ」とクレイグ・バレットCEO

 そのゲルジンガー氏に紹介されて登場したのが、Intel CEOのクレイグ・バレット氏だ。バレット氏は最初に現在のIT業界が置かれている状況に言及し、「これまでもIT業界は9回の落ちこみを体験してきた。今回の9回目は特にすごい落ちこみなのでいよいよIT業界の終焉かという見方をする人もいる。だが、私は確信を持ってそのようなことはないと断言したい」と述べ、現在の厳しい経済状況が決してIT業界の終焉を意味しているわけではないという見解を明らかにした。

 「そのなによりの理由は、インターネットだ。IT業界は過去数年間に渡りインターネットというインフラを構築してきた。それがほぼできつつある今、これから収穫の時期がやってくるはずだ」として、インターネットができあがったことによる新しいビジネスの創造などにより、今後もIT業界は進展していくと述べた。「鉄鋼や鉄道などどのような産業にも、まずは新しい技術の導入というエキサイティングな時代があり、それが過熱しすぎてはじける時代を迎える。そして混乱の時代から普及の時代を迎える」とも述べ、IT業界はまだまだこれからだということを重ねて強調した。

 そのためには、技術革新により新しい製品をどんどん投入していくことが大事であると述べ、例えば、代表例として3GHzのPentium 4プロセッサを取りあげ、より高い性能を持ったPCがエンドユーザーの体験を一段上に引きあげるという従来通りのIntelの主張を繰り返した。

 バレット氏は「デジタル画像を利用して3D映像をつくることができるアプリケーションを使えば、イメージをモデリングして簡単に映像をつくることができる。このようなことも、Pentium 4 3GHzのマシンを利用すればユーザーはデジタルカメラと少しの創造力だけで簡単にできる」と述べ、新しい技術を導入しユーザーをワクワクさせることができれれば、まだまだIT業界は終焉を迎えないと述べた。

 正直なところ、今回のバレット氏の講演は従来のIntelの主張を繰り返したもので、特に目新しいものはなかった。だが、業界を牽引する半導体メーカーのトップとして、業界に対して働き掛けを行なうという意味では、今回のように「今後も成長は止まらない」と繰り返す必要があったためにこうした内容になったとは理解できる。そうした意味では、明日以降に行なわれる各部門の責任者による基調講演でバレットのいう「新しい技術」を搭載したIntel製品が投入されるかどうかが楽しみだ。

Pentium 4 3GHzのマシンを利用したデモを行うバレット氏。REALVIZのソフトを利用して、デジタルカメラの写真から3D映像をつくるデモを行なった REALVIZのSceneWe@verを利用して、デジタルカメラの静止画から電車などをモデリングして創った映像。このあと、これを利用して動画が作られた


●「IA-32サーバーチップセット市場に復活する」とフィスター氏

 バレット氏に続き、同社の副社長でエンタープライズプラットフォームグループのマイク・フィスター氏が登場し、同社のサーバー市場における戦略を語った。最初にフィスター氏は電話業界向けのブレードサーバー事業について言及し、「今後Intelはテレコム業界むけのサーバー事業に乗りだす」と語った。

 Intelはもともとモバイル用だった低電圧版Pentium IIIプロセッサと超低電圧版Pentium IIIプロセッサを搭載したサーバーブレードボードなどでテレコム業界に参入する。これまで、こうした分野ではRISCをベースにした組み込みシステムだったのだが、x86ベースとなることで、PCでのノウハウを利用して安価に自動応答システムなどの構築が可能になると言う。OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは3月の後半に超低電圧版Pentium III 800MHzを投入し、この市場へ本格的に参入するという。

 また、フィスター氏はIntelがこれまでコードネーム“Plums”と呼んできたIntel E7500チップセット(以下E7500)を発表した。これまでIntelはIA-32サーバーむけのチップセットに関してはサードパーティとなるServerWorksなどに委せて、自社ではチップセットを製造してこなかった。しかし、同氏は会場で、「IntelはE7500でPCサーバー向けチップセット市場に再参入する」と述べた。

 Intelがこうした自社のサーバー向けチップセットに再参入した背景には、実の所、サードパーティのIA-32向けサーバーチップセットがあまりうまくいっていないという事実がある。ServerWorksは以前より、GC-HEなどのサーバー向けをアナウンスしているが、まだほとんど実績は残せていない。そうした事情もあり、OEMメーカーはIntel独自のサーバー向けチップセットをのぞんでおり、それが今回のE7500リリースにいたった理由であると言える(ただし、E7500はあくまで2ウェイ向けで、4ウェイなどのよりCPUの数が多い製品に関してはServerWorksのGC-HEが利用されることになる)。このE7500の登場により、Intelは2ウェイのエントリーサーバーの市場でもNetBurstマイクロアーキテクチャベースのXeonが利用されるようになる。

 今回、フィスター氏はE7500を搭載した製品をデモした。また、1GHzのPentium III Xeonを1とすると、Xeon 2.2GHz+E7500の組合せはメールサーバーのテストで1.4倍、Javaアプリケーションのパフォーマンスで1.49倍、Webサーバーで1.8倍ものパフォーマンスが発揮すると説明した。

Intelのサーバー向けロードマップを解説する同社副社長兼エンタープライズプラットフォームグループジェネラルマネージャ マイク・フィスター氏 IntelのXeon向けサーバー用チップセットのIntelE7500チップセット。手前に見えるのはPCI-XのブリッジチップとなるP64H2


●0.09μm世代のItaniumのコードネームは“Montecito”

IntelのIA-64ロードマップ。2004年に予定されているのが“Montecito”で、フィスター氏は詳細を語らなかったが、OEMメーカー筋の情報によればマルチスレッディングをサポートし、マルチコア、マルチダイとなるという

 最後にフィスター氏はIA-64こと、Itaniumプロセッサファミリーに関して語った。昨年、秋に行なわれたIDF Fall '01では現行の“Merced(マーセド)”の後継となる、McKinleyに関する詳細が説明された。McKinleyはL3キャッシュがオンダイとなり、システムバスのバス幅が広くなるなど、パフォーマンスにかかわる改良がされており、既に昨年の第4四半期からパイロットリリースと呼ばれるサンプル出荷が開始され、現在OEMメーカーなどで評価が続けられている段階だ。さらに、今年の半ばにはプラットフォームリリースと呼ばれる正式出荷が行なわれる見通しで、いよいよMcKinleyも実際の出荷に向けて徐々に準備が整いつつある。

 さらにその後だが、0.18μmの製造プロセスルールに基づくMcKinleyを0.13μmにシュリンクした“Madison(マディソン)”、“Deerfield(ディァフィールド)”が用意されていることは既に判っている。MadisonはMcKinleyの後継で、最大で6MBのL3キャッシュを搭載する(McKinleyは最大3MB)。基本的にはMadisonはMcKinleyとピン互換で、L2キャッシュの容量を除けばMcKinleyの後継であると考えていいだろう。

 Madisonが4ウェイ以上のマルチプロセッサ環境向けに用意されているのに対して、Deerfieldはデュアル向けという違いがある。このDeerfieldにより、IA-64もややローエンドへと降ろしていくというのがIntelの方針だ。このMadison、Deerfieldは2003年に登場する予定であるとフィスター氏は説明している。

 今回最も大きなアップデートは、2004年以降に登場する新しいCPUの“Montecito(モンテシート)”だろう。MontecitoはMadisonの後継となるCPUだが、この詳細に関してはフィスター氏は語らなかった。OEMメーカー筋の情報によれば、Montecitoはマルチスレッドの技術と、マルチコア/ダイ、いわゆるCMP(Chip Multi Processing)に対応するとIntelは語っている模様で、2004年にはこうした技術でIA-64のさらなる飛躍を目ざすことになる。

 また、基調講演終了後、クレイグ・バレット氏による質疑応答が行なわれたが、この中でSan Jose Mercury Newsがスクープした、Intelのx86向け64bit命令セットYamhill Technologyに関する質問がでたが、「将来の計画に関してはノーコメント。我々は真の64bit命令セットにフォーカスしており、我々の競合相手であるSunやIBMと競争していく上で重要なことだ」(バレット氏)と、基本的にはノーコメントだった。

□Intel Developer Forum Spring 2002のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spr2002/index.htm

(2002年2月27日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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