NEW PRODUCTS TESTREPORT

	アドビ システムズ
	Adobe Illustrator 10日本語版
	印刷とWebの両方に使える定番ドローツールの最新版
	TEXT：薮田織也　Oliya Yabuta

使用頻度の高い機能をアイコン化したツールボックスには、リキッドツール、シンボルスプレーツール、スライスツールなどの機能が加わっている

　Adobe Illustratorが、Ver.10にバージョンアップした。Illustratorはベクトルグラフィックソフト、またはドローソフトとも呼ばれるアプリケーションで、簡単に言えば点と線、いわゆるベクトルデータで図形を描くソフトだ。商業印刷において定番ツールとも言えるIllustratorだが、Ver.7.0以降、Webデザイン用の機能を搭載し始め、Ver.9.0では、商業印刷とWebデザイン用のクロスメディアとして位置付けられた。Illustrator 10では、このポジションをさらに突き詰め、印刷、Webデザインの作業効率を向上させることに主眼が置かれている。そして、これを受けて、作業効率を向上させる機能が追加されたり、ユーザーインターフェイスや従来機能が改良されたりしている。

　昨年、筆者が個人的にグラフィックスソフトのユーザー数十人を対象に情報収集をしたとき、ドローソフトは「使ってはみたいが購入するほどではない」という意見が多く見られた。とくにIllustratorに関しては「非常に興味はあるが、価格が高過ぎる」という声が目立った。また、興味深かったのは「どんなことに使えるのか分からない」という意見も多かったことだ。日常的に使っている立場からすると意外に思えるが、エントリーユーザーからすれば、ペイントソフトでもある程度のことが代用できるため、是が非でも必要なソフトではないようだ。しかし、Illustratorは商業印刷においては必須のツールであり、Webデザインをする上でも非常に便利なソフトだ。ビジネスでも、ワープロの代わりや大判の印刷物を作るときにレイアウトソフトとしても使えるし、年賀状などのデザインは、これだけですべてできる。価格に応じた、高いパフォーマンスを持つソフトなのだ。

拡大縮小できるベクトルデータとしてレンズフレア効果を付加することができる。パスオブジェクトに変換してやれば、フレアの色や不透明度を編集することも可能だ

　Illustrator 10では、作成されるファイルのサイズがかなり小さくなり、印刷スピードが劇的に向上している。ファイルを保存するときに「PDFを作成しない」設定にすると、Ver.9.0に比べて約半分のサイズになる。さらに、同じオブジェクトを多数使っている場所は、ほかのベクトルグラフィックソフトでおなじみのシンボル機能を使って描画し直すと、ファイルサイズはより小さくなる。シンボル機能とは、オブジェクトをシンボルとして登録しておき、それをコピーする感覚で描画すると、見た目のオブジェクトは多数でも、実際のデータ量はもとのシンボル分だけですむというものだ。また、ファイル構造のシェイプアップなどに伴い、印刷スピードも2時間かかったものが約6分程度ですむほどに改良された。

　描画編集においては、Macromedia FreeHandのようなエンベロープ機能が追加された。これはテキストやラスタデータを含むオブジェクトの形状を、別のパスオブジェクトの形状に沿って変形させる機能で、変形後も、いつでももとの状態に戻すことができる。FreeHandよりも優れているのは、ワープと呼ばれるあらかじめ登録された変形オプション以外に、メッシュを使って細かい変形の設定ができる点だろう。

　このほか、ユニークな追加機能としては、オブジェクトに旋回や膨張などの変形をブラシ感覚で与えることのできるリキッドツールや、レンズフレアの効果を簡単に付加できるフレアツールがある。

　Webデザイン用の機能としては、PhotoshopやGoLiveと互換性のあるスライス機能が追加された。また、テンプレートとなるデザインを作成しておき、その上にコンテンツとして配置するオブジェクトを変数で置き換えられる、データ駆動型ダイナミックグラフィック機能が追加された。これにより、デザイナーとプログラマの共同作業を効率化することができる。

　価格は79,500円と今回も決して安価ではないが、Illustratorはプロのデザイナーでなくとも、ビジネスユーザーにもお勧めできるデザインツールだ。

新規に追加された「リキッドツール」を使うと、パスオブジェクトの任意の部位に対してフィルタをかける感覚で、変形処理を施すことができる	多彩な編集ができるエンベロープ機能。メッシュを使うと複雑な変形ができる。変形後も、エンベロープを解除すれば、もとの画像にいつでも戻すことが可能

・製品名：Adobe Illustrator 10日本語版
・標準価格：通常版79,500円、アカデミック版28,000円、アップグレード版25,000円
・問い合わせ先：アドビ システムズ株式会社
・TEL：03-5350-0407(カスタマーインフォメーションセンター)
・URL：http://www.adobe.co.jp/
・対応OS：Windows XP/Me/98/2000＋SP2
・動作環境
　・CPU：Pentium II 266MHz以上
　・メモリ：128MB以上
　・HDD：180MB以上の空き容量

■写真撮影
若林直樹(STUDIO海童)

□アドビ システムズのホームページ
http://www.adobe.co.jp/
□製品情報
http://www.adobe.co.jp/products/illustrator/main.html
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【2001年12月17日】アドビ、Mac OS XとWindows XPに対応したIllustrator 10日本語版
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011217/adobe.htm